[為末大]<ダライラマ14世にお会いして>自分を知ろうとするよりも、何かを行おうとする事で自分が現れる
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
先日、ある会合に出席していたのだけれど、そこでダライラマ14世に直接お話できる機会が急にできた。一対一だったので何を話していいかよくわからなくなって、集中している時に自分の意識はどこにありますか、とだけなんとか聞いてみた。
「『自分がいる』と思いすぎないようにしています」と、少し質問とは違う答えをいただいた。でも正直な所、法王は手を握りながらお話をされるから、言葉よりも手が思ったより大きくて柔らかかったのが印象に残った。多分僕はとても落ち着いていたと思う。
会議の最中に一つエピソードを話されていた。メキシコのカソリックの教会で会合があった時、ダライラマ法王は「私達は服を着ていますが、それを脱いでしまえば何にも無くなるでしょう」とおっしゃった。
ダライラマ法王は先のダライラマ法王が亡くなられて数年後に、生まれ変わりの子供を探しにいくと聞く。僕は輪廻を信じていないから、僕からすればある日、急に「あなたはダライラマです」と言われ、ダライラマという役割を背負っていくのだと思う。
帰りの道中で、ぼんやりと本当の自分の性質があると僕は信じがちだけれど、本当は行ってきたもの、行っているものが自分とも言えるんじゃないかと考えた。自分を知ろうとするよりも、何かを行おうとする事で結果として自分が現れる。
瞑想もいいでしょう。でも社会に貢献する接点も大事ですと法王がおっしゃられていた。心も自分も直接見るより使ってみた方が結局わかりやすいという事なんだろうかと思った。
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