<イベントリポート「アフリカビジネスの可能性」>年間3000ドル未満で生活する低所得層BOP(Base of the Pyramid)ビジネスのありかた
高石明日香(Japan In-Depth)
今、アフリカに熱い視線が注がれている。BOPビジネス(BOP:Base of the Pyramid:世界の所得別人口構成の中で最も収入が低い所得層)などと言葉が先行してはいるが、実際にビジネスに携わっている起業家達が、小さなセミナーを開いた。行ってみると決して広くはないビルの一室に所狭しと参加者が。関心の高さが伺えた。
スピーカーは、世界最高峰といわれるエチオピアン・シープ・スキンを贅沢に使って現地生産した革製品を販売しているandu ametの鮫島弘子代表取締役社長ら、アフリカビジネスに情熱を注ぐ3人の女性だ。
鮫島氏(写真右)は、国内化粧品メーカーのデザイナーとして活躍していたが、ある日ふと「消費者・作り手の双方にとって幸せなもの作りとは何なのか」と疑問を抱いたという。
そして、「長く人に愛される、本当に意味のあるものを作りたい」という想いが大きくなり、青年海外協力隊に参加した。その時滞在していたエチオピアの職人たちにバッグの製作を教えたことがその後の起業のきっかけになった。
ケニアの力強く鮮やかなバラの輸入・販売を行うのは、Online store「アフリカの花屋」代表のはぎうだめぐみ氏(写真右下)。大学在学中に参加した国連のプロジェクトでアフリカの貧困問題にショックを受け、「先進国のエゴではない本当の支援をしたいと思った」と話す。初めてその鮮烈なバラの色に衝撃を覚えたはぎうだ氏は、一人でも多くの人にバラを届けたい、とその決意を語った。
3人目は、国際NGOのプログラムオフィサーを務める徳末明子氏(写真左)。徳末氏は、ビジネスを通じてエチオピアの農村部の女性たちを支援。短期的な視点での緊急支援ではなく、継続的に自分たちが雇用を生み出せることを目的とした「本質的な支援」を行うことにより、貧困問題に苦しむ農村の組合で「持続可能な収入創出」を実現した。
そんな彼女たちだが、現在に至るまでにはたくさんの苦労があった。異なる価値観や文化の壁、周囲から邪魔されたこともあったという。
それでも彼女たちを動かしたのは、「誰かのためになりたい」という強い想い。「私ができることを、できる形でやりたい」と語るはぎうだ氏の言葉に、隣の2人が頷く。
参加者から「根気強く継続し、乗り越える方法」を問われると「魔法みたいな方法はない。いくらしつこいと言われても、本気なんだよ、と伝え続けることが大切」と鮫島氏は語った。「あんなに全力で感情をぶつけ合ったのは初めて」と笑う徳末氏を見ていても、彼女たちにはどんな苦労もエネルギーに変えてしまう力があるように思える。
生み出された笑顔を見ることが、自分の喜びでもあるという彼女たちは、気取らずあくまで自然体。背伸びせず、できることから始める勇気を持つことが、私たちが「誰かのためを想う」第一歩なのかもしれない。
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