すすきの、夜だけじゃない!商業施設開業で昼夜問わず賑わう街に
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・ココノススキノなど複合商業施設の開業により、すすきのは昼も楽しめる街へと変貌。
・学生からビジネスパーソン、ファミリー層まで、幅広い層が利用できる点が地元の人に評価された。
・札幌駅から大通り、すすきの、中島公園まで南北のにぎわいの軸に市も期待を寄せる。
「すすきの」と言ったら知らない人はいないくらい有名な札幌の歓楽街。夜の街のイメージが強いが、そのすすきのが大きく変貌を遂げている。どう変わったのか?
きっかけは相次ぐ大規模複合商業施設の開業だ。
まず2023年7月に、「モユクサッポロ」がグランドオープンした。モユクサッポロが建てられた場所は、かつて札幌で親しまれていたが2011年に閉店した百貨店「サンデパート」の跡地。単なる商業施設にとどまらず、都市型水族館「AOAO SAPPORO」を擁するなど、地域に根ざした複合的なエンターテイメント空間として、札幌の街に新しい活気を与えた。
▲写真 モユクサッポロⒸJapan In-depth編集部
そして、2023年11月に開業したのが東急不動産が運営する複合型商業施設「ココノ ススキノ」だ。すすきのの入り口、ニッカウヰスキーのマスコットキャラクター「ヒゲのおじさん」の看板がかかったビルの対面にオープンした。
「ココノススキノ」ができた場所も、以前、札幌市民に親しまれていた複合商業施設「ラフィラ」の跡地だ。2020年5月に閉館していた。
映画館、ホテル、飲食店、ショップ、ゲームセンター、スーパーなどが集積している。中に入ってみると、平日の午後にもかかわらず、学生やビジネスパーソン、中高年層、子連れの女性、カップル、インバウンドの旅行者ら、あらゆる層の人が思い思いに時間を過ごしていた。
学生は宿題をやったり、メイクを楽しんだりしているし、ビジネスパーソンはなにやら資料の作成に勤しんでいる。中高年層はランチに舌鼓、アルコールをたしなむ人も。外国人旅行客はフードコートに陣取り、食事を楽しんでいた。地下のスーパーは子連れの女性で賑わっていた。なにせ、地下鉄南北線すすきの駅直結という便利さだ。ビジネスパーソンが帰宅途中にちょっと買い物、というニーズにも応えられる。
▲写真 ココノススキノのレストランフロア 明るく入りやすい店構えが特徴的。ⒸJapan In-depth編集部
▲写真 ココノススキノ 地下のスーパーⒸJapan In-depth編集部
こうした複合商業施設ができた効果は実際、数字に表れている。水族館や映画館などのオープンで、これまですすきのエリアに足を運んでいなかったファミリー層の来場が増えたことや、トレンド感のあるショップや飲食店の入居により若年層も増えた。
また、昼間から楽しめるエリアへと変貌したことで、午前中から夜まで平均的に人流が増えた。昼間は閑散としていて、夜になると一気に人が増える歓楽街エリアから、一日中楽しめるエリアとして変貌しつつある。
▲写真 昼間から学生の姿もちらほらⒸJapan In-depth編集部
ココノススキノ支配人の志村敦史氏によると、開業1年間で累積来場者数は当初想定していた800万人を遙かに超え、約1,100万人に達したという。初年度の数字としては想像以上だろう。その理由について聞いてみた。
「やはり地域密着をしっかり掲げて、幅広いターゲット層にいかに楽しんでもらうかを考えた結果だと思います。午前中はご高齢者様、昼過ぎになるとベビー連れの若いママさんたち、夕方になると学生さんや仕事終わりのオフィスワーカー、それに、すすきので働くナイトワーカーの方達も仕事前に立ち寄って買い物するなど、まんべんなくどの世代の方も想定以上に来ていただけているのが、来場客数が好調な要因なのかなと思っています」。
▲写真 ココノススキノ支配人志村敦史氏ⒸJapan In-depth編集部
来場者の内訳は、ざっくり8割が地元の人で、残り2割がインバウンドを含めた観光客だという。これまで低調だった中国からの観光客も復調しており、来年の春節には大いに期待していると志村氏は語る。
今後は、オールターゲット戦略は保ちつつ、それぞれの層がさらに満足度を高めて行きたい、と志村氏は話す。たとえば、一時託児所を設けて、ママさん達が一日遊べるプランなどを考えたいという。また、今後増えるインバウンド需要を見越して、多言語対応を早急に整える予定だという。
こうしたすすきのの変化に、札幌市も期待を寄せる。札幌市都心まちづくり伊関洋課長は、「都市まちづくり推進室ができて約20年にわたってやってきた市の都心のまちづくりを魅力的に感じてもらった結果、投資が増え、今まさにタワマンの建設や、様々な商業施設などの入れ替えが起きてきている」、として、「一定の成果が出ている」、とこれまでの市の取り組みを評価した。
▲写真 札幌市都心まちづくり課長伊関洋氏ⒸJapan In-depth編集部
すすきのの昼間人口が増えていることについては、「今まで札幌駅に人の流れが偏っていたのが、モユクサッポロやココノススキノなどの施設に加え、さらにあと2つ3つ新たな施設ができる予定があるので、それらが核となって、大通り地区が昔のようなにぎわいを取り戻していくタイミングなのかなと思っています」と分析した。
さらに市としては、すすきのの南、中島公園エリアにできる予定のMICE施設(ビジネスイベントが行われる会議場などからなる大型施設)にも期待を寄せる。中島公園地区には、米マリオット・インターナショナル系の「コートヤード・バイ・マリオット札幌」が7月に開業した。2025年秋には英インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)が「インターコンチネンタル札幌」をオープンする予定だ。
「これから、札幌駅、大通駅、すすきの、中島公園、と縦の軸が非常に重要になってきます。MICE施設ができてホテルに宿泊される方々も多く見込めますし、まさに南北の主軸に必要なピースが揃ってきました。さらに価値を高めるためにいろいろ手を入れていかなければいけないエリアだと思っています」と伊関氏は話した。
▲図 札幌市の都心の構造 札幌駅から中島公園までが「にぎわいの軸」出典:札幌市
ダイナミックに変わるすすきのエリア。不動産ブームも相まって、札幌の発展は今後も加速していきそうだ。
(了)
トップ写真:ココノススキノ ⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。