持続可能なスキーリゾートへ:ニセコ東急 グラン・ヒラフ「エースゴンドラ」などに100億円超投資
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・ニセコ東急グラン・ヒラフに新エースゴンドラ投入。レストランなど、今後100億円超投資。
・オーバーツーリズムへの対応を強化し、地域コミュニティと連携。
・持続可能な国際的マウンテンリゾートとしての地位を強化していく。
ニセコといえば、世界に冠たるスキーリゾート。JAPOW(日本のパウダースノー)のメッカとして、世界中のスノーアスリート達を魅了してやまない。
11月30日に今シーズン開業した「ニセコ東急 グラン・ヒラフ」が今シーズン、大幅にパワーアップした。2024年3月に引退した「エース第2センターフォーリフト」が最新技術を搭載したゴンドラに生まれ変わったのだ。その名も「ACE GONDLA(エースゴンドラ)」。従来の4人乗りから10人乗りにアップグレードし、運転速度は約1.5倍となり、輸送能力が大幅に向上した。
▲写真 エースゴンドラ開業セレモニー テープカットの様子ⒸJapan In-depth編集部
それだけではない。全キャビン内でWi-Fiが利用可能。シートはヒーター付きで、室内には最大10台のスキー板、最大3台のマウンテンバイクが積載可能となっている。またハンディキャップを持ったスキーヤーやスノーボーダーが板をつけたまま乗車できる。
▲写真 チェアスキーを履いたパラアスリート 床に敷かれているのは、滑りやすくするためのスノーマット(ピスラボ)ⒸJapan In-depth編集部
東急不動産株式会社とニセコ東急リゾート株式会社、東急リゾーツ&ステイ株式会社の3社が取り組む「Value up NISEKO 2030」プロジェクト第5弾だ。そのほか、2025-2026シーズンに新「エースゴンドラ」の山頂駅舎2階に新レストランをオープンし、また2026-2027シーズンにエース第3リフトを4人乗りフード付きリフトに更新する。
オールシーズン型のマウンテンリゾートの実現に向けて着々と設備を更新していく計画だ。
■ ニセコに100億円の新規投資
その投資額は約100億円に及ぶ。約半分が新型ゴンドラへの設備に充てられ、残りはゴンドラ山頂駅舎にできる新レストランに充てられる。これらの投資はすべてニセコ東急グランヒラフが、国際的マウンテンリゾートとして更なる利便性向上・輸送力向上・来場者の体験価値向上を目指して行なわれるものだ。
▲写真 エースゴンドラⒸJapan In-depth編集部
本格的スキーシーズン前だというのに、ゲレンデ周辺には、すでに多くの海外スキーヤーやスノーボーダーが滞在しており、11月30日のゲレンデ開業が待ちきれない様子だった。
▲写真 取材に来たオーストラリア人のジャーナリストⒸJapan In-depth編集部
こうしたなか、東急不動産株式会社取締役執行役員丹下慎也氏は、エースゴンドラ開業セレモニーで、「グランフラフ誕生から20年の節目に新ゴンドラを開業できたことを大変嬉しく思う」と述べた。そして、昨今話題となっているオーバーツーリズムに触れ、「生活弊害もやってくるという複雑な思いでいらっしゃるのではないかと推察している。こういった課題については皆様と連携しながらしっかり向き合っていきたい」と述べ、グランヒラフを持続可能な観光地にしていく考えを強調した。さらに、「ニセコがグローバルブランドとして輝き続けるように我々も地域の皆様と共に歩み、微力ながら地域コミュニティを守ることに尽力していきたい」と決意を語った。
▲写真 東急不動産株式会社 取締役執行役員 丹下慎也氏ⒸJapan In-depth編集部
また、東急不動産株式会社ウェルネス事業ユニットホテル・リゾート開発企画本部 グループリーダー 課長 野末貴史氏は、スキーリゾートが抱える夏場観光客が減る問題、いわゆる繁閑差について、「何かしらの解消のお手伝いを我々もしていきたい。やはり観光資源をうまく活用しながら提供するとともに、事業者さんや町と協力しながら、オールシーズンリゾートを一緒に作っていきたい」と述べた。
▲写真 東急不動産株式会社ウェルネス事業ユニットホテル・リゾート開発企画本部 グループリーダー 課長 野末貴史氏ⒸJapan In-depth編集部
具体的にはこの夏に行なわれたフェスティバル、「ニセコひらふグリーンパーク」などの取り組み例を上げ、今後も継続していきたいとした上で、「皆様を巻き込みながら大きな観光コンテンツになっていければよい」と述べた。
▲写真 ニセコヒラフグリーンパーク 2024 提供:東急不動産
最後にわすれてならないのは、東急不動産グループの脱炭素の取り組みだ。当スキー場を含む、東急スノーリゾート7スキー場の使用電力は、100%再生可能エネルギーに切り替えが完了している。
また、雪を使った温度差発電にも取り組んでいる。発電の際生まれる熱は融雪に利用でき、雪国の消雪コストを大幅に削減することができると期待されている。
国際スキーリゾートの先進モデルとしての地位を固めたいニセコ地区。様々な課題を解決していくそのプロセスを今後も報告する。
トップ写真:エースゴンドラⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。