[安倍宏行]資産が昨年比で6割アップの大幅増!しかし、私たちがそれを実感できないのはなぜ?〜新年、資産形成を考えるタイミングに
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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自分の資産価値が1年で6割上がったらどうしますか? そんなこと・・・とお思いの貴方。それが現実に今年起きたのです。6割アップ・・・とんでもないことですよね?
きょうは東京証券取引所の「大納会」。安倍晋三首相も現職の首相として初めて出席するという。午前の終値は前週末の終値より61円45銭高い1万6240円39銭。東証第1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は、同9.41ポイント高い1299.48。円安が一段と進み、輸出株などに買いが入っている。個人を中心に買い意欲が強く、不動産、銀行、建設などの内需系にも買いが広がった。
原稿を書いている時点で終値は出ていないが、このまま高値で終われば、昨年末終値1万0395円18銭から実に6割近く値上がりし、1972年41年ぶりの上げ幅となる。
株高を背景に、投資信託の分配金も過去最高を記録する。株式や債券を投資対象とした投信の分配金はおよそ5兆円、不動産投信も過去最高なら、株の配当も大幅増。14年3月期の上場企業の配当総額は過去最高の6兆7000億円となる見込みだ。
こうした中、日経が20日から23日、全国の20代から60代の男女1000人にインターネットで調査したところ、日本の景気は「回復していない」派が63%、「回復した」派が31%だった。又、「景気回復を実感出来なかった」派は78%に対し、「実感出来た」派は14%しかいなかった。収入や資産に増減についても、「変わらない」が46%、「増えた」は16%に過ぎなかった。経済指標は良い数字が並ぶが、まだ末端まで景気回復効果は及んでいない実態が見てとれる。
この、「実感出来た」派は、株式を保有している層だと思われる。日本の個人投資家の割合は、全体の2割程度しかいないからだ。この層は株や債券の値上がりにより、資産効果=キャピタルゲインを得て、景気回復や資産増加の実感を得た人達だ。一方で、リスク性資産を全く持たない層は、景気回復による給与アップがまだ目に見える程実現していないので、実感ないのも当然だ。
アメリカでは個人投資家は全体の50%を超す。何故、日本はこんなにも個人投資家が少ないのか。筆者はやはりバブル崩壊の後遺症だと思う。失われた20年の間、社会では株式投資は悪、というような空気が蔓延した。2008年のリーマン・ショックも拍車をかけた。しかし、長期的に見れば資産の中に、株や債券といったリスク性資産を組み込むことは理にかなっている。今回はからずもアベノミクスでそれが明らかになった。
東証の調べによると、成人男女のなんと60%が「株式」を良く知らない、と回答している。特に30代〜40代女性の認知度が低いことから、後5〜10年後に始まる、団塊の世代から団塊ジュニアへの資産移転の時、個人投資家のすそ野が萎む可能性も指摘されている。
今働き盛りの30代後半から40代前半の人達は、2014年は、自らのポートフォリオ(資産の内訳)を見直す年としたい。おりしも、NISA=少額投資非課税制度も1月からスタートする。以前も書いたが、夫婦で年間200万円までの投資の運用益が非課税になるという制度だ。元手が少なくても始められる。どの金融機関に口座を開いたらいいのか、どんな金融商品が有利なのか。
ネット上には様々な情報が溢れている。正月の三が日、株をやった事が無い人は、自分で情報を収集してみたらどうだろう。
【参考】
- 「個人投資家層の裾野拡大に関する調査レポート」平成25年7月17日|株式会社NTTデータ経営研究所 (株式会社東京証券取引所調査委託)
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