[水野ゆうき]<地方議員は役所の窓口ではない>『票』の為なら何でもする議員と『票』をちらつかせる有権者
水野友貴(千葉県我孫子市議会議員 )
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政治家の仕事って何だろう?
「政治家」という職業をざっくり分けると政治家とは、
- 閣僚
- 国会議員(与党)
- 国会議員(野党)
- 知事
- 都道府県議
- 市町村長
- 市町村議会議員
であり、その仕事内容は全く異なる。
大前提として国は議院内閣制であり、政権与党が国を運営するシステムだ。国を動かす閣僚は省庁のトップを担う。議会多数派が与党であり、野党議員が国会で政権与党に対して追及するシーンをテレビ中継でよく見るだろう。
そして、二元代表制である地方では国とは全く異なる制度に基づき政治が運営される。 まず、知事や市町村長自身が直接選挙によって有権者から選ばれる。国では当選した与党議員から議員間で協議し選ばれる。有権者によって選ばれた首長は行政トップとして役所内唯一の政治家として職員をまとめる。
その首長に対し、適度な緊張関係で行政をチェックするのが議会。こちらも有権者によって直接選ばれた議員たちだ。当選議員たちによって構成される組織が議会となり、その議会に首長派が多ければ、単なる追認機関となることがこのシステムの問題点の一つとされている。
我々議員は首長が市民の税金で適正な行政運営をしているか、全市民を考えた政策を遂行しているか、予算の無駄遣いはないか、などをチェックすることが主な役割の一つである。一方で執行権、予算案・議案提出権は市長にあることから、いかに首長選挙が重要であるかということがわかるであろう。
しかし、行政のチェック機関として議会を認識している有権者は意外と少ない。それは、これまでの政治家がこの制度をある意味上手に利用したことによって間違えた政治家の仕事を有権者に植えつけたからだ。
政治家になるためにはどうしても『票』が必要不可欠だ。行政と「うまくやる」ことで自分の支持層へ「お返し」をしてきた。これにより議会と行政のバランス関係が崩れる。議員を介せば通りやすいことを知っている市民、票を得るには市民のエゴ的要求でも行政に話を通すために行政となれ合い関係を築く議員、議会で議案を通すために議員の要求を飲む首長。つまりそれぞれの思惑が一致した結果、議員=役所の窓口として議員を御用聞きと勘違いした有権者があまりにも増幅した。
ここで問題視すべきはこれらは特定の人たちによるもので、我々の税金で行われているということだ。 私が議員になってから受けた陳情は数十を超える。その中で至極真っ当で行政が是正すべきと判定した陳情は約半分。もう半分はエゴと言わざるを得ない。
例えば雪が降れば「玄関の前に雪があって出られない。雪かきしにこい」などという内容も届く。言葉遣いも不愉快極まりないが、あまりにも幼稚な陳情にがっかりすることもある。丁重にお断りし、議員の役割を説明するとともに市に連絡するよう伝えると「お前には二度と票は入れない」となるわけだ。
この手法で味をしめた有権者がいるのは、これに対応してきた議員が相当数いるからだ。それが市民の税金であろうと『票』の為なら何でもする議員と『票』をちらつかせて利用する有権者。この関係性を断つにはまさに「是々非々」の議員が増え、特定地域だけでなく本当の意味で全市・全市民を考えた議員が増えなくてはならない。
だから地方議員に政党や組織は不要なものだと考える。縛りがあればあるほど、「市民」を思った政治からは離れていくからだ。
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