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.国際  投稿日:2014/6/28

[三木絵未奈]<女子大生が見るセクハラ・ヤジ問題>ヤジを受けた女性議員が、発言者の特定に力を注いだことに違和感


 

三木絵未奈(立命館大学・カナダ留学中)

 

連日報道されるセクハラ・ヤジ騒動。私が残念に思ったのは、発言者が名乗り出るのが遅かった事でも、理事会への調査要求が拒否された事でもない。ヤジを受けた当事者が、発言者の特定に力を注いでいる点であった。追求すべきはそこではない。

議員の言葉は有権者の言葉。これは、ヤジを飛ばした議員だけではなく、世の多くの男性が「女性は早く結婚しろ」、「子どもを産め」という認識を持っていることを反映した騒動のように思う。一方で、女性が安心して子どもを産み、子育てが出来る環境が整っているかといえば、そうではない。

この日本人の認識を私の留学先のカナダと比較してみると、結婚・育児に対する国民の意識の違いは明白だ。カナダでは、結婚は個人の選択の自由だという認識が強い。結婚して子どもを持ちたいと思う女性もいれば、独身で人生を思う存分楽しみたいという人もいる。

カナダ放送局(CBC)による統計では、現在50パーセント以上のカナダ人が独身であり、子どもを持つ家庭を上回っている。一方、日本には、「結婚」は皆が目指すべき人生のゴール、このゴールに辿り着けない者は「負け犬」という固定観念が根付いている。

また、カナダに来て驚いたのは、育児に対する社会全体の協力的な姿勢だ。バスや電車などの公共交通機関でベビーカーを利用する人は多い。バスの運転手の助けだけではなく、乗客も席を譲ったり、ベビーカーのためにスペースを空けるなどの行為は当たり前で、嫌な顔をする人は見た事がない。日本ではどうだろうか。最近では妊婦が安心してマタニティー・マークをつける事さえ出来ないという。

さらに、カナダではベビーカーを押す男性の姿を多く目にする。共働きは一般的で男性が育児休暇をとることも珍しくない。女性が結婚・出産を経て職場に戻る事も普通なのだ。最近では、職場には行かず、家にいながらパソコンで仕事をする人も増えてきているという。

2010年に行われたある統計では、65パーセントの男性が家事をしていると答えた。カナダでは夫婦で家事を分担することは一般的な考えとして定着しつつある。

一方、経済協力開発機構(OECD)による調査では、対象国34カ国中、日本人男性は家事に最も協力的でないとの結果が出た。「イクメン」という言葉が出来たのも、育児は女性がするものという思想の象徴だといえる。2013年ジェンダー指数ギャップランキングでは20位のカナダに対し、日本は105位。高い識字率と教育水準を誇りながら、女性の経済や政治への参加率の低さが足を引っ張る結果となった。

では、日本が抱えている女性の晩婚化と少子化の解決には何が必要か。

それは、「女性は結婚すべきだ」という考えを改め、女性が「仕事と家事・育児を両立できるような社会にすることだ。そうした社会の実現には、男性の育児休暇の推進、家事の分担など、男性の協力がないと不可能だ。

その上で、慣れない家事・育児に努めようとする男性を受け入れ、暖かく見守る女性の姿勢も重要である。そうして初めて、子どもを持つ夫婦が安心して子育てが出来る社会になる。全てを変えていくのは私たち一人一人の意識であることを忘れてはならない。

 

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【執筆者の紹介】三木絵未奈(みき・えみな)

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1993年京都生まれ京都育ち。立命館大学国際関係学部に進学。2013年2月から1ヶ月間アメリカのニュージャージー州へ留学。2013年8月から現在にかけてカナダのUniversity of British Columbiaに留学中。人種・性別・言語など人の“違い”を見つめ、アイデンティティーを尊重しあう社会”を築くために若い世代の私たちは何をすべきなのかということに興味を持ち、自分なりの答えを見つけ出すために、多文化国家であるカナダで日々多様性を感じながら模索しています。エネルギッシュに生きたい!! 人にパワーを与えたい!! 刺激的な毎日を求め、学生としても人としても成長するために留学を決意。異国の地で日々奮闘中の現役女子大生!


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