都民ファーストの会公約分析① 東京都長期ビジョンを読み解く!その49
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・小池知事、豊洲市場への移転・築地も活用との基本方針示す。
・「都民ファーストの会基本政策集」、都民感覚が反映されている。
・「談合」「口利き」防止、というなら、その根拠を示すべき。
■豊洲問題、ついに決着
東京都の小池知事が築地市場を豊洲市場に移転した上で、築地も活用する「基本方針」を示した。豊洲市場は中央卸売市場に加えて総合物流拠点に、築地市場は再開発し「食のテーマパーク」拠点とするそうだ。
豊洲市場は年間100億円の赤字が見込まれ、築地を売却しないでどう返済するのか疑問はあるが、6000億円かけて建設した豊洲市場を使わなかったら国に200億円返さなくていけなるわけで、あそこまで作ってしまったらしょうがないというのが正直なところだろう。豊洲移転の方向性に落ち着いたことは妥当な判断かと思われる。
新たなハコモノを作ってどうするのかとの疑問はあるが、詳細や今後の見通しが不明なので、今の段階では何とも言えない。
■当たり前の改革
さて、今回は都民ファーストの公約分析に入ろう。「都民ファーストの会基本政策集」、なかなか面白かった。13の基本政策と321の項目から構成される。ずいぶんといろいろな提案をしている。幅広く、時代のニーズを読んでいる。また、細かい中身を見ると、気迫がにじみ出ている。
中でも、
〇基本政策01 忖度だらけの古い都議会を新しく
自分ファーストの議員から、都民ファーストの議員へ。
【議会改革条例をつくります】
【議員特権を廃止します】
〇基本政策02 「のり弁」をやめます
「黒塗り」の公文書を改め、徹底的に情報公開します。
【公文書管理条例の制定で、情報公開を徹底します】
〇基本政策03 利権を一掃します
不当な口利きで、税金を無駄にする議員を許しません。
【「不当口利き」禁止条例をつくります】
この3つが基本政策の最初に来たことが、この団体の姿勢や理念を示しているといえよう。
それは改革ということだ。
情報公開したら黒塗りで資料が出てくることなど都庁では「当たり前」でなかったことがようやく是正されるという意味で、画期的なことだと思われる。これらは「当たり前」の都民感覚にそった内容で、都政に対して不信を持っている多くの人の心をつかむものだ。
■当たり前の根拠は?
しかし、「都民ファーストの会 政策集」の内容は素晴らしいものの、具体項目を見てみると、若干疑問を感じることがあった。
「議員の不当な都庁人事への介入禁止」
「議員の外郭団体職員採用への介入禁止」
「議員 OB の選挙管理委員の選出を見直し」
「入札制度改革を実施し、談合、口利きなどを防止」
という記載だ。
裏を返せばそういうこと(人事や外郭団体職員採用への介入、談合、口利き)が過去に行われていたということだろうか。過去に行われた→禁止というロジックだろうし、そう解釈できるというのが「当たり前」の感覚だろう。確かに、私も伝聞情報では、そうしたことが行われてきたと聞いたことがあるし、多くの人がそのことを口にする。
しかし、過去の都議会議員に対してリスペクトを欠く行為にもなる。だからこそ、「不当」の根拠や事実を明らかにしてもらいたい(選挙後でもいいので)。奈良市では市役所職員へのアンケート調査を実施・結果を公表している。もし、都庁職員へのアンケートなどがあるのなら公表してもらいたい。
行われた、行われたはずだ、行われたと聞いた、たぶん行われた、行われたのだろう、行われたかもしれない・・・・とならないように。
都民ファーストの会に期待する。
【注意】上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定団体を応援する目的で記載していませんので悪しからず。
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。