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.社会  投稿日:2019/11/3

五輪マラソン謝罪が先では? 東京都長期ビジョンを読み解く!その79


 西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

 

 

【まとめ】

・東京五輪のマラソン・競歩の札幌開催が「合意なき」決定。

・五輪立候補時に「東京の夏は温暖」表現。不実をまず謝るべき。

・小池知事はスポーツ意欲向上、五輪憲章理念の体現などで勝負を。

 

東京五輪は、札幌でマラソン・競歩の競技が開催されることになった。小池百合子都知事「合意なき決定」と発言したものの、受け入れる形となった。法的に訴えられる部分などを検討したとのことである。組織委の森喜朗会長が関係者の合意に至ったことを「大英断」と発言したのと比較すると、わが都民の代表の発言には何とも言えない気持ちになる。

 

変更の権限はIOCにあるので、当然の結果と言える。小池都知事にとっても、五輪の目玉イベントであるから、譲れないと思うのもわかる。ただ、一方でドーハでの状況よりも過酷な状況。温度と湿度がどれくらいになるのか?

 

・アスリートの健康リスク

・観客の健康リスク(めまい、吐き気、頭痛、意識消失などの熱中症)

でどれだけの被害が発生するのかを事前に計算するべきだと思うのだ。

 

・熱中症発生比率:「どれくらいの人が倒れてしまうのか」が想定できる

・健康への重症化リスク:「どれくらい深刻化するのか」が想定できる

 

を様々な条件下でシミュレーション、分析したのでしょうか?その結果をどれほど真剣に検討したのでしょうか?経済効果だけを考えるのが、行政の役割ではないのだ。

▲写真 小池百合子都知事(10月1日)

出典: 小池百合子ツイッター

 

■東京都は最初に何といった?

 

とはいえ、小池都知事の立場も十分わかるので、原点に戻ってみたい。応募した時にどのように東京は書いていたのかを確認できる「立候補ファイル」を見てみよう。

 

あれ、おかしいな。

 

「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」東京都の五輪「立候補ファイル」)と書いてある。

 

天候は晴れる日が多く→事実

温暖であるため→事実ですが、「温暖」の定義をどこに置くかで解釈は変わってきます。国語辞書で調べてみると「あたたかいさま。気候などがおだやかなさま」とあります。

 

「盛り過ぎ」、いやその反対の「言い過ぎ」であろう。立候補の際に書かれたことは真実ではなかったわけである。

 

■本来の筋は謝ることでは?

 

本来なら

 

すみません。立候補ファイルではああ書きましたが、当選したくてちょっと大きく書いちゃった。ゆるちて。そーりー。

 

というのが普通の大人の対応だと思います(文言はもっと丁重にはなりますが)。

 

確かに、小池都知事にこのことを言うのは酷かもしれない。なぜなら、自分がその時点では関係なかったからだ。しかし、関係なかったとしても、責任を取らされるのが政治家、行政の長というのはそういうものだ。

 

最後に、小池都知事が(一部の)都民の利害を代表して交渉に頑張ってくれているのは知っている。

 

しかし、「酷暑の五輪マラソンでバタバタ倒れる選手や観客が倒れてしまっては元も子もない。さらに、東京が「暑くて大変」という映像が世界中に流れ、東京の夏の酷暑が必要以上に伝わってしまうことが避けられて、逆によかったのではないか」と前にも書きましたが(『五輪マラソン「札幌」案の評価 東京都長期ビジョンを読み解く!その78』)、その通りになることは避けられた。

 

小池都知事に言ってあげます。

 

盛大な盛りあがりやイメージ一辺倒ではなく、スポーツ意欲の向上、五輪憲章の理念の体現、サスティナビリティの観点から勝負すればよいのではないでしょうか?頑張ってください!

 

また、関係者の方、色々大変でしょうが頑張ってください。

 

トップ写真 マラソン(イメージ)

出典: Pixabay; hbieser


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、一般社団法人日本経営協会講師・コンサルタント、未来学者。慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、組織改革、人事評価、キャリアカウンセリングなどのコンサルティングを行っている。2013年、社会問題解決のためのNPOを設立。行政評価、人工知能、公共性の専門家としてソーシャルイノベーションを進めている。

西村健

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