スポーツ  投稿日:2018/6/24

「解説者・大島優子」待望論 超入門サッカー観戦法 その2

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林信吾(作家・ジャーナリスト)

「林信吾の西方見聞録」

【まとめ】

・サッカー観戦の醍醐味は、実はディフェンスを見るところにある。

・コロンビア戦最大の功労者は長友佑都。

・日本は本気で優勝を目指すくらいの気概を持たなければならない。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40589でお読みください。】

 

サッカーを見るのならTV中継も悪くない、という話を、前回させていただいた。もうひとつ理由を付け加えさせていただくと、Jリーグの旗が揚がった当初、具体的には30年ほど前と比べて、中継の技術もかなり向上してきた、ということがある。高校野球の中継のように、試合と関わりない、選手の家族のエピソードなどを披露する、といったおバカなアナウンサーがほとんどいなくなった。

前回も述べた通り、野球という競技は投手と打者との駆け引きを軸に試合が進んで行くので、サッカー好きの目には、試合展開がいささか悠長に映る。悪く言えば、世間話をしながらのんびり見ることも可能なので、こんな中継も「あり」なのだろうが、サッカーやラグビーの中継でこれをやられてはたまらない。

一方、ワールドカップのたびに各局が特集番組を放送するが、こちらは最近では見る気もしなくなった。日本サッカーのことを中長期的に考えている人が、ほとんど登場しないからである。

そんな中、4年前のブラジル大会の際には、当時AKB48を卒業したばかりの大島優子に感心させられた。「ブラジル代表で好きな選手は?」と話を振られて、「みんな大好きネイマール……と言いたいところなんですけど、私はダヴィ・ルイス」と答えたのだ。スタジオの、サッカー好き芸能人たちからも、渋いねえ、と声がかかったが、ダヴィ・ルイスというのはディフェンダーである。

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▲写真 ダヴィ・ルイス選手 photo by @cfcunofficial(Chelsea Debs)

闘争心あふれる守備と果敢な攻撃参加が売り物の選手だが、ディフェンダーに注目するとは、もしかしてかなり年季の入ったサッカー通なのか?と驚かされたのだ。そこで検索してみたところ、彼女は歴代日本代表のユニフォームを全部コレクションするなど、AKBきってのサッカー好きとして、ファンの間では有名だったらしい。

ちなみに、この選手の名前はみんな「ダヴィド」と発音するのだが、ダヴィと愛称で呼ぶあたり、芸が細かい。ブラジルにロケに出かけて、現地の人に交じってサンバを踊ってみせたり、盛り上げるとはこういうことだ、というVTRも見せてくれた。

それに引き替え、たしか別の番組だったが、元日本代表の解説者はひどかった。「まず初戦に勝つこと。そうなれば1次リーグを突破できる確率は80パーセント以上」などと、したり顔でのたまわったのだ。思わず、「お前は中学サッカー部員か」などと画面に向かって毒づいてしまった(昭和生まれとしては〈ブラウン管に向かって〉と書けないところがつらい笑)。

話を戻して、サッカー観戦の醍醐味は、実はディフェンスを見るところにある。TV中継に限ったことではないが、1−0で勝ったような場合、唯一の得点を決めた選手にばかり注目が集まるが、本当に賞賛されるべきは、相手の攻撃を完封した守備陣なのだ。

具体的に、どういうことか。6月19日に行われた、ワールドカップ・ロシア大会の1次リーグ初戦で、日本は最大の難敵と思われていたコロンビアを下した案の定、翌日のスポーツ紙では、決勝点をあげた大迫勇也の名が1面の大見出しだった。しかし、私に言わせれば、あの試合の最大の功労者は長友佑都で、特に前半25分、相手に突破された決定的な場面から、からくもコーナーに逃れた守備が、日本の勝因だったとさえ思える。

相手のシュートコースに足を出し、ボールをピッチの外に蹴り出してしまうと、相手方にコーナーキックの権利が与えられるが、失点する確率はぐんと低くなる。これを「コーナーに逃れる」と言う。

またまた「案の定」だが、急に西野監督の采配を褒め称える声も高まった噴飯物、と言うしかない。

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▲写真 カルロス・サンチェス選手 photo by Liondartois

開始3分でコロンビアのカルロス・サンチェスが、香川真司の放ったシュートを腕で防ぎ、レッドカードで一発退場になった。PK(ペナルティ・キック)が与えられて香川の先制ゴールを呼ぶと同時に、11対10という有利な試合展開になるとか、相手選手の中で最大の脅威とされていたハメス・ロドリゲスがコンディション不良で先発を外れるとか、どうやったらそんな「采配」が可能なのか。

もちろん私は日本代表の勝利に、ただのラッキーだ、などとケチをつけるつもりはない。ただ、再三述べているように、サッカーという競技は、本当になにが起きるか分からず、だからこそ面白いのだと再確認できた試合ではあった。とは言え、日本が優勝できる可能性となると、これはパーセンテージで言えば限りなくゼロに近い。

そもそも、過去にワールドカップで優勝を飾った国はブラジル、ドイツ(旧西ドイツを含む)、イタリア、フランス、アルゼンチン、ウルグアイ、スペインの7カ国しかない。なにが起きるか分からないと言われつつ、限られた数の強豪国はやはり強いというのも、サッカーの面白いところだろう。

最多優勝はブラジルの5回で、この国こそ世界一のサッカー大国であることは、誰もが認めるところであるに違いない。しかし、そのブラジルも初参加(1930年ウルグアイ大会)の当時は、アルゼンチンやウルグアイと比べて、はるかに格下だと見なされていた。

ウルグアイは綿花などの貿易の関係で、中南米でも白人人口(ヨーロッパ系移民)の比率が高く、昔からサッカーが盛んだった。この話は、本シリーズの中であらためて触れる。

言わば、サッカーにおいてはウルグアイの後塵を拝していたブラジルだが、28年後、1958年スウェーデン大会において、当時17際だったペレを攻撃の軸とする代表チームが見事に初優勝を飾ったのである。実に6度目の正直であった(第2次世界大戦のため、1942年、46年の開催は見送られた)。

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▲写真 東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ(2011年) photo by flickr  MIXTRIBE

日本も、プロサッカーリーグの旗が揚がって30年、ワールドカップ本大会にも6回連続で出場を果たしている。そろそろ本気で、4年後、8年後の大会で優勝を目指すくらいの気概を持たないと、サッカー人気もじり貧になりかねない。

解説ひとつとっても、元代表選手よりアイドルの方がまともなことを言う、という有様では、まだまだ前途多難だ。

トップ画像/ケープタウンスタジアム photo by warrenski

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この記事を書いた人
林信吾作家・ジャーナリスト

1958年東京生まれ。神奈川大学中退。1983年より10年間、英国ロンドン在住。現地発行週刊日本語新聞の編集・発行に携わる。また『地球の歩き方・ロンドン編』の企画・執筆の中心となる。帰国後はフリーで活躍を続け、著書50冊以上。ヨーロッパ事情から政治・軍事・歴史・サッカーまで、引き出しの多さで知られる。少林寺拳法5段。

林信吾

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