「9条の範囲内で自衛隊明記」自民党下村博文衆議院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月15日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(大川聖)
【まとめ】
・自民党は結党以来、憲法改正に取り組んできた。
・憲法9条、緊急事態条項、『合区』解消、教育の充実の4項目の条文案を作った。
・解釈を変えるわけでなく9条の範囲内で自衛隊を明記し、明確に合憲と位置付ける。
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憲法改正を巡る議論は自民党総裁選では争点にも挙げられたが、今国会で議論は進まず、条文案提示には至らなかった。政治ジャーナリストの細川珠生氏が自民党憲法改正推進本部長の下村博文衆議院議員に話をきいた。
■ 憲法改正を巡る歴史
下村氏は「世界196か国で憲法は制定されているが、戦後72年、一度も改正していない国は日本しかない。一番改正修正している国は100回のインド。ドイツ60回、フランス27回。アメリカも結構ハードルは高いがそれでも20回。中国でも10回。(制定された順では)14番目に古く、尚且つ一度も改正していないという意味では世界で最も古い憲法。」と述べた。
一方で下村氏は「それで(我が国は)民主主義国家、立憲主義国家、あるいは国民主権の国と言えるのか。72年前と今とでは、例えば外交防衛政策も、相当状況が変化している。」と指摘した。下村氏は「日本が本当に独立したのは1952年のサンフランシスコ講和条約。自民党結党が1955年。独立国家になって、日本が自分たちの憲法は自分たちで作ろうよというのが、自民党結党時の自主憲法制定。」と述べ、自民党が結党以来、憲法改正に取り組んできたことを改めて主張した。
これに対し細川氏は「今の憲法はまさにGHQ占領下でできた。私の父は新聞記者だったが、占領軍費という言葉一つ使えず、終戦処理費と書き換えさせられていた。そういう中で当時は、独立をしたならば自分たちの手で自分たちの憲法を作りたいという思いでいた人も多かった。」と述べた。
■ 自民党改憲案4条項
そのうえで細川氏は「何故、自民党は4項目に絞って改正案を作ったのか。」と質問した。
まず、下村氏は「安倍政権で、自民党結党以来初めて、いわゆる改憲派勢力が三分の二を超えた。さらに国民投票法ができ、一つ一つについて国民に賛否を問うという具体的な状況が戦後初めて出来た。」と述べ、憲法改正をするにあたり前提となる条件が初めて整ったこと強調した。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
続いて、下村氏は自民党が具体的に議論している4項目を挙げ、「一つは憲法9条はそのままにしましょうと、平和憲法と言われる象徴でもある。しかし、加憲として自衛隊を認めたらどうか。
二つ目は緊急事態条項。これから30年以内に70%の確率で首都直下型地震や南海トラフ地震が起きるかもしれない(と言われている)。そのような時の対応として緊急事態条項を加えたらどうか。
三つ目、教育における全ての人にチャンス可能性を提供し、またこれから教育が日本の大きな政策の中の柱として位置づけるというプログラム法。教育について加憲する。
四つ目は、前の参議院選挙では、人口によって選挙区を決める(『合区』)ため、都道府県から(一人ずつ)出せなかった。これは憲法改正しないとできない。
この四つに絞って条文イメージ案を作った」と答えた。細川氏は「緊急事態条項、教育は比較的国民も納得しやすい、現実的な案に絞った。」と評価した。
■ 9条改正案
一方で、細川氏は「9条改正は賛否が分かれる。改正派にとって、自衛隊明記で改正の一歩になる一方、中身は変わらない。何故、自衛隊明記に留まる改正案にしたのか」と聞いた。
下村氏は「実際、国民の多くが自衛隊を認め、あえて憲法に明記する必要もないのではないかという話もある。しかし、憲法学者の6、7割が違憲だと言っていて、教科書にもそう書いてあり、自衛隊募集を地方自治体は協力することになっているが、協力しているのは38%。自衛隊を明確に合憲と位置付けようというのが、自民党の改憲条文イメージ案である。」と述べた。
これに対し細川氏は「自民党案では、自衛のために自衛隊は存在し、その行動範囲については法律で定め、国会が承認すると書かれている。自衛権の範囲が一体どこまでかという批判もある。」と聞いた。
下村氏は「9条の2として加憲、追加する。解釈を変えるわけでなく、9条の範囲内で自衛隊を明記する。危惧がもしあるならば9条の範囲内における自衛隊の位置づけを国会で議論する。」と答え、自民党は9条の範囲内で自衛隊を明記し、批判に対しても議論する姿勢を改めて示した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年12月15 日放送の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。