五輪チケットはBlack Box? 東京都長期ビジョンを読み解く!その70
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・五輪チケット外れた人多数。販売枚数、当選倍率等は一切不明。
・五輪理念上も疑義あり。まさにブラックボックス。
・オリ・パラの正当性高めるためにも情報公開を。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth https://japan-indepth.jp/?p=46483 のサイトでお読みください。】
6月20日、列島をショックが襲った。東京五輪・パラリンピックチケットの抽選結果が明らかになったからだ。
「1つも駄目だとは」
「当たんなかった」
「全滅した」
「やっぱりか・・・」
「まさか1つくらいは当たるかと・・・」
と多くの国民が悲嘆にくれた。本当に多くの人が外れたようだ。当選した人はほんと(筆者の周りには)少ない。筆者も当然応募したが、当たらなかった。
出典:TOKYO2020 チケット応募サイトより
「抽選申込に必要なTOKYO 2020 IDの登録数は750万を突破!」と公式Facebookには書いてあり、ある筋からの情報では「1%の当選確率」といううわさもある。これほどまで当たらないことから見て、それなりに公平性は高いと感じられることも確かであろう。
■教えてもらいたくて連絡するも・・・
みな、「しゃーない」「残念だな、次―」と思っている。しかし、納得いかない人もいる。私もそんな一人だ。
今回、
・売り出した枚数
・当選倍率
・具体的な抽選方法
など、全くもって不明である。
問題は2つ。第一に、「ブラックボックス」であること。ウェブでやっているのだから、データなどすぐ出るはずである。第二に、普通、どれくらいの枚数があります、くらいは教えてもらいたいと期待するものですよね・・・・。
そもそも設定価格にしたって、その根拠はわからない。どこにどう利益配分されているのか、見えないのだ(運営経費を賄うのだろうけど)。
なので、連絡・問い合わせをした。
結果は・・・
戦略広報局の方によりますと
「チケットに関連する情報は非公開とさせていただく」
「五輪終了後、どこかの段階で、報告する必要はあるかと思っている」
との回答をいただきました(担当の方、ありがとうございました!)。
確かに今の段階で無用な混乱を生むので、非公開という意思決定をしたことは理解できる。具体的な数字を出す余裕も時間もないだろう。スポーツマーケティングの専門家に聞くと「まさにマーケティング戦略。最初の当選率を意図的に低くして『飢餓感』を煽った発想」というのも理解はできる。
■ブラックボックス?を変えるのは誰?
しかし、東京五輪の理念を確認しよう。
さらに、持続可能性については・・・
出典:TOKYO 2020 大会組織委員会 持続可能性進捗状況報告書より
こうしたコンセプトに照らし合わせると、大変失礼な言い方になるが、「ブラックボックス」的なところは疑義を感じる。情報公開は、これらの理念を実現するための「前提」ではないかなと思うのだ。
「全員が自己ベスト、多様性と調和、未来への継承が3つのコンセプト」と言っているが、情報公開がなければ未来へ継承するものが何かもわからないし、継承しようがない。
確かに情報公開のコストはかかるだろう。忙しい担当者たちの時間を浪費してしまう。
しかし、「情報公開」は、「民主主義社会を維持するためのコスト」でもあるのだ。
そもそも税金を入れている。国民・都民1人当たりの金額はここでは言わない。建設関係の費用、建設された施設の今後の維持管理費などなど、とてつもない費用がかかる。多くの国民の税負担は薄く、スポンサー企業や関連の少数の人たちの恩恵は深いという感じだ。
▲写真:東京都庁(筆者撮影)
この「ブラックボックス」、どうにかならないのだろうか。担当者のちょっとの作業でオープンになるはずである。終了後に公開されるといっても、職員はそれぞれの出身母体企業に戻っているうちに、筆者の求める情報が公開されるかは疑問である。なので、個人的に、署名キャンペーンを開始してしまいました(笑)今のところ、賛同者は少ないですけどね。
五輪・パラリンピックの正当性を高めるため、そして、令和最初の国家的イベントを未来志向、民主主義を体現する意味で正当性をアップさせるチャンスだと思うのだが・・・。
森さん、武藤さん、小池さん、出番です!!!ご決断を。
トップ写真 出典:TOKYO 2020 ホームページより
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。