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.国際  投稿日:2018/11/20

偽「クーデター情報」で軍情報機関掌握図った文政権


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

 

【まとめ】

・文氏が指示した保守派壊滅の為の「クーデター謀議」捜査不発。

・「積弊清算」名目で保守派を追い込む検察の過剰な❛政権忖度❜捜査。

・デマ情報流布の先頭に立つ韓国テレビ局と日本ジャーナリスト。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読みください。】

 

韓国政府は文在寅大統領自らが先頭に立って北朝鮮擁護を続けている。そればかりか金正恩擁護に反対する韓国内保守派を壊滅するために、2017年3月の朴槿恵前大統領弾劾時に、韓国軍が朴槿恵親衛クーデター謀議を推進したとして大々的捜査を行ってきたが、それが全く事実無根であったことが明らかとなった。

 

■クーデター騒動、泰山鳴動鼠一匹

文在寅大統領は、今年4月に「クーデター文書」なるものの報告を受けて2カ月が経った海外歴訪中、突然「国の安全に関わる」として捜査チームを立ち上げるよう特別の指示を下した。

検察と軍検察から37人を集め7月に組織された合同捜査団は、104日かけて朴槿恵前大統領、金寛鎮(キム・クァンジン)前安保室長、ジョ・ヒョンチョン前機務司令官(機務司令部は韓国軍の情報部隊)など204人に対して取り調べを行った陸軍本部、大統領記録官にも家宅捜索を行った。しかし「内乱陰謀」や「クーデター未遂」に関する証拠や証言は全く見当たらなかった

結局11月7日になって合同捜査団は捜査を中断すると発表した。前機務司令官が海外での事情聴取に応じないため、真相把握が難しいというのがその表向きの理由だが、事実上の無嫌疑処分である。当初から根拠がないと見られていた捜査であったために当然の帰結であった。ただ虚偽公文書作成という全く別の取るに足らない容疑で機務司令部将校3人が拘束された。

しかしこの間に機務司令部は対北朝鮮宥和派に入れ替えられ、米国に気を使う国防長官も交代させた。文大統領の最低限の目的は達せられたということだ。

 

■大騒ぎした文書は単なる「図上計画」

機務司令部が作成した「戒厳令文書」は、簡単な「図上計画」であって「ろうそく勢力」壊滅の実行計画ではなかった。このいわゆる「戒厳文書」は、朴槿恵弾劾を主張する勢力はもちろん、弾劾に反対する勢力による暴動などにも備える非常計画と法的手続きを検討するものだった。だが実際にそのような最悪の事態は起こらず、文書は書類だけで終わった。

しかもこの文書の作成は国防部の会議で事前に検討され、韓国軍は文書を保管までしていた。そもそも公開の会議でクーデターを検討し、内乱陰謀に関する文書を廃棄せず、保管までするという馬鹿げた「クーデター計画」などこの世にある訳がなかったのだ。

検察が政権の意向を忖度しストーリーをつくって捜査した過剰捜査は今回だけではない。文在寅政権になって保守勢力壊滅のために多くの人を「積弊清算」の名目で追い込んでいる。だが、大部分が無罪で釈放されたり、職権乱用の疑いを適用されるにとどまっている。

 

■またもやデマ情報流布の先頭に立ったJTBC

しかしこのデマ情報をあたかも真実であるかのように流し続けた韓国のテレビ局がある。孫石熙(ソン・ソッキ)が社長兼アンカーを務める韓国JTBCテレビだ。JTBCは朴前大統領弾劾のキッカケを作ったタブレットPCのデータねつ造でも有名だが、今回も「クーデター計画事件」をねつ造し、「記者賞」まで手に入れた。

写真)孫石熙氏

出典)孫石熙氏facebook

 

日本では、朴槿恵大統領弾劾時、孫石熙を真実報道の記者と持ち上げ紹介したジャーナリストがいたが、なぜかしら彼もすぐさまこのデマ報道に飛びついた「朝鮮半島問題の第一人者」と喧伝されているこのジャーナリストは、朴槿恵大統領弾劾時にも彼女のフェイクニュースを先頭に立って垂れ流した。この人物が、「偽クーデター情報」を広めるために付けた記事の題名は、「やはり、あったか!朴槿恵政権下での戒厳令とクーデターの動き」である。

 韓国の従北左派が流す「デマ情報」に飛びつき、文在寅政権の世論操作に加担し、一方では「金日成の遺訓だから北朝鮮は核を放棄する」「北朝鮮は核実験場を爆破したのでこれから核の開発はできない」など主張するP氏であるが、なぜか日本の一部大手テレビ番組は、彼を「朝鮮半島問題の権威者」であるかのように接し、報道で使い続けている。

最近の韓国では、「大統領府(青瓦台)と大手TVがフェイクニュースの震源地」との認識が広まっているが、日本の大手テレビ局もそうしたレッテルを張られないように注意すべきだ。韓国からの情報には裏付けをしっかりと取るなど、くれぐれも慎重な対応が望まれる。



                                      

トップ写真)APEC首脳会議での文在寅大統領(2018年11月19日 シンガポール)

出典)韓国政府ホームページ


この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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