外国人でも70万円で安楽死ができる国~自殺幇助合法のスイス、安楽死ツアーも~
磯村かのん(ライター・通訳・起業家)
スイスと聞いて皆さんは何を連想しますか?
雄大なアルプスの山々と美しい湖、プライベート・バンキング、草原を走るハイジ、放牧された牛の乳でつくられたチーズとチョコレート、高級スキーリゾートなどが有名ですが、スイスは非営利に限り自殺幇助が合法なので、密かに安楽死ツアーも有名です。
自殺幇助機関である「エグジット (Exit)」または「ディグニタス(Dignitas)」に登録すれば、不治の病の末期で耐え難い苦痛を伴う場合など、苦しまずに自死することができる仕組みになっています。約7万人の会員がいる「エグジット」はスイス在住者のみ登録ができ、かかる費用は年会費だけでUSD27(約3千円)。「ディグニタス」は外国人も登録することができ、入会金と諸費用を合わせて安楽死には約USD7,000(約70万円)が必要です。同機関には世界60ヵ国から5500人が登録しています。
安楽死はスイスの他に、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、アメリカの4州(ワシントン、オレゴン、モンタナ、バーモント)で合法となっていますが、外国人に安楽死の機会を提供するのは「ディグニタス」だけなので、スイス安楽死ツアーが存在しているのです。
もちろん安楽死に至る判断は厳格に行われます。会員の医療記録が徹底的に分析され、生きてゆくのが困難だと判断された場合のみ、致死薬が処方されます。うつ病などの精神病は安楽死の対象外です。むろん、安楽死については賛否両論があります。「ディグニタス」によると、致死薬の処方が可能と判断された会員の8割は、苦しまないで死ねると分かるだけで安心して自殺しないので、自殺願望を弱める効果がある。また、適切に幇助をすることで自殺未遂の後遺症を防ぐという利点がある、としています。
一方で、病人や老人などの弱者が、家族や周りの人々に圧力をかけられた結果、本人の意思に反して安楽死を選択してしまう危険性が指摘されています。この対策として、本人とカウンセラーが徹底的に話し合い、安楽死は本人の希望であると確認をとるようになっています。しかし、それで十分かどうかは議論の余地があります。
世界一の長寿国、日本。ご存知の通り、我が国では安楽死も尊厳死も認められていません。自分の死をどう迎えるのか。これを機会に考えてみませんか?
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