[為末大]心配ない、なるようになる。宇宙全体の大きな流れの中では、本当になるようにしかならない
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
努力云々、成功云々の話を私はよくする。私がどうしてそこにそれほど執着するかというと自分自身の人生もさることながら、一歩引いてみた時、世の中は不条理であるという事すらこえて、ひたすらにそのままじゃないかと思っているから。
例えば努力云々の話を、動物界に適応したらどうだろうか。植物も生き物には含まれる。更に言えば受精しなかった命もある。いつから命と呼ぶのかを私達は形で見ているけれど、本当はただひたすらに遺伝子がつながっているだけのように思える。
私達が命と呼ぶものは、狭義では目の前を行きている人間、広義では動物や植物も含め、更に本質的にはこの世に生を受けなかったものも指すのだと思う。狭義での命は、つながり流れ行く遺伝子のある一時の形を指しているだけ。
比較的西洋風な見方が自分には固定されていて、そうなると人間から見た世界は不条理であるから弱肉強食、適者生存という世界観になる。けれどもどこにも視点をおかないと仮定すれば、生き死にも、海が蒸発し雲が出来雨が降り川ができるような、ただの一連の流れに過ぎない。
宇宙全体が大きな流れの中にあり、その一細胞である地球の、更に一つの種の中の自分。征服した、理解したという事の底の浅さを知りながらそれでも大きな揺らぎの中でこうでもないああでもないと右往左往する自分。
心配いらない。なるようになる。それは慰めではなくて本当になるようにしかならないほど、大きな流れの中を私達は生きている。その一瞬の揺らぎをああだこうだと悩み考える私の小ささ。
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