1人でいるより2人が得 仏の少子化対策
Ulala(ライター・ブロガー)
この近年、日本の経済が下降してきたあたりから結婚しない人が増えている。身近を見回しても結婚していない男女がゴロゴロいることに驚きを通り越して、すでに日常になった感じだ。
内閣府男女共同参画局(注1)によると、平成22年度 の生涯未婚率は、男性20.1%、女性10.6%であり、男性では5人に1人、女性では10人に1人は結婚していないことになる。この調子でどんどん結婚しない男女が増えれば、更に少子化が進み、将来の日本の基盤を揺がしかねない状況なのだ。
同じように少子化の危機に悩まされ、現在は見事に回復して高い合計特殊出生率を保つフランスについて考えてみると、1993年、1994年の合計特殊出生率は1.73まで落ち込んでいたことがあった当時は、結婚数が減少していた時期でもあることが分かる。
フランスは今もだが、当時も失業率が高く、いつまで定職についてられるかもわからない状況の若者も多く、一人で生きていくのも大変なのに結婚してパートナーの責任を持つことは考えられない、もしくは持ちたくないと考える者も多くいた。それでも、誰かと一緒に暮らしたいという気持ちはあり、会計は別だが一緒に住むという形で同棲する人達が多かったのだ。
そこで、出されたのが民事連帯契約(通称PACS)。1999年にフランスの民法改正により認められることになった「同性または異性の成人2人による、共同生活を結ぶために締結される契約」である。
最初は同性愛者のカップルの救済が主な目的で作られたものであったが、「結婚」と言う重みはなく、結婚と同等に近い権利を持つことができるということで、異性間カップルの間でも広がったのだ。
その結果、結婚自体の数は減ったが、PACSも加わることで、いわゆる「結婚状態」のカップルが急増し、それに伴い合計特殊出生率も2012年には2.01にまで回復した。
結婚+PACS(件) 合計特殊出生率(注2 INSEEより)
1994年 260,866 1.73
1999年 297,095 1.81
2012年 399,600 2.01
日本の結婚・家族形成に関する調査報告書(注3)を見てみると、結婚していない割合が多いのは、年収300万円以下の男性が特に目立つ。また、非正規雇用と正規雇用を比べた場合に、男性の非正規雇用が結婚していない割合が高い。この状況を見ると、日本の結婚率が低い層の人物像がフランス人の姿に重なって見えてくるのだ。
それでもフランス人は、積極的に同棲することにより共同生活にて得られる「精神的なメリット」が受け入れる環境にいた。それにプラスして、PACSすることにより、共同課税になることなどにより「経済的メリット」も手にすることができたため、急速に「結婚状態」のカップルが増えていったとも考えられる。
しかし、書類上の手続きはPACSよりも簡単な日本の結婚ではあるが、結婚することで「精神的メリット」はもちろんあるとしても、「経済的メリット」に関しては、実感できるぐらいあるだろうか?
例えば共働きであれば、女性の年収が141万円以上なら、国保の場合の保険料を除いて優遇措置はあまりない。それなのにもかかわらず、子供を産めば待っているのは高い教育費など、経済的負荷の方が大きくのしかかるのだ。
確かに、日本はフランスに比べて払っている税金は少ないので、税金でこのメリットを作り出すことも難しいとは思うが、例えば、非正規従業員男性が結婚した場合は、正規社員にしなければいけないと言ったぐらいの「一人でいるよりも結婚することは得なことである」と思える具体的な支援をしなければ、結婚する若者は減り続けるだろう。また、それらは、収入がまだ少ない若い世代も有利になるものであって、結婚する時期が全体に早まるのなら、少子化対策には更に効果的になると思うのだ。
(注1)内閣府男女共同参画局 「生涯未婚率の推移(男女別)」
(注2)INSEE(L’Institut National de la Statistique et des Études Économiques フランス国立統計経済研究所:インセ)フランスの公的統計作成と分析を行う国立研究所。「結婚とPACS数の変化」
(注3)内閣府 「平成22年度 結婚・家族形成に関する調査報告書」
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日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。