「組織改革ようやく緒につく」牛島信弁護士
「細川珠生のモーニングトーク」2018年6月9日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(石田桃子)
【まとめ】
・一連の不祥事で組織のガバナンスについての議論が緒に就いた。
・日本で内部告発が起きにくいのは長期雇用制度のせい。
・一連の不正発覚は、社会に出る若者が将来を考える契機になる。
近年、財務省の公文書改ざん問題をはじめとして、民間企業でもデータ改ざんなどの不正発覚が相次いでいる。このような社会の状況について、弁護士の牛島信氏をゲストに迎え、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
細川氏が組織による不正の一例として挙げた、日本大学アメリカンフットボール部の問題について、牛島氏は「選手の行動がルール違反であるかというよりも、起こった重大なコンプライアンス違反に対して日本大学が組織としてどう対応するのかを重視した」と述べた。
牛島氏は、監督など関係者によるメディア対応から、日本大学という組織の未熟さが明らかになり、大規模な改革の必要性が浮き彫りになったと指摘した。不正が発覚した企業や組織についても、「問題が発覚し対応を迫られたことで、ようやく組織のガバナンスについての議論が緒に就いた。」との見解を示した。
上場企業の多くは、すでにガバナンスについての議論やその実施が進んでおり、その背景には投資家の存在が圧力となる状況があると説明した。日本大学でも、問題に責任を負うものを正当に処分する仕組みができつつあることを評価した。
細川氏が、東芝、日産、スバル、神戸製鋼といった企業を取り上げ、問題意識を自覚しないまま何十年も不正が続いていたことに対して疑問を呈すると、牛島氏はその理由として「不都合は起こらず自覚する理由がなかった」ことを挙げた。牛島氏は、不正が発覚した今も、企業は「今まで通りやり過ごせば世間はすぐに忘れるだろう」と述べ、時間が経てばまた同じ問題が繰り返される可能性を示唆した。
細川氏が、日本には内部告発が起こりにくい「国民性」があるのではないか、と指摘すると、牛島氏は、戦後高度成長の過程で確立された長期雇用が影響していると述べ、簡単には直らない根深い問題だと指摘した。しかし、その長期雇用の仕組みは現在壊れつつあり、今の状況を改革の議論を始める契機ととらえるべきだと述べた、
細川氏は、同じ会社に居続けることが最善とする考え方が蔓延している問題を指摘する一方、企業による一連の不祥事が、これから社会に出る若者が最善な働き方を考える契機になることに期待を示した。牛島氏もこれに同意し、就活における大企業志向が滑稽なものになりつつあると指摘した。その理由としては、今や大企業への就職が必ずしも安定した長期の雇用を約束するものではなくなりつつあること、大企業自体の存続に確証が得られなくなりつつあることを挙げた。その上で牛島氏は、将来の生き方、働き方についての多様な考え方が尊重されるような企業風土の根付いた企業に入社することが望ましいと述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年6月9日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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細川珠生公式HP http://hosokawatamao.com/
細川珠生ブログ http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/
トップ画像/牛島信弁護士(右)と細川珠生氏 ©Japan In-depth編集部
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。