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.政治  投稿日:2014/1/21

[清谷信一]安倍政権は軍拡?! 右派?!〜その実態は多額の税金をアメリカに貢ぎ、自衛隊を弱体化させている事実に警鐘②


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清谷信一(軍事ジャーナリスト)

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その①を読む

因みに陸自ヘリ予算は年間約300〜350億円程度だ。オスプレイの調達だけでもこの金額の約1.5倍であり、これをヘリの調達予算に含めると実に2.5倍の予算が必要になる。既存にない新型装備を導入するのであれば乗員や整備員、部隊本部要員、訓練要員、兵站人員などの必要になる。機動戦闘車だけは戦車の要員を転用すれば済むだろうが、他の装備では増員が必要となる。この人員の予算手当が必要となる。

その他、既存装備の更新にしても中距離地対地弾道弾は1個中隊175億円(中期防では5個中隊=875億円)、12式地対艦誘導弾1個中隊77.25億円(中期防では9個中隊695億円など高価な装備調達が目白押しだ。

更に現状700輛ほどある戦車は大綱終了までに300車輛に減らされるにも関わらず、10式戦車(単価10億円)を44輛(440億円)を中期防で調達する。また同様に大綱終了時には300門/輛に減らされる火砲も31輛の調達が予定されている(型式や単価は不明)。戦車も火砲もいまある、まだ十分に使用できる現用装備を廃棄することになる。

機動戦闘車は実質的に74式戦車の後継であり、これを戦車の定数に加えれば550輛となり、現大綱の定めた定数である400輛よりも多くなる。陸自の「戦車予算」は減るどころか増えている。しかも年々装備の維持・修理費は増大しており、それに反比例して装備調達費は減少している(以下グラフ参照)。

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中期防のこの「新しいお買い物」が如何に非現実的か理解できよう。

このように大幅に陸自の新型装備を調達するのであれば、海空自の予算を大幅に削減するか、防衛費を大幅に増額するしかない。だが、政府は中期防の防衛費を総額約24兆7千億円、1年平均4.94兆円とすることを決めている。軍事的な整合性を鑑みれば空海自の予算削減は非現実的だ。むしろ優先順位の低い陸自の予算を削って海空に回すべきだは自明の理だ。ところが三自衛隊の予算比率は殆ど変わっていない。

その上陸自はUAV(無人機)やネットワーク化、暗視装置、無線機などでは途上国レベルであり、これらも新規調達する必要がある。

特に深刻なのは通信機だ。データを送受信できる最新式の無線機は少ない。また定数を大きく割り込み、世代が違うと通信ができない。このため先の東日本大震災では陸自の無線が大幅に不足し、また通じなかったり、混線が多かった。このため指揮通信機能の強化に極めて多額の投資も必要となる。

結論を言えば陸自の中期防の調達計画は画餅に過ぎない。これまでも中期防は計画を達成できたことがない。出来もしないことを、さも出来るように吹聴するのは不誠実だし、納税者を馬鹿にしている。仮に補正予算を組むなどして、無理矢理に実現するのであれば、それは不急不要の装備を抱え込むことになり、自衛隊の戦力を大幅にダウンさせることなる。その上国債発行が増えて財政事情が悪化するだけだ。そこまで無理してアメリカ製の装備を買い込む必要は全くない。

安倍政権は自衛隊の弱体化を図っているとしか、思えない。これを一番喜んでいるのは中国共産と人民解放軍、米国の兵器産業だろう。その①を読む

 

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