[安倍宏行]<世界に報道された日本政治の恥部>セクハラ・ヤジ問題は男性にとって他人事ではない
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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「海外メディアが報じないといいけど・・・」
誰かのコメントが私のFacebookのニュースフィートに載った。が、そんな願いもむなしく、多くの海外メディアがこのセクハラ・ヤジ問題を「性的虐待(sexist abuse)」との見出しでセンセーショナルに報道した。
女性蔑視の国・日本、というイメージがまたぞろグローバルに拡散された。何をかいわんやである。ヤジを飛ばした議員は軽い気持ちだったかもしれないが、その罪は重い。
当初、東京都議会は対象議員の特定が困難として塩村議員らが提出した処分の要求書を不受理とするなど自浄作用を働かせることができず機能不全に陥った。対応の遅さは目を覆わんばかりだ。それよりなにより、ちょっと調べればすぐにバレてしまうことが想定されるにも関わらず、ヤジ議員が名乗り出るのも遅かった。誰かに特定されることほどかっこ悪いことはないのだが。
さて、ここで考えたいのは、日本の社会の「空気」である。働く女性が増えてきたとはいってもまだまだ少数、社会には女性蔑視の空気が蔓延している。セクハラの基準としてよく言われるのが、「自分の妻・娘が言われて嫌だと思うであろうこと」というのがあるが、そうした想像力が働かない男性が多いのが実態だろう。
大学生と食事をしても、平気で女性に飲み物を注がせたり、食べ物をとりわけさたりしている男子学生がほとんどだ。いったいいつの時代なのか、と目を疑う。21世紀になっても20代の独身男性のおよそ3割が、結婚したら妻には専業主婦でいてほしい、と思っているとの調査結果もある。
家事を分担する夫もまだまだマイノリティだろうし、育児休暇を取る男性もほとんどいない。女性が産休を取ったり、出産後時短勤務だったりすると同僚から冷たい目で見られる。ベビーカーを押しながら公共交通機関を利用すると邪険にされる。安心してマタニティマークが付けられない。
そんな、女性に優しくない社会で「産めよ育てよ」というのは勘違いも甚だしい。順番が逆なのだ。
そうした中、21日、内閣府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」で、少子化対策の「成果目標」を定めたら?との意見が出たという。
出生率や年間出生数などを想定しているらしいが、これまた本末転倒の議論である。 「産む」「産まない」は個人の権利、さらに「産みたくても産めない」 人もいる。それ以前に「結婚する、しない」の選択もあるし、これまた「したくてもできない」人もいる。少子化の理由は複合的で複雑なのだ。
さらに前述の「社会の空気」がのしかかる。 本当に「危機突破」したいなら、子育てしやすい環境の整備も無論だが、まずは、「女性が働きやすい社会の空気を作ること」が先決だろう。そのためには、男性の意識が変わらないとどうにもならない。
低レベルのヤジを飛ばして悦に入っている議員は論外としても、普段自分たちが、女性に対して謙虚で優しい気持ちになっているかどうか、振り返る必要がある。
女性に優しい社会は、安心・安全で、豊かな社会であると信じる。そうした社会にあって、初めて私たちは、「子供は国の宝、一人でも多くの子供を。」という心のゆとりを取り戻せるのだと思う。古来、女性は太陽であったのだ。我々男性はすべて母から生まれてきたことを忘れてはならない。
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