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.政治  投稿日:2016/4/29

W選諦めぬ安倍首相にモノ申す


      山田厚俊(ジャーナリスト)

町村信孝前衆議院議長死去に伴う北海道5区の補欠選挙が4月24日に投開票され、町村氏の娘婿で、自民党公認の和田義明氏=公明党、日本のこころを大切にする党、新党大地推薦=が、無所属の池田真紀氏=民進党、共産党、社民党、生活の党推薦=を破り、初当選を果たした。

 しかし、それぞれの得票は、13万5842票対12万3517票で、1万2325票差。事前の世論調査でも接戦で、テレビ各局は夜10時20分ごろまで当確を打てずにいた。「弔い合戦の勝率は9割以上。本来なら、開票直後の午後「8時すぎに当確がでなければ、おかしい選挙」(自民党関係者)が、薄氷の勝利で安堵した格好なのだ。

 「投票率がもう少し上がれば、勝てた。しかし、もう一歩のところまで追い詰められたのは一定の成果だと評価したい」

 民進党関係者のこの言葉は強がりではなく、本音だろう。投票率は57.63%。前回(2014年)の衆院選を0.8ポイント下回った。前回より1ポイントでも上回れば、違った結果が得られたのかもしれない。

 熊本地震以降、永田町では衆参ダブル選挙は見送られたとのムードが漂っていた。この北海道補選の結果を受け、自民党内では「もはや、ダブル選挙は危険なことであって、あり得ない」との見方になった。とんでもないどんでん返しを食らって、安定政権をぐらつかせる元になりかねないからだ。しかし、安倍晋三首相だけは違うとの見方がある。

 「まだ安倍首相は衆参ダブル選を諦めていません」

 こう語るのは、安倍首相に近い関係者だ。巷間伝えられる憲法改正に向けた意欲は失っていないからだという。そして、こう続ける。

 「常識的に考えるなら、北海道補選の結果を見て、参院選単独に絞った戦略に転換し、任期まで安定政権を維持することを考えます。しかし、安倍首相にとって憲法改正は“自身のレゾンデートル”で、その端緒をつけなければ首相でいる意味がないと考えているようなのです」

 もはや、経済政策だけに注力して任期を全うするのでは、死に体同然だというのだ。だからこそ、何かしらのきっかけを掴んでダブル選で勢いを取り戻したい考えなのだという。

とはいえ、官邸内も菅義偉官房長官をはじめ、ほとんどがダブル選否定論者。自らの存在意義を考える前に、震災で苦境に喘いでいる国民の生活を考え、無意味な政局は止めにした方がいいのではないだろうか。


この記事を書いた人
山田厚俊ジャーナリスト

1961年、栃木県生れ。東京工芸大学短期大学部卒業後、建設業界紙、タウン紙の記者を経て95年4月、元大阪読売社会部長の黒田清氏が代表を務める「黒田ジャーナル」に入社。阪神・淡路大震災の取材に加わる。震災取材後、事務所から出向する形でテレビ制作に携わる。黒田氏死去後、大谷昭宏事務所に転籍。2002年から週刊誌で活動を始める。2009年2月、大谷昭宏事務所を退社。フリー活動を開始。週刊誌をはじめ、ビジネス誌、月刊誌で執筆活動中。

山田厚俊

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