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.経済  投稿日:2013/10/24

寺田倉庫3代目・寺田航平氏と「ファミリービジネスのあり方」


野田万起子(インクグロウ株式会社 代表取締役社長)

執筆記事FacebookTwitterWeb

先般月刊誌の対談で素晴らしい経営者にお会いすることができました。

寺田社長はビットアイル社の創業者であり、倉庫業界の老舗、寺田倉庫の3代目でもあります。私は最初、寺田倉庫の跡取り社長というイメージを持っていたのですが、寺田航平氏はベンチャースピリッツ旺盛な創業経営者でいらっしゃいました。

寺田氏は大学を卒業後、大手商社に入社、最初は先代の会社に戻ることに反発をするも、99年に寺田倉庫に戻ることになります。そこで当時の寺田倉庫から中小企業の悩みを理解することになり、中小企業でも伸びていく会社を支えたい、そのためのリソースを提供することをミッションとし、29歳でビットアイルを創業することとなりました。

中小企業に安価にデータ蓄積の島(アイル)を提供できれば、発展途上の中小企業の役に立つことができる、そんな想いで事業構想を組み立てたのです。しかしながら、すでにデータセンター業界は大手の台頭で参入が厳しい状況であり、それでも寺田氏は自ら営業をしながら90社の投資家を回り3社からの出資を得て事業をスタートさせました。

「社長の仕事は資本政策と人事」であると、創業からの経営にその裁量を果敢に発揮されていかれました。一方で、子供のころからコンピューターのプログラミングが好きで培ったITスキルとベンチャースピリッツが、単にファミリービジネスの継承という枠に収まらず、「ファミリービジネスの延長」の分野でビットアイルを成長させていくことになりました。

その経営戦略は明確で、これまでのデータセンターの常識を覆し、すべての固定費を変動費化することに着手するなど、一つの島(ビットアイル)でインフラと人材リソースなどのリテールで中小企業を支える現在、当社は業界180社中14番目のポジションとなり更なる成長をし続けていらっしゃいます。(本年7月東証一部上場)

更には、最近はじめられたメガソーラー事業についてお聞きすると「2015年には全電力の20%がサーバーで使用する電力になることが分かっているので、これから業界が抱える社会問題をする為、環境問題も考えて取り組むのです。」という回答でした。寺田氏が固定費を変動費化し原価を抑えて利益を出してきた経緯を考えますと、固定費で最も高い電気を自らで作り社会にも還元していくという構想は非常に理解できるものです。

最後に、「寺田社長が最も尊敬する経営者は?」との問いに、意外な答えが返ってきました。

「自分は経営を本で学んだりはしません。そういう意味ではお手本にしているものはないのですが、あえて言えば父親です。」(寺田氏)

経営者でもあるお父様は、寺田氏の経営にいいとも悪いとも口を出さなかったそうです。そのような環境が寺田社長の経営者としての才覚を育んでこられたのかもしれません。

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【プロフィール】

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野田万起子(のだ・まきこ)インクグロウ株式会社 代表取締役社長、公益社団法人経済同友会、正会員 一般社団法人日本展示会協会 理事

昭和45年8月、静岡県生まれ。東京国際大学 経済学部卒。米国オレゴン州TIUアメリカ校卒。 平成5年、株式会社ベンチャー・リンク入社、平成16年 同社(東証一部上場)執行役員に就任。平成22年 同社取締役に就任。平成23年 インクグロウ株式会社 代表取締役社長に就任(現職) 金融業界分野で20年以上、全国の地域金融機関への支援業務に携わる。地域金融機関と一緒に、中小企業の活性化に向けたビジネスマッチングの取り組みを中心に、取引先の経営相談から、金融機関の職員研修など幅広く行う。


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