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.社会  投稿日:2020/7/3

「公約に政策実績との論理性見られず」東京都長期ビジョンを読み解く!【特別編】


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・現都知事小池氏。多様なコロナ対策を打って出ている。

・デジタル技術を活用した先進的取り組みや政治理念の明確性が高評価。

・公約の論理性に欠け、言葉の使い方が曖昧。

特別編の第4弾、今回は現職である。経歴などの説明はもういいだろうし、実績もインファクトの「小池都政 公約検証」を見てもらおう。ここは、小池さんが提起してきた公約を早速見ていこう。

1 小池氏の政策(HP)

HP

選挙公報

に明らかになっている。

2 素晴らしい点

第一に、今回新型コロナウイルスの問題への対処法は多様である。

 ・サテライトオフィス・シェアオフィスの整備支援の強化

 ・感染拡大防止と社会経済活動が両立した「新しい日常」の確立

 業態転換への支援:テイクアウト・デリバリー・ネット通販・VRなど

 ・スタートアップによる「東京発」非対面・非接触(タッチレス)の新ビジネス支援:ロボット・Web会議システム等

 ・テレワーク・オンライン学習・オンライン診療・行政手続のオンライン化を加速

 ・4つのレス:ペーパーレス(ファックスレス)・はんこレス・キャッシュレス・タッチレス

など、短期的な対応や中長期的な対応、さらに新たな理念も提起している。特に、あまり注目されてないが、「4つのレスペーパーレス(ファックスレス)・はんこレス・キャッシュレス・タッチレス」は凄い。

▲写真 小池百合子氏 出典:東京都知事 小池百合子の活動レポートFacebook

第二に、先進性である。

 ・氷河期世代、現在の新卒・在学生世代の都庁採用強化など集中的支援

 ・カスタマー・ハラスメント対策の強化

 ・副業など多様な働き方の強化

 ・5G・IoT技術の開発支援

 ・都庁デジタル部門の強化(専門人材の採用、各局へのデジタル人材の配備強化、ユーザー目線でのシステム開発など)

 ・デジタル・ディバイドへの支援

 ・「サステナブル・リカバリー」(持続可能性にも配慮した経済復興):CO2排出減少などの環境配慮と経済活動が両立する社会・経済モデルへの移行

時代を先読みして、デジタル技術の活用を提案している。特にカスハラと呼ばれる顧客からのクレームは本当にみにくいが、そうした社会的な問題にもチャレンジしようとしているところであるのは注目である。

第三に、主義主張を明確にしだしたところ。

 ・権限・財源セットでの国から地方自治体への権限移譲による地方分権

 ・「東京発」規制緩和・岩盤規制突破モデルの構築・推進

地方分権や規制緩和など、これまでは何をやりたいのか、世論が必要なことをやるという政治家であったが、やっと政治理念や主張を明確にしてきた。

3 疑問点

疑問点は3点である。

(1)体言止めと曖昧さ

「〇〇の支援」、「〇〇の強化」、「〇〇の活用」、「〇〇の実施」、「〇〇対策」、、、、など何をしたいのか、意味わからないものが多い。曖昧で、抽象的、具体性に欠けるので何を示しているのかがイメージしずらい。この4年、筆者が指摘してきたように「どのように」がないので、後で実績を追及されても、どうにでも言い逃れられる。行政の各分野別計画にて、そのあたりは見ればいいという意見もあるが、あまりに曖昧である。

(2)「何をするか」先行、政策実績との論理性が見られない

行うこと、実施したいこと、「何をするか」が羅列されているだけ。この4年のできたこと、できなかったことを踏まえて、どのように新たな公約を構築したのか。論理性をそこには見いだせない。

▲写真 小池百合子氏 出典:小池百合子twitter@ecoyuri

(3)難しい用語・カタカナ語

 ・「東京型教育モデル」:対面・オンラインのベストミックス・インクルーシブな環境・フリースクールなど学びの選択肢の多様化・個別最適化

 ・免疫力強化:フレイル予防・EIM(「運動は薬」)の強化(特に在宅や少人数の場)

 ・性的マイノリティのアウティング対策

といった「カタカナ語」が頻発している。アウティングとは、本人の了解を得ずに、他の人に公にしていない性的指向や性同一性等の秘密を暴露する行動のことである。とっても大事なことをいっているのに残念である。筆者はそう思わないが、「カタカナ語でなんとなくけむに巻く」と批判をされても仕方ないだろう。

4 評価

評価結果とその理由は以下になる。(☆は1~3で評価)

問題意識   ☆☆

【理由】新型コロナ対策、デジタル化による都民サービス(QoS※)の向上などは明確に出ている。

政策としての基礎条件   ☆☆

【理由】行政経験の長さと反比例。

政策の具体性   ☆☆

【理由】体言止めの抽象な文言、旧態依然

政策の網羅性   ☆☆☆

【理由】現職ゆえ網羅はしている。

実行可能性   ☆☆

【理由】実行はできるだろうが、実行した「程度」「度合」が判断つかない

以上、感情を殺して文章を書きました。上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定個人を応援する目的で記載していませんので悪しからず。

トップ写真:小池百合子氏 出典:小池百合子twitter@ecoyuri

【訂正】2020年7月4日

本記事(初掲載日2020年7月3日)の本文中、「ファクトチェック・イニシアティブ」とあったのは「インファクト」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。

誤:経歴などの説明はもういいだろうし、実績もファクトチェック・イニシアティブの「小池都政 公約検証」を見てもらおう。

正:経歴などの説明はもういいだろうし、実績もインファクトの「小池都政 公約検証」を見てもらおう。


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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