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.政治  投稿日:2013/12/18

[清谷信一]安倍政権の安全保障軽視が露呈!やっつけ仕事の国防計画?〜安倍首相はまともに安全保障を考えていない


清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

12月17日、外交と防衛を含め他包括的な「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」(防衛大綱)、「中期防衛力整備計画」(中期防)が併せて閣議決定され、内容が公開された。

これらはとんでもないやっつけ仕事だ。

本来「国家安全保障戦略」がまず策定され、ついで防衛に特化した「防衛大綱」が策定され、これに沿って、「中期防」、来年度の防衛費概算要求が策定されるのが順序である。だが、実際にはもっとも最初に策定されるべき「国家安全保障戦略」の策定が開始されたのは9月で、「防衛大綱」、「中期防」、来年度の防衛費概算要求よりも後から、しかも突貫工事で策定されている。

同様に防衛大綱が決まらないと、「中期防」が決定できないし、新中期防の初年度の防衛 予算である、来年度の防衛費は策定できないはずだ。 ところがこれら3つは同時に策定され、来年度の概算要求は8月末に発表されている。これでは順序が逆さまで、やっつけ仕事もいいところだ。

本来であれば来年度予算は従来の線で行い、その間「国家安全保障戦略」、ついて「防衛大綱」を来年3月末ぐらいを目処に決定し、その後「中期防」を5〜6月までに策定、次期大綱初年度の防衛予算は再来年度、つまり平成27年度から行うべきだっただろう。

安倍政権は何をそんなに急いでいるのだろう。

このやっつけ仕事は装備調達にも影響を与えている。次期中期防で52両の調達が予定されているAAV7は、本年度に評価用として調達が決定したAPC(装甲兵員輸送)型4両、来年度で同様に調達予定されている指揮通信型、回収車型各1両の6両が揃って評価試験を行うとされていたのが、評価試験はAPCの型のみで来年に行われ、来年末までに車種を決定するという。AAV7の他に候補は選ばれていない。AAV7が不適格だった場合、他の候補を選定し、調達する時間的余裕は中期防中にはない。つまりAAV7の採用は出来レースである。

同様にティルトローター機17機の調達が中期防に盛り込まれているが、現存する軍用ティルトローター機はオスプレイしかない。防衛省は来年度予算でオスプレイの評価予算を約1億円要求しているが、事実上オスプレイの1択であり、評価をする前から調達が決定されている。

これは国会や納税者を愚弄する行為だ。

目新しい玩具を揃えれば国防が全うできるとでも思っているのだろうか。そうであれば安倍首相の軍事知識は小学生並ということなる。今後10年の我が国の防衛戦略のフレームが、極めて安易かつ安直に策定されたとしか言いようがない。永田町では普通なのかもしれないが、安全保障や軍事に関わるものからみれば、極めて奇異に映る。いや普通の納税者も疑問を持つだろう。

これのような稚拙な政策をつくることが安倍首相のいう「戦後レジュームからの脱却」なのだろうか。

 

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