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国際  投稿日:2016/1/12

阻止できぬ北朝鮮核開発 その1~米軍事力は北朝鮮を無力化出来る~

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文谷数重(軍事専門誌ライター)

■北朝鮮の核開発は阻止できない

今月6日北朝鮮は水爆実験実施を公表した。本当に水爆であるかどうかは異論がある。だが各国の地震波観測結果からも核実験の実施はまちがいないとされている。

核開発は着実に発展している。いずれは米本土に届く核ミサイルが出現する。北朝鮮は2006年から実験を4回実施しており、その都度に威力は向上した。そして今回は水爆開発を言及するに至った。現段階で弾道ミサイルに搭載できるかどうかは分からない。だが、いずれは実現させる。

そして世界最大の軍事力をもつ米国でも、この核開発は止められない。

 

■その理由は何か?

軍事的解決策には韓国と中国の同意を得られないためだ。米国にとっては将来的な北朝鮮の核兵器の脅威よりも、中韓との関係を損なう現実の不利益の方が大きい。このため、米国は北朝鮮の核開発施設を攻撃できなかったし、これからもできない。

この構造は今後も変わらない。北朝鮮から戦争に打って出ない限り、米国は北の核施設を空爆はできない。そして北朝鮮は戦争をする理由はない。核によって自国の体制を維持できるかぎり博打に出る必要がない。

国際社会にできることはたいしたことはない。六ヶ国協議のような外交交渉を頼むか、経済封鎖を厳重にするか、あるいは逆に援助により体制の変化を促すかでしかない。

 

■米軍事力は核開発を阻止できる

米国は軍事力で北朝鮮の核開発を停止に追い込める。これは通常兵器による空爆で十分であり、特に地上戦の実施や核使用の必要はない。

米軍は強大であり、いつでも北朝鮮を空爆できる。防御側の防空システムは米航空戦力に対抗できない。技術格差が大きすぎるためだ。レーダ網や対空ミサイルを動作させても、電子戦で目潰しされた上で破壊される。戦闘機も旧式機が多数である。仮に地上撃破を免れても米戦闘機に対抗できる戦力ではない。米国は絶対的航空優勢、事実上の制空権を確保し、残された対空機関砲が届かない高度から精密誘導兵器で空爆される。

北朝鮮の弾道弾による反撃も無効化される。仮に北朝鮮が核ミサイルを持っていたとしても少数である。米本土や米領への攻撃はMD、イージス艦やパトリオットによるミサイル・ディフェンスで阻止されてしまう。これは日本の米駐留軍飛行場への攻撃も同じである。

 

■核施設無力化は難しくない

そして、米国は空爆だけで核開発を頓挫させられる。開発施設の無力化は難しくはないためだ。

別に直接破壊できなくともかまわない。仮に核関連施設が分散され、偽装され、地中化されており直接的に攻撃できなくとも操業を停止させれば同じことだ。

例えば、電力網を破壊すればよい。大電力を必要とする施設の操業は難しくなる。北朝鮮のすべての発電所を破壊し、重要な送電施設や迂回不能な電力線を破壊すればよい。

あるいは物流や人員の移動を停滞させてもよい。核施設周辺の鉄道、道路を空爆すればそれにより原材料や仕掛品、完成品の輸送は往生する。バス等の公共交通機関まで麻痺させれば施設従業員の出勤やその生活物資の確保が難しくなる。出勤率は大幅に低下し、操業率も低下するだろう。

これらの攻撃は人道的に問題とはならない。目標に対する空爆は直接民間人を殺傷するものではないためだ。

 

■政権に核開発中断を迫ることもできる

さらに戦略爆撃まで進める決心があれば、北朝鮮の政権に核開発中断を迫ることもできる。

これも無理をする必要はない。直接的に都市を焼き払い、咎のない民間人を殺さなくとも核開発を諦めさせることは可能だ。

例えば、飢餓のおそれを作り出せばよい。北朝鮮の食料の輸出入、生産、国内輸送を妨害すれば、これまでの不作どころではない飢餓状態を作り出せる。

輸出入の封鎖は米国にとっては容易である。拠点となる港湾を機雷で封鎖し、中朝国境方面の鉄道網、特に鉄橋とトンネル、操車場をすべて破壊すれば実質的な食料輸入はできなくなる。

食料生産への攻撃もたいしたものではない。特に枯葉剤のような化学物質を使う必要もない。ダム等の水利施設、肥料工場を空爆すれば国内農業生産は飢饉レベルまで落ちる。輸出入同様に国内交通網を破壊すれば収穫した農作物の国内輸送も厳しくなる。そもそも収穫のための軍民の動員や機械力の利用も険しくなる。

これらには1945年の対日飢餓作戦の前例がある。軍国日本は大陸からの輸入を止められ、穀物入手や肥料生産に困窮し、食料の国内輸送が困難となった。そして翌年の端境期までに食料供給ができない状況となり日本は降伏した。

北朝鮮でも同じ状況には耐えられない。壮丁層を含む国民の1割以上が餓死確実な状況を作り出せば交渉に応じるだろう。政権は国内不安が高まり、体制が倒れることを回避するためにはそうするしかないためだ。

(その2につづく)

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この記事を書いた人
文谷数重軍事専門誌ライター

1973年埼玉県生まれ 1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。 現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。退職後、軍事専門誌でライターとして活動。特に記事は新中国で評価され、TV等でも取り上げられているが、筆者に直接発注がないのが残念。

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