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.政治  投稿日:2018/2/21

安倍改憲案、国民の選択の機会奪う 山尾志桜里衆議院議員


「細川珠生のモーニングトーク」2017年2月3日放送

細川珠生(政治ジャーナリスト)

Japan In-depth 編集部(大野友佳子)

【まとめ】

・「自衛隊を明記するだけ」という安倍提案は、重要な安全保障議論に国民が向き合うことを妨げるもの。

・自衛権は個別的自衛権に限ると明文で範囲を定め、交戦権・戦力との関係は憲法上整理すべき。

・立憲民主党の中で議論し、国民に選択肢を提示することが野党第1党の役割。

 

 

 今回のゲストは、衆議院議員立憲民主党山尾志桜里氏。安倍総理が積極的に発言をするようになった憲法改正の自衛隊明記について、今後手続きが具体的にどう進んでいくのか。自民党や、与党公明党の中でも意見が分かれている。

 

まず細川氏は、安倍総理が自民党総裁の意見として、憲法9条1項2項を残したまま自衛隊を新たな項目で憲法に書くと提案していることに触れ、この案に対して山尾氏の考えを聞いた。これに対し山尾氏は、「自衛隊を明記するだけとして、自衛権を統制せず、9条2項と現実の矛盾関係をも放置するのは、憲法改正と安全保障という極めて重要な議論に国民が向き合うことを妨げるような提案だ。」と厳しい見方を示した。

 

又山尾氏は、安倍総理の提案は「日本が通常兵力で五本の指に入る実力組織を持っているという現実と、戦力不保持・交戦権否認と定めている形式との矛盾について一切触れないまま、自衛隊を明記することで、その矛盾を憲法に固定化することになる」と指摘した。さらに「国益の観点から自衛権の統制ラインをどこに引くのかという重要な安全保障の政策論にも今回は踏み込まない」ことに対し、「国民を信じておらず、選択する機会を奪っている。」と厳しく批判した。

 

一方で山尾氏は「国民が我が国の安全保障の形をどう選択するのか、その選択を憲法にどのように位置付けるのか、本気で考えるきっかけにしたい。」と意気込みを見せた。

 

次に細川氏が「自衛隊と憲法を結びつけると一見、自分たちの力で守られていくと安全保障の面で前進するかと思われる。自分自身、自衛隊を明記すること自体反対ではないが、1項2項を変えないのなら実質的な内容はこれまでと同じだ。中身を変えるべきでは?」と安倍総理の改憲案に疑問を呈した。

 

これに対し山尾氏は、「2項を変えずに自衛隊だけを明記すれば、その自衛隊が行使する自衛権の範囲については憲法上の統制がきかず、法律事項に格下げされる。集団的自衛権を一部認めた安保法制以上に自衛の範囲を広げるか否かについても、今後、時の政権与党の判断にゆだねられることになりかねない。」」と述べ、「自衛『隊』を明記することが大事なのではなく、自衛『権』を国民の意思でしっかりと統制し、十全にここまでという範囲を定めることが肝だ。」と述べ、安倍総理の改憲案に異を唱えた。

 

細川氏が、「憲法9条2項の交戦権」についての意見を求めると、山尾氏は、「今までの政府答弁で、『(自衛隊の権限は)限界のある交戦権というふうにお考えくださるなら、それを交戦権と申して一向にかまいません』というものもある。9条の本質論から逃げず、たとえば、制約された個別的自衛権の範囲内で行うものは交戦権であり、その範囲内で持っているものは戦力である。しかし『それを超える戦力、交戦権は一切許されない』ということを憲法上整理することも検討すべきだ」と述べ、交戦権や戦力について歯止めをかけるべきとの考えを示した。

 

細川氏は、「憲法審査会で自民党側は公明党と協議をして、1項2項には手をつけずに自衛隊明記だけを出してくる可能性があるが、それを議論してくれとなったらどうするか。」と質問した。

 

これを受けて山尾氏は「前回の安保法制の議論に踏み込みたくないのだと思う。一度勝ったのだから、そこは触れずに形式的な議論だけで終わらせたいのだろうが、それは間違えている。」と指摘した上で、「このままいくとアメリカとの連携どころか軍事的一体化が進み、むしろ自律的に我が国の防衛を考えるということができない状況になるのではないか。」と懸念を示した。

 

こうした中、細川氏は「周りの自民党議員ら、議員同士で議論する機会を国民のためにも設けることはできないものか。」と提案した。

 

山尾氏は、立憲民主の中でも考え方をどこまで共有できるのかという課題があることを示した上で、「若手の中には『実質論をやるべきだ』とか、『党の支持者に絞って護憲を言うだけでは不十分ではないか』、とかいう人もいる。そう人たちと共通点を見出しながら、その先の選択肢を提示することが野党第1党の役割なのではないか。」と述べまずは立憲民主党の中で意見を出し合う必要があるとの考えを示した。また、「議員以外(メディア、学者など)も巻き込んで世論を形成していくことに注力していきたい。」と意気込みを述べた。

 

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年2月3日放送の要約です)

 

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

ラジオ日本HP http://www.jorf.co.jp/index.php

細川珠生公式HP http://hosokawatamao.com/

細川珠生ブログ  http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/

トップ画像:©Japan In-depth編集部

編集部より)

本記事は2018年2月19日10時36分に掲載されましたが、その後記事に加筆する為一旦記事を取り下げ、本日再掲載致しました。

 


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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