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.国際  投稿日:2015/10/19

[比嘉陽子]【世界最貧国誕生のからくり】~アフリカ“マラウイ”最新リポート 1~


比嘉陽子(クリーンテックビジネス事業開発員)

比嘉陽子の世界最貧国から考える」

執筆記事プロフィール

アフリカにマラウイという国がある。毎年7月1日に更新される世銀の最新GNIレポートで、世界最貧国であると発表された。GNI(Gross National Income:国民総所得)(per capita)は、国民一人頭の所得を表すデータで、国の経済レベルや国民の生活レベルを表す際に用いられる指標だ。貧困を図る指標は様々あるが、マラウイは世界最貧国認定の常連国である。日本の皆さんには聞き馴染みのない国名だろう。私も実は、この国に住んでここで働きだす以前は、国名を聞いたことさえなかった。

「アフリカ」と聞くと、どういうイメージを頂くだろうか。アフリカ観光で真っ先にあがるケニアに代表されるような野生動物のサファリとマサイ族などの独自の文化を守る民族であろうか。もしくは、学校に行かずカカオ農園で働く子供たちや地図上に直線で引かれた国境、民族紛争、難民、飢餓、汚職、奴隷売買、人種差別などの暗い歴史や先の見えない政治経済に目がいくだろうか。一方で、M-PESAのモバイルマネーに代表されるように、先進国のようにインフラが整備されていないからこそ発展した技術に注目している人も居るだろうか。これら一つずつの側面から見た場合、どれも正しくて、そして包括的に見ようとする場合にはどれも真実を伝えない。

例えば、今回のGNIレポートの裏側では何が起こっているのか、からくりを見てみよう。マラウイでは2012年5月に固定為替制から変動為替制へ移行しており、それを受けて米ドルに対するマラウイクワチャの価値は一晩で暴落し、すぐに半分以下にまで落ちた。

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この結果、マラウイと同じ低所得国にランキングされている国の平均と比較しても、2012年からマラウイが急激にGNIにおいて競争力を失っていることが分かる。

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様々な通貨を有する世界各国の経済力を一覧で比較しようとする場合には、どこかの通貨を基準にする必要があり(通常USDを基準にする)、GNIもUSDを基準に算出されているため対米ドル価値が下がればそのまま反映されてしまう。たまたま為替制度の変更があったマラウイには不利な計算方法だということができる。

途上国への旅行者の多くは、こういった数字と実際に自分の目で見る現地住民の笑顔や前向きな姿勢、はつらつとした生きざまにギャップを覚えるだろう。果たしてこの国は本当に貧しいのであろうか?経済指標を差し置くと、あるいは日本よりも豊かな暮らしをしているのではないか、と信じる者まで現れる程である。

アフリカという地域は、欧米諸国にその運命を翻弄されてきた。

アフリカ、インド、新大陸と、地球上の全ての土地が航海者達により発見され、先に産業発展を遂げた国々からの干渉を受け、独自の文化を保っていた少数民族でさえも外界に(侵略され)関係を持ち、グローバルな世界システムに組み込まれてしまった。

未開人は独自の文化を保ち独自の幸せを持つ、という神話はもう夢物語でしかない。「未開人(バーバリアン)」は、もうこの世の中に存在していないのだ。我々が、金と武力と勝手に作り上げた権力をもって、こちら側の世界に全てを巻き込んだ。こうして我々の世界は広がり、富める者は更に富み、都合よく搾取できる構造を作り上げていく。

新大陸が発見された時、アフリカは主にヒューマンリソースの供給源として奴隷産業が栄え、地場産業は衰退した。一方、三角貿易によって富を得たヨーロッパは経済基盤に支えられ産業革命を迎える。その後、奴隷の供給過多によって自らの就業機会が奪われていることに気付いたヨーロッパ諸国が奴隷制度の廃止へ動き出し、アフリカの価値は奴隷から資源へと移り、ヨーロッパ諸国は奴隷貿易の玄関口である港から大陸の内部まで進んでいく。こうして、イタリア軍を破ったエチオピア以外のアフリカ諸国は、ヨーロッパに分割支配されることになる。

(本シリーズ全3回。
【変動相場制に翻弄される世界最貧国】~アフリカ“マラウイ”最新リポート 2~
に続く)

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