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.社会  投稿日:2020/7/1

弱者の味方は都をどう変える?東京都長期ビジョンを読み解く!【特別編】


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・山本候補、俳優から政治活動家。参院当選後、「れいわ新選組」を立ち上げ。

・現場感をもち、理念が一貫性している。都政から国を変えると明言。

・コロナ災害の取り組みや、東京防災庁の設置には疑問が残る。

特別編の第3弾、今回は山本太郎候補を見ていきたいと思う。本連載でも2度にわたって書いた注目の人物でもある。日本テレビの「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」メロリンQで一躍注目を浴び、俳優として数々のドラマ・映画で個性派俳優として活躍。東日本大震災を受けて、反原発運動に参加。メディアから干された状態になり、政治活動家に。2013年の参院選で当選後、反原発活動や様々な政治の常識に疑問を投げかけ注目を浴びる。「れいわ新選組」を立ちあげ、現在は党の代表。

誤解をされながらも地道に活動して、現場や街頭活動で直接市民と対話。意見が違う人からの罵詈雑言に対しても、リスペクトをもって対応する気配りが、政治理念にもつながる「包摂性」を感じさせる。「諦めるな、生きよう」、というメッセージで自己責任論に疑問を提示する。

ロスジェネ世代の代表である山本候補の政策を見ていこう。

1 山本氏の政策(HP)

HP

選挙公報

に明らかになっている。

2 素晴らしい点

メッセージは「いま政治に足りないのは、あなたへの愛とカネ」と謳い、15兆円でコロナ損失を底上げすることが大きなインパクトを与えている。

第一に、現場感、現場での実践をもとにした知見が深いことである。

 ・フードロスをなくし、貧困などで十分な食料を得られない人に提供する「フードバンク」の活動を都として後押しするとともに、「地域で子どもを育てる」ための支援体制を構築するために、「みんなの居場所」をインフラとして整備

 ・単なる「子ども食堂」ではなく、高齢者、シングルマザーなど誰もが気軽に立ち寄れる「居場所」づくりを都が支援

 ・「みんなの居場所」は、空き家などを活用して整備(現在、都は子ども食堂の運営を支援する自治体に補助を行っているのでそれを拡充します)

 ・障がい者の関係する部署には必ず障がい者を責任者として配置

現場での課題を踏まえて「みんなの居場所」によって地域で孤立する子どもを救うという改善策を提示している。その問題意識は「貧困問題を「子ども」「高齢者」「女性」と分断しない」こと。リアリティ・現実を見てきたところはさすがの一言である。

▲写真 山本太郎候補 出典:東京都知事は 山本太郎 れいわ新選組公認@yamamototaro0

第二に、都政から国を変える、変えられることを明言していること。

 ・東京オリンピック・パラリンピック中止

 ・「横田空域」を取り戻す!:横田空域の完全返還を目指して、東京都と関係自治体がタッグを組んで国と米国に日米地位協定の改定を求めていくべきです。

 ・東京都のDV実態調査を行います:内閣府の調査では既婚者の3人に1人がDV被害に遭っているとされています。人口が集中する東京都での実態調査を行い、DV対策の足掛かりとします。

 ・「ヒートアイランド対策」として、東京都の区部の一人あたりの公園面積を増やし、区部の「みどり率」を向上させます。

といった国政の問題を東京から変えていく、という強い意志を示している。国政にどれだけインパクトを与えられるか、その点を理解しているのだろう。

第三に、理念の一貫性

 ・都の職員3000人増員 ロスジェネ・コロナ失業者に職を:誤った政治の犠牲となったロストジェネレーション世代を中心に、コロナ不況で職を失った人々に安定した職を。何度でも人生をやり直せる東京を。

弱者への配慮は一貫しており、それはロスジェネ(ロスト・ジェネレーション:1990年代後半から2000年代前半の「就職氷河期」に社会に出た世代)と呼ばれる世代も含まれる。共感と問題意識は深い。政治はやっと重い腰を上げ、中央省庁や市町村が始めているが、民間企業で採用を控える動きが目立つ。そうした時にこそ、都が立ち上がるべきというメッセージであろう。

▲写真 チラシポスティング大作戦! 出典:東京都知事は 山本太郎 れいわ新選組公認@yamamototaro0

3 疑問点

疑問点は2点。

(1)コロナ災害?

 ・まずは全都民に10万円を給付

 ・授業料1年間免除。(小学校・中学校・高校・大学・大学院・専門学校等)

 ・中小企業・個人事業主の前年度事業収入と今年度事業収入のマイナス分を補償。

こうした取り組みを進めるそうだ。災害は等しく被害を受けることであり、コロナ災害とはいえないと思う。コロナ公的災害10万円を寄付するというが、年金生活者、行政職員、別に被害を受けていないビジネスマンなどに配布する必要はあるのか?一律にはどうか?市町村にまた業務負担を?という疑問がどうしてもある。

市役所に来訪し、電話して「10万円はまだ?」というお小遣いをせびる大人たち、クレームを入れる様な人も中には多くいた。安易にお金をばらまくより、本当に困っている人へ貸付、炊き出しや食料配布、就労支援を徹底する方にすべきかと。

(2)得意領域以外の現場感を

 ・東京防災庁の設置。(防災に関する専門機関):全国の防災・災害支援の専門家の積極登用を行い、現実的な各地域の地区防災計画を作成、実行

 ・地域の命を助け合う仕組みをつくる「地域防災アドバイザー」を1000人単位で任用

防災業務は、普段はそれほど忙しくいはないし、高い人件費のかかる職員を配置することに対して財政・人事部門から疑義が呈されてしまいがちな部署である。防災部門の強化は賛成するが、「防災庁」まで必要なのか。行政組織は、組織を作った瞬間に、仕事を作り、増殖する。その点をあまり理解されていない。防災の専門家はそれほど多くないので、東京に集めてしまうと全国的なバランスを失いかねない。

また、アドバイザー。能力や知識の面で、公的な役割を持つ立場にはそれ相応の経験が必要であろう。アドバイザーを任用して何になるのでしょうか?、自治体をまわっていても〇〇アドバイザーという方に出会うが、テキトウなことを言ったり、最近では静岡県のほうで不正受給で問題になった人も中にいる(防災ではないが)。防災という生死を分ける可能性もある役割の人をどう育てるのだろうか?アドバイザーが役所の専門家と意見が対立したら?と想像してみたとは思えない。

これは一例だが、業務の現場を理解不足で、想像力に欠ける政策が結構見受けられる。

4 評価

評価結果とその理由は以下になる。(☆は1~3で評価)

問題意識   ☆☆☆

【理由】一貫した理念が全ての底にある。

政策としての基礎条件   ☆☆

【理由】どうやって?方法に欠ける

政策の具体性   ☆☆☆

【理由】特にしょうがい政策、環境政策は具体的である。

政策の網羅性   ☆

【理由】自分たちが大事にする一部政策に集中。

実行可能性   ☆☆

【理由】実行できるには様々な制約があるが、それを突破する方法が書いていない。

以上、感情を殺して文章を書きました。上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定個人を応援する目的で記載していませんので悪しからず。

トップ写真:山本太郎候補 出典:東京都知事は 山本太郎 れいわ新選組公認@yamamototaro0


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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