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スポーツ,ビジネス  投稿日:2015/8/13

[Football EDGE 編集部]【第17節】香港在住ビジネスマンが始める、サッカー事業の軌跡「シンガポールにおける日本サッカーの存在感」(アーカイブ)


Football EDGE 編集部

(文・写真 池田宣雄)

 執筆記事

近年、アジアでサッカービジネスに関わる日本人が増えてきた。香港在住15年を数える、池田宣雄氏もそのひとりだ。32歳のときに香港で起業し、コーポ レートコンサルタントを営むかたわら、サッカーに関する様々な業務のコーディネーターとしても活動している。金融の街としても知られる香港より、スポーツ ×ビジネスの観点から綴るエッセイ(アーカイブ)をお届けする。

前節に続き、シンガポール視察の模様をお届けする。

今節はアルビレックス新潟シンガポール(以下、アルビS)以外のチームでプレーする日本人選手、また在留邦人の子供たちを対象とした日系アカデミーの運営や、現地に進出した日本の用具サプライヤーの状況を書いていこう。

現在Sリーグでは、アルビSの日本人選手以外にも、10人程の日本人選手がプレーしている。日本からアルビSに移籍して活躍を認められた選手たちが、他のSリーグチームや近隣国に移籍する経路が形成されつつある。

またアルビSを経由せず、日本や近隣国からSリーグのチームに移籍を果たし、チームの中心選手としてプレーする選手もいる。

代表的な例を挙げると、元日本代表の戸田和幸がマーキープレーヤーとして名門ウォリアーズFC(旧称、シンガポール・アームド・フォースFC)に所属。日韓W杯出場を柱に、日本、イングランド、オランダ、韓国などの多くのチームを渡り歩き、今後が有望な東南アジアの地でもキャリアを重ねている。筆者が試合観戦したピッチでの彼の勇姿は、他を圧倒する存在感を放っていた。

かつてSリーグでプレーしながら、在留邦人の子供たちを対象としたアカデミーを立ち上げ、アルビSのサッカースクールと規模と実力で肩を並べる存在の、GFA(グローバル・フットボール・アカデミー)の中村彰宏氏は在留邦人社会において非常に大きな存在と言える。

中村氏はそれ以外にも長年培ってきた現地人脈を活かして、2部リーグを戦うチームとの業務提携や、日本人選手や用具サプライヤーなどの紹介業にも忙しくされている。

日本のフットサルブランドであるSVOLMEは、いち早くシンガポールへの進出を果たし、市内での直営ショップの運営の傍らで、ウォリアーズFCへのチームキットの提供や、契約した選手個々への用具提供なども行なっている。

同じく日本ブランドのgol.も、アルビSへのチームキット提供と、クラブハウス内と試合会場での物販、また契約選手への衣料提供も始めており、シンガポールをハブに東南アジアでのブランド戦略を推し進めている。

その他にも、Sリーグの公式試合球が日本のMIKASAであったり、スタジアム広告も日系企業のロゴで溢れているなど、中国や香港のリーグ戦の様相とは明らかに違う印象を受けた。

日本的日本風である事が必ずしも良い事だとは思わないが、指導者や選手だけではなく、サッカーに関わる日本のブランドやサプライヤーの海外進出は必然の流れであって、Sリーグはその最たる様相を醸し出している。

今回の視察で、香港の1部リーグとシンガポールのSリーグは、お互いの国の政治的な背景や役割と同様に、リーグの人気と実力、運営と会場、その他のプロサッカーを取り巻く環境が、甲乙の付け難いイコールなコンディションであった事が確認できた。

両者の唯一の違いは、日本のJリーグと手を組んでいるか否か、いわゆる「日本」を受け入れているか否かだと感じた。

地元の熱心なサッカーファンの方々や、マイノリティとして現地に暮らす在留邦人の皆さんにとって、どちらの国の環境が歓迎されているのだろうか。

サッカーの世界では、良くも悪くも存在感を示す事が重要だ。Sリーグを取り巻く環境は「日本」を呼び込む事で活性している。元気のない香港1部リーグより、明らかに映えて見えたのは紛れもない事実だ。

シンガポール視察ではJ-PLUSの安藤浩久氏に大変お世話になった。この場を借りて御礼申し上げたい。

(編注:内容は原稿執筆時点2013年7月のもの)

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2013年7月第2号掲載コラム加筆修正

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