[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2014年1月13日-19日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
安倍首相はアフリカを訪問中だが、最近行われた世論調査では概ね支持率が上昇している。大騒ぎとなった昨年末の靖国参拝以前と比べてもかなりの回復であり、中には62.5%という数字もあったほどだ。但し、日本の世論は決して単純ではない。
例えば、各種世論調査での靖国参拝に対する評価は拮抗しており、参拝に否定的な声が肯定する声を若干上回っている。こうした数字を米中韓などの在京大使館政務班はどう分析して本国に報告するのだろうか。個人的には非常に興味がある。
今週日本での最大のイベントは沖縄の名護市長選挙だろう。埋め立て工事は既に県知事の承認を得ているので、誰が勝っても法的効果は変わらないらしいが、政治的な効果は計り知れないといわれる。要注目だ。
中東では先週末、イスラエルのシャロン元首相が、8年間の闘病の末、遂に亡くなった。心から冥福を祈りたい。シャロンは対パレスチナ強硬派で知られていたが、倒れる直前にいわゆる「二つの独立国家」論を打ち出したことでも有名だった。
もし彼が倒れずに英断を下していたら、ハマースが台頭する前に和平が進展していたかもしれない。古今東西を問わず、大胆な政治決断はリベラル派ではなく、最強硬派だから可能なのだ。残念ながら、ネタニヤフはシャロンのような政治家ではない。
中東といえば、13日にシリアに関し米露外相会談がパリで開かれる。最大の反体制派でシリア和平会議に反対する「シリア国民連合」は17日に同和平会議への参加の是非と投票で決めるようだが、まだ出口は見えていない。シリアは壊れたままだろう。
更に、14-15日にはエジプトで憲法改正国民投票がある。現暫定政権の案文が承認されるのだろうが、では前回の国民投票は一体何だったのか。エジプト人は権力者が作った憲法草案を常に承認するだけなのか。エジプトの統治も壊れたままのようだ。
アジアではタイの状況が気になる。13日には首都が封鎖されるそうだが、また流血の事態になることが懸念される。それにしても、エジプトもエジプトなら、タイもタイだ。こんな騒ぎを一体何度繰り返せば、両国統治システムの機能が回復するのだろうか。
「途上国だから」と切り捨てるのは簡単だが、これで困るのは各国の庶民たちだ。途上国の政治エリートの能力の限界を見る思いがする。更に、中東以外にも、今週は重要なイベントが目白押しだ。
15日からは韓国の朴大統領が訪印する。インドといえば、米インド関係もギクシャクしている。発端はニューヨークのインド副総領事に対する尋問だったが、起訴するか否かの期限は13日だそうだ。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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