現役都ファ議員直撃「公約の進捗」 東京都長期ビジョンを読み解く!その63
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・都民ファーストの会が公約377件の達成状況を公表。評価したい。
・「公約の進捗を開示、PDCAサイクル回すのは最低限の責任」と都議。
・「成果主義」「具体性」に課題。条例で何が変わるか示すこと大事。
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■公約の進行管理?
都民第一主義・・・・その言葉の意味は重い。どれだけその姿勢を貫けているのか、都民の目線で考えているのか、一部の利害関係者だけに目を向けた政策を推進していないか、責任を果たしているのかがこの1年、問われてきた。
先日、都民ファーストの会が公約377件の達成状況を公表した。これは公約の達成状況を公開したものである。その結果は以下のようになった。
「調査中」・・・党内で政策調査している(25件)
「質問」・・・議会において質問している(12件)
「予算要望」・・・行政へ予算要望している(19件)
「決定」・・・実施することが決定している(25件)
「一部実現」・・・条例以外の形で実施している(250件)
「実現」・・・目的の条例を制定している(46件)
これをどう評価するかは様々な議論があるだろう。補足説明すると、13の柱があって、それぞれ個別政策の達成度が見えるようになっている。以下の図のようになっている。
▲図
■公約に基づく政治の必要性
この結果を見て、正直驚いた。というか嬉しかった。なぜか。
第一に、「公開する」姿勢である。うやむやな、抽象的でどうとでもとれるような公約を掲げて、当選後は自分の支持者にしか目が向かない傾向が強かった古き政治家・政治集団とは一線を画している。公約の達成状況すら明らかにしない政治家がいかに多いことか。ここには誠実さが垣間見れる。新しい形というより、本来あるべき政治でもあるわけだが。
第二に、その等身大さ。正直、都知事に権限があり、議会の限界があるわけで、本来なら、自分たちにとって「よく見せる」インセンティブが働くもの。普通の政治家は46件しかできていないという状況だったら、できたことだけを「切り取り」「焦点をあて」「強調」する。しかし、できなかったことはできなかったと、告白し、自然な形で示している。
また、本来は、「調査中」を「情報収集」「ヒアリング」「論点整理・検討」と細かく分けて、よく見せるところだけどね。そうしないところは評価できる。
▲写真 木下ふみこ都議(撮影:筆者)
■木下議員に聞いてみた
より深く知りたくなり、本連載で初めて、旧知でもある木下ふみこ都議会議員(板橋区選出)にインタビューを敢行!
筆者:
この活動は、どういった問題意識だったのですか?
木下議員:
政治は言いっぱなし、選挙の期間だけ聞こえのいい言葉を言っている。その後どうなっているのか?いつの間にかうやむやになっている。きちんと開示してほしいと有権者としてそう思っていた。エビデンス・ベースで進捗管理をして、できないこともあるし、途中経過ではあるけど開示していく、PDCAのサイクルをまわすことは最低限の責任だと思った。
筆者:
自己評価は?
木下議員:
組織としてよいとか悪いとか自己評価をするには早計だと思う。しかし、委員会の異動もあるので、引き継ぎにもなるのでよかったかと。
筆者:
政策ごとにリンクされたり、都庁の該当ページにとんだりできないですけど・・・。また、細かく内容を知りたかったりするが、そこはできない?
木下議員:
紐づけるのは作業も必要で難しい。時間的な話でそこはできなかった。また、外に出してしまうと進捗が遅れるものもあるので、なかなか詳細を出せないものも中にはある。
▲写真 都議会で一般質問に立つ木下都議(2017年9月26日)出典:木下ふみこ都議Facebook
■課題もあるのでもう1歩!
最後に、特定の政党を支持しているわけでもないので、言っておくべきことは言っておこう。
第一に、成果主義の視点。「条例を作った」「これをした」というレベルで問題意識をとどめていいのかと思う。条例を作って「どのような変化があったの?」「だから何?(So What?)」とまで考えて欲しい。条例制定、〇提供、〇支援のレベルでは、都庁とレベルは変わらない。KPI(重要業績評価指標)を設定しているだけ都庁の方が上ともいえる。
第二に、記述の「具体性」である。以下の図で示しているように、「子ども食堂と連携し、居場所作りを拡充」「教師力、学校マネジメント力の強化」などの文言に具体性が欠けていること。抽象的な文言だと何がなんだかわからない。ピンとこない。
▲図
都民第一主義でもうちょっとがんばってほしい。こうしたことが当たり前になるのが政治。今後も期待したい。
トップ画像:第三回東京都議会定例会 知事所信表明(2018年9月19日) 出典 都民ファーストの会facebook
【訂正】2018年10月8日
本記事(初掲載日2018年10月5日)の本文中、【まとめ】3段目「条約で何が変わるか示すこと大事。」とあったのは「条例で何が変わるか示すこと大事。」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。
誤:「成果主義」「具体性」に課題。条約で何が変わるか示すこと大事。
正:「成果主義」「具体性」に課題。条例で何が変わるか示すこと大事。
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。