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.国際  投稿日:2025/2/8

尹錫悦大統領側が提起した不正選挙疑惑


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・尹錫悦大統領と弁護団は、「非常戒厳令」宣布の根拠として不正選挙疑惑を最も重要な根拠とした。

・提起された不正選挙疑惑は、選挙管理委員会サーバーに対するハッキング疑惑など10項目におよぶ。

・人気ユーチューバーは、不正選挙疑惑の元凶が選挙管理委員会にあるとして厳しく批判。

 

韓国の現役大統領として初めて内乱首謀容疑で逮捕された尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と弁護団は、「非常戒厳令」宣布の根拠として①弾劾による行政府の麻痺②主要政策予算の削減③不正選挙疑惑などを上げ、特に不正選挙疑惑は最も重要な根拠とした。

しかし憲法裁判所は2月5日、すでに尹大統領側から申請されていた選挙管理委員会のサーバー鑑定申し立てを始め、第5回弾劾審判弁論期日で尹大統領側の申し立てていた世界選挙機関協議会(A-WEB)、仁川市延寿区・京畿道坡州市の選管、国家情報院に対する事実照会・文書提出命令、警察庁・国家捜査本部・安保捜査局に対する認証謄本の送付依頼、選管サーバーに対する鑑定申し立てを棄却した。

憲法裁判所の千才ヒョン(チョン・ジェヒョン)広報官は同日、ソウル市鍾路区の同裁判所で記者会見を行い、「尹大統領側が申し立てた中央選管のサーバー鑑定申し立ては棄却された」「(弾劾審判に関する)必要性および関連性が不足しているというのが棄却理由だ」と述べた。

尹大統領側は、すでに第2回弁論期日で、不正選挙疑惑に関連して10項目の疑惑を提起していたが、その内容次のとおりだ。

■ 提起された不正選挙疑惑10項目

1)選挙管理委員会サーバーに対するハッキング疑惑

韓国国家情報院(国情院)が、2023年10月10日に選挙管理委員会(選管委)を点検。ハッキングと投票・開票の全般的操作可能性発見。北朝鮮がいつでもハッキングできる状態で、開票結果、選挙人名簿操作が可能とした。しかし、点検範囲が5%と僅かだったために不正は発見できなかった。ただ北朝鮮のキムスキーがハッキングした痕跡はあった。

2)事前(期日前)投票での投票数水増しによる選挙結果操作疑惑

不正選挙での核心的キーは、この事前投票にある。各地の事前投票所で行われた投票用紙は、一定期間保管された後各地から集められる。この過程で投票数が増加したとの疑惑が持たれているのだ。保管箱に錠前がつけられ、その上にサインした黒い紙が貼られているのだが、この錠前は両端を引っ張ると錠を外せるようになっている。だから箱を開いていくらでも投票用紙を入れることができるという。2024年4月7日夜明け恩平(ウンピョン)区選管委CCTVに票を押し込んでいる映像が発見された。また事前選挙が導入されて以降、裁判所の証拠確保が不可能状態となった。

3)統合選挙人名簿電子記録疑惑、幽霊有権者疑惑

国情院が重点的に点検したのは、この統合選挙人名簿電子記録だった。統合選挙人名簿電子システムは、全有権者数の名前、地域、投票可否が記録される。この名簿で投票していない人が投票したとされていたり、また投票したのに投票していないと記録される疑惑がある。国情院検査でそうしたことが明らかにされた。

4)偽造事前投票用紙の外部印刷可能性疑惑

事前投票用紙押印ファイルとテスト用出力プログラムが厳格に統制されていないので、実際の事前投票用紙とQRコードが同じ投票用紙が無断印刷可能状態だった。これも国情院が行った保安検査で明らかになった。

5)事前投票所通信装備と未認可の外部PCとの連結可能疑惑

6)開票システムの欠陥による分類操作疑惑

投票紙分離器と開票システムの保安管理体系が、しっかりできていないために、ハッカーが開票結果を変更することができる。すなわち、1番候補の投票用紙を2番候補に分類できるということだ。その反対も可能だ。この点も国情院が指摘した点だ。

7)外部から選管委内部網に侵入し、投票・開票データーを操作できる疑惑

8)選管委電算システムの暗証番号が12345だった疑惑

これは、中国の中央政府と地方政府を結ぶ標準番号と同じだ。中国ハッカーが入りやすくした疑惑がある。またインターネットとイントラネットの接続も可能だった。

9)選挙システム保安管理会社が対北朝鮮送金の主体会社だった疑惑

選挙システム保安管理会社が、非常に小規模な専門性が不足した会社で、保安装備製造会は、「共に民主党」の李在明代表が関係する800億ウォン対北朝鮮送金の主体である「サンバンウル」だった。

10)不審な投票用紙が多数発見された疑惑

 ①押印が塗りつぶされた投票紙

 ②2枚が重なって印刷された投票紙

 ③接着剤がくっついている投票紙

 ④ピン札のような投票紙(通常投票は折って投票するが、中国・北朝鮮は折らない)

■ 不正疑惑の元凶は選挙管理委員会

今若者に人気のある話題の「公務員試験カリスマ歴史講師」チョン・ハンギリ氏は、こうした不正選挙疑惑の元凶が選挙管理委員会(選管委)にあるとして選管委を次のように厳しく批判した。

「資料を探してみれば見るほど驚愕を禁じられませんでした。いやあー、国民が出す税金で運営される国家機関であり公務員たちの組織である選管委が、監査院の監査をも拒否し、北朝鮮のサイバーテロとハッキング疑惑を調査しようとする国家情報院(国情院)の調査さえ拒否しました。選管委がこのように絶対権力機関であることに驚きました。

『監視されていない絶対権力は、絶対に腐敗を生み出す』との格言があるように、選管委も腐敗していました。採用不正、北朝鮮のハッキングに破られる脆弱なセキュリティ管理、不正選挙に関連しての数多くの疑惑や告訴告発事件などなど…結局大統領だけでなく、現野党代表及び野党国会議員、前与党代表及び与党国会議員まで不正選挙疑惑を提起している意味がわかりました。まるで総体的不正と疑惑の塊だということがわかりました。今もポータルサイトやYouTubeに入って関連内容を検索してみると、電算操作による候補者別得票数操作に関する資料があふれ、それらは本として出版されたりもしています」と語った。

(次回「韓国における中国人の特恵と選挙関与」につづく)

トップ写真:尹錫悦大統領、韓国ソウルで憲法裁判所の弾劾裁判の公聴会に出席する(2025年1月23日)出典:Jeon Heon-Kyun – Pool/Getty Images




この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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