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.国際  投稿日:2019/11/25

民主派大勝利、香港区議会選挙


 安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

香港区議会選挙、投票率過去最高。

・民主派が議席の8割超を抑える圧勝。

・次の焦点は、次の行政長官選挙。

 

・歴史的勝利

24日に行われた香港の区議会選挙は、投票率が過去最高の71.2%となり、前回2015年の47.01%を24ポイントも上回った。

今回の区議会選挙は、1104人が立候補、18区議会452議席を争うもの。地元紙は25日、学生らの反政府デモを支持する民主派が380議席以上を獲得したと報じている。親中派は60議席程度にとどまった模様。

議席の8割超を民主派が抑えることになる。民主派はこれまで約3割の議席しか無かったことを考えると、驚異的な躍進だ。学生たちの反政府デモを力で制圧しようとした警察当局と、それを主導した林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に対する市民の反発が予想以上に強かったことが伺える。

・次は行政長官選挙

区議会は予算の承認や条例の制定など実質的な権限を持っておらず、行政への影響力は小さい。しかし、今回民意が明確に示されたことで、民主派は香港行政当局に大幅な譲歩を迫るだろう。もし、当局がこれまで通り、力で押さえつける対応を続けるなら、再び過激なデモが行われ、警察との衝突が続くことになる。

今後の焦点は、未曽有の混乱を招いた林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の去就だ。2022年には任期が切れ、選挙が行われる。任期前に林長官が更迭される可能性も囁かれている。

行政長官選挙は、産業界などの代表や議員からなる選挙委員(定数1200人)による投票で過半数を得た候補者が中国政府に任命される。立候補には150人以上の委員の推薦が必要。選挙委員は、産業界の代表や立法会議員、区議会議員、全国人民代表大会(全人代、中国の国会に相当)香港代表、中国人民政治協商会議(政協)香港地区委員などの限られた人々が選ぶ。

行政長官の権限は強く、①政府の指導②法令の公布と執行③政策決定と執行④財政案の策定⑤高官や裁判官の任免などがある。

これまでは「出来レース」とか「コップの中の選挙」などと揶揄されてきた行政長官選挙だが、今回、区議会議員に民主派が多数選出されたことが、どう影響してくるかが今後の焦点となる。

現行政長官の失策により、民主化運動が加速している香港。米下院は20日、中国の香港介入をけん制する「香港人権・民主主義法案」を可決。関税戦争の決着も見えない中、中国にとって悩ましい状況が続くことになる。

 

・民主化活動家の会見


写真)日本メディアの記者会見に臨む周庭氏
©️Japan In-depth編集部

 

選挙の結果を受け、25日午前、日本メディアの会見に臨んだ、「民主化の女神」こと、現役大学生の活動家、周庭(Agnes Chow Tin)氏は、

「日本では、学生が過激化すると民意が離れる、と報道されていたが、選挙の結果、それが間違いだと明らかになった。民意は示された。しかし、私たちの活動はまだスタートに立ったに過ぎない。明日、政府はまた権力を乱用して、弾圧などよくないことをするのか全く予測できない状態だ。」と述べ、政府の対応次第では、対立は続くと考えを示した。

また、行政長官選挙への影響については、「今回の結果は行政長官の選挙に影響を与えると思うが、今回の選挙も行政長官選挙も民主的な選挙ではなく、香港人の声を反映することができない。これからも民主的な選挙を求めることが大事だ。しかし、確かに今回の結果は、中国政府や香港政府、親中派にも大きなプレッシャーになると思う。」と述べた。

会見動画はこちら↓
https://youtu.be/qHy5m00Rl5E


写真)日本メディアの記者会見に臨む周庭氏
©️Japan In-depth編集部

 

トップ写真)日本メディアの記者会見に臨む周庭氏
©️Japan In-depth編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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