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.国際  投稿日:2017/12/18

中国パンダ外交でフランスに接近


Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

【まとめ】

・中国のパンダ外交、仏にも。両国の経済関係が密になり始めている。

・スーパーなどでも中仏合弁が進む。

・2018年は日仏国交160周年、日本もフランスとの関係強化に官民挙げて取り組むべき。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明・出典のみが残っていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=37424で記事をお読みください。】

 

フランス中部にあるボーバル動物園で、中国から借り受けているジャイアントパンダのつがいの間にオスの赤ちゃんが生まれ、先日命名式が行われた。

命名式に出席したマクロン大統領の妻のブリジットさんは「ユエンモンはフランスと中国の絆の象徴です」と述べ、また今回の式典に出席した中国外務省の張業遂次官は、「中国とフランスとの関係は新たな段階に至った」と強調していたのが印象的だったが、実際のところ近年、フランスは経済面において中国との関係が密になりつつあると言っても過言ではないだろうと言うのが正直なところだ。

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▲ 写真)命名式でのマクロン大統領妻 ブリジット氏と赤ちゃんパンダのYuan Meng  出典)Beaubalzoo Twitter

 例えば、上海のとあるスーパーの駐車場に完全無人のコンビニBingo Box」が開店したことが日本でも話題になっていたのは記憶に新しい。がしかし、そのコンビニは、フランスと関係していることは知っていただろうか?無人のコンビニシステム自体は、中山市賓哥網絡科技というベンチャーが開発したものだが、運営のサポートを台湾系スーパー「大潤発」と、フランス系スーパー「欧尚(オーシャン)」の合弁会社が行っている。

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▲ 写真)無人のコンビニシステム 

   入店の際は専用アプリで、「入店する」をタップするとドアが解錠される。 出典)BingoBox(繽果盒子)

 

そのオーシャン(フランス語でAUCHAN)は、今度は中国最大のeコマース会社「アリババ(Alibaba Group Holding Ltd.)」と提携することも決まった。この提携により、同社はフランスとの関係を構築することになり、提携する両社が持つオンラインとオフラインの専門能力を組み合わせて、食品の販売網が開拓されることが期待されている。

さらにアリババと言えば、Vinexpoとも今年6月に提携が行われた。Vinexpoは1981年にボルドー商工会議所によって創立され全世界のワインが集まる世界最大のワインイベントを行う会社だが、今後、アリババを通して、インターネットでのワインの流通を図るとしているのだ。

フランス国内のワインの消費量は年々減っており、輸出先を開拓することが重要課題であったが、ワインの消費量が世界で5位になった中国に直接販売でき、アリババが門を開いている世界にインターネットを通じて売れる販売経路を得られるとなれば、メリットが大きい。

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▲ 写真)VinexponoとAlibaba Groupが覚書(MOU)を締結する様子 出典)VINEXPO Bordeaux2017©Jean-Bernard Nadeau

 

中国との経済活動が活発になることによってフランスにおいての中国語の需要は年々高まり、中国語を高校の授業に取り入れる学校も増えて来た。パリのあるイルドフランスだけでも中国語を教えている高校は24校ある。

ちなみに日本語が学べる高校は現在イルドフランスでは2校のみだ。フランスはヨーロッパでもっとも日本語を習う学生の人数が多く、今年はその人数も過去最高であっても、この数の差なのだ。このことからも、フランスでは中国が重要視されつつある現状が垣間見れるのではないだろうか。

しかしながら、フランスにおいて日本が完敗しているわけではまったくない。カメラはニコンやキャノン、フィルムは富士フィルム、ゲームは任天堂など、複数のメーカーが長きにわたり一定の地位を確立している。またフランスの市場から次々と姿を消した日本電化製品も、最近ではスーパーの広告にパナソニックのテレビやソニーDVDプレイヤーなどがおすすめ商品に掲げられ、高価格帯だけではなく、低価格帯でもまたチラホラみられるようになってきたのだ。

だいたい大きく躍進した日本以外のアジア勢も、今後も成功続けられるかはわからない。例えば、フランスでは自国ブランド製品が多く出回るようになってきたことは大きな打撃だろう。前出のフランスのスーパー・オーシャンは、2013年に独自の電化製品のブランドであるQiliveを立ち上げたが、まだ4年しか経っていないのにもかかわらず、コンピューター、タブレット、携帯、DVD、電動ブラシ、電子レンジなどなど、他分野の商品が次々と発売され急速に成長しているのだ。そして驚くことに、つい最近までLenovo、ASUS、LGエレクトロニクス、SAMSUNGの製品ばかり並んでいた店頭にQiliveが占める割合が増え、低価格帯の分野で大きく名前を上げ始めている。

メーカー評価サイトでも、韓国や中国製品とほぼ同じと評価されているが、フランスのメーカーであるためか、デザインも優れていて、自国メーカーと言う理由で商品を選ぶフランス人も多く、これからももっと伸びていきそうな勢いなのである。日本の電化製品も再度販売数を伸ばせるかは、今後の活動しだいなのは間違いない。

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▲ 写真)Qilive 製品 出典)Qilive ウェブページ

おりしも2018年は日仏友好160周年にあたり、2018年7月から2019年2月パリを中心に大々的に日本の文化を紹介する機会を設けられる。これを機に、フランスでの日本を大きく盛り上げられるようにもっと多くの人が活動するべきだ。

伝統から現代に至るまで日本文化の根底に共通して存在する、自然を敬い、異なる価値観の調和を尊ぶ「美意識」をテーマとして、「ジャポニスム2018:響きあう魂」というタイトルのもと、多種の展示などが設けられるのだ。展覧会は、日本文化の原点とも言うべき縄文、伊藤若冲、琳派から、最新のメディア・アートやアニメ・マンガ・ゲームまで、舞台公演は、歌舞伎、能・狂言、雅楽から、現代演劇、初音ミクまで、さらには食、祭り、禅、武道、茶道、華道などが紹介されると言う。

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▲ 写真)ジャポニズム2018 ウェブサイト 出典)ジャポニズム2018

確かに日本の昔からの伝統芸などの公演や展示も大切だとは思うが、それよりもこういった活動を通して、ロボットなどを含む日本の技術系の製品をアートと言う形で興味をひかれる内容と方法でアピールするなど、多くの方面で出来る活動を模索していくべきだろうし、国も積極的に支援していく姿勢を見せていって欲しいところだ。

2018年は、フランスにおける日本の大きなターニングポイントの年になることは間違いない。来年を見据えて今からしっかり活動を行っていくことが大切ではないだろうか。

 

▲トップ画像 写真)マクロン大統領妻 ブリジット氏と中国外務省の張業遂次官

出典)Beaubalzoo Twitter

 

 

 

 


この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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