消費税再増税延期 参院選の争点は景気 ジャーナリスト末延吉正氏
「細川珠生のモーニングトーク」2016年6月4日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(Aya)
6月1日に消費税増税再延期の会見を行った安倍総理。ジャーナリストで東海大学教授の末延吉正氏を迎え、今後の日本経済と政治の行方について聞いた。
アベノミクスを掲げてスタートは順調だった安倍政権。財政当局は増税しても大丈夫だと言っており、消費税を5%から8%に上げたが、実際は景気回復のスピードが鈍化し、アベノミクスの効果が減じられてきた。
増税再延期を決意した安倍首相に対し、末延氏は、「アベノミクスを完結させて、デフレを完全に抜けて、経済をノーマルにして税収を増やしていく。そのためには退路を断って、批判があっても増税先送りをして、経済を立て直さなくては駄目なのだという決意を感じた。」と評価した。
消費税が5%から8%に上がった時、便乗値上げなどもあり、家計への負担が大きくなったと述べた細川氏は、「(安倍首相が)国民の生活感覚をわかってくださったなという気がする。」と増税先送りの決断を評価した。
一方、メディアの評価は二分されている。左派リベラル系や財務省に軸を置いた財政規律派は、再増税を続けるのはダメだと言っているが、末延氏は、今回の増税再延期について、「2020年にプライマリーバランスを黒に戻しながら、景気を戻すギリギリの選択。」だったとし、「お財布を預かっているところの意見だけで硬直的にやってしまうと、日本の経済は立ち直れない。安倍首相や菅官房長官はそのことをわかっていた。」と述べ、安倍首相は、麻生財務大臣には申し訳ない気持ちを持ちながらも、今回の選択に踏み切ったと解説した。
一方で、「メディアや民進党は情けない。揚げ足取りはできるが、マクロ経済でどうやったら復活するかについてアイデア、政策がない。」と批判した。また、自民党は、野党が出したアイデアでもよいものであれば取り入れると末延氏。秋に最大10兆円の大規模な補正予算が見込まれるが、それを打つときに今までは公共事業に投入していたが、民進党が言いだした介護等に投入する案などがそれにあたるとの考えを示した。
参議院選について、「争点は何か。選挙モード入ったら言わなければならないが、争点はない」と語り、「今まで色々な仕事をしてきた安倍政権にデフレ脱却を任せるのか否か。お灸を据えた場合、お灸を据えたあとどの政策で誰を選択するのがない。」と述べた。
参議院選で勝利すれば、安倍首相は再び解散権を手に入れる。もう一度解散し任期終了前に選挙に勝てば、オリンピックも決めた人だし、もう少しやってもらってもいいのではないかという声が出てくるかもしれない。「問題は、参院選で国民の信頼を得られるか。そして解散権を持って景気を戻して、どのタイミングで解散に打って出るかで政局が動く。」と末延氏。
野党に対しては「二大政党を目指しているわけだから、政策を中心に自民党に代わる野党が育ってほしいと願っている。」と期待感を示した。「争点がないとは言え、アベノミクスを中心とした経済対策に、今後期待するかが国民として判断基準だと思う。」と細川氏は述べ、「今だけを見るのではなく、今後のことを見てほしい。」と語った。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2016年6月4日放送 の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。