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.社会  投稿日:2017/7/24

東京都議選後の重い宿題 東京都長期ビジョンを読み解く!その54


 西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

【まとめ】

・都民ファーストの会圧勝の理由は「古い政治」への批判。

・政治経験少ない都議が多く誕生。

・都民は都政を厳しい目で評価し、SNSで発信すべし。

都民ファーストの会、圧勝

百花繚乱、もしくは千錯万綜。

7月2日の都議会議員選挙、都民ファーストの会が圧勝した。小池都知事への期待の高さ、クリーンな新しい都政への期待の強さを示したと言えよう。色々な分析はあるが、単純化すれば

論点:小池都知事の都政評価

影響要因:自民党のスキャンダル

ということだったと言えよう。

なんどもここで記載しているが、支持団体への過度の優遇、都政がなにやっているのかわからないといった「古い政治」が負けただけで、当然予測されたことだ。

今回当選した人たちは政治経験の少ないフレッシュな顔ぶれが並んでいる。彼ら・彼女ら目線で都政に対して問題意識を提起してほしいし、その意味で今後の都政に期待したい。長年、私が提起している内容は問われたとはいいがたい状況なので、そこは是非議会で進めてもらいたいもの。

他方、メディアは国政選挙との関係、人物ストーリーなどを中心とした報道で、都政の論点提起も出来ず、地方自治における第4の権力の限界を示したとも感じた。

今後、大事なことは3つある。

【議員の宿題】修正案提案、調査、都の行革支援に取り組め

当選おめでとうございます!

今回当選した音喜多駿さん(都民ファーストの会、北区)、木下富美子さん(都民ファーストの会、豊島区)、舟坂ちかおさん(自民党、葛飾区)といった西村の尊敬する方がいる一方、経験・勉強不足の当選者も多いと思われる。

・華々しいキャリアで振る舞うが、人格的に疑問な人

・利益団体ばかり向いて、その人たちの顔ばかり気にする人

・都庁職員におんぶに抱っこする人

上記のような議員になってしまっては困る。「何とかチルドレン」「魔の2回生」のようなことにならないことを祈るばかりだ。

こうした都議会議員に求められるのは、仕事内容。

つまり、どれだけの「価値」をどう見せてくれるのか?

年収1600万円!庶民から見ると、かなり高額の所得をもらう人になるわけだから、「勉強していない」「わからない」という答弁では困る(そういうことはないだろうが)。単なる知識ひけらかしや利用者目線の意見でも困る。政策・施策の現状や数字・論点を踏まえた提言や分析を求めたい。

小池都知事によりよい修正案を提案したり、画期的な調査をしたり、都庁の取り組みをバックアップしたり、都庁の行革の支援をしたりというところが期待される。

支持者や支持団体に迎合する、出世だけを考える方には早期にご退場いただきたい。

■【メディアの宿題】都ファの推薦組織・団体を報道せよ

都民ファーストの会を推薦している組織・団体を明らかにしたメディアは見られなかった。新聞で取り上げられたもので、私が目にしたのは「連合東京」くらい。どんな組織・団体が推薦を出しているのかくらいは報道するのが責任というものだろう。

なぜなら、10年後に振り返ったら、単なる自民党系利益団体から転換するだけの権力闘争に過ぎなかったね、ということになりかねない。

今後は、各事務事業ごとに

・事務事業の予算・金額

・関係者・受益者、その金額

・事務事業の目標達成度

・施策への貢献度

を吟味・検証する報道が求められる。

【都民の宿題】都政を監視しSNSで発信せよ

今回の選挙、国政と都政をごっちゃになっている人も多くいた。というか、それが普通だったのだろう。都政の施策や事務事業は、以下の点がこれまで整理されてこなかったのだから仕方ないことだろう。

・予算は適正な額か

・納税者が納得できる使い方か?

・施策にひもづく事務事業の優先順位は的確か?

・行政の役割は正しいか?

・個々の事務事業は効果が出ているのか?他のやり方はないか?

・有効性、効率性、公平性で見直す必要はないか?

そもそも都民にとって区市町村はまだしも、「東京都」は遠い存在。直接的に関係することは少ないが、多くの多大な影響を受けている、そういう存在。どのような仕事をして、どのような成果をだしているのか、理解するのが難しい。私事で申し訳ないが、筆者も都政とは何かを分かりやすく整理する必要を感じたし、今後この執筆で理解を促進し、皆さんの関心を喚起する文章を作らなければと考えた。

都民の皆さんが困っていることがあったら口に出そう。納得がいかないことには疑問を呈そう。SNSで発信しよう。今回当選した都議会議員の方々は皆さんに耳を傾けてくれるはずだから、気軽にメッセージを送ろう。

関心を持たなくなった瞬間に、政治は一部の集団が闊歩する余地を生む。


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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