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.政治  投稿日:2020/6/29

小池さん、東京大改革1.0の成果は?


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・都議の予算枠廃止など、都政の見える化を一部達成できた。

・公開される資料はわかりにくい行政用語の羅列だったりする。

政治システムを根本から変えるような取り組みは見えなかった。

 

東京都知事選挙が始まった。小池さん、山本さん、小野さん、宇都宮さんらが立候補している。

ここで明らかにしておきたいのだが、小池都政は過去の都政のなかでも、取組みは評価ができることが多い。著作でも書いたが「以前の都政よりはまし」ではある。副知事にヤフー元社長の宮坂学さんを迎え、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を入れて、かなり本腰を入れている。

公共政策の専門家として山ほど言いたいことはあるものの、それぞれの公約の検証はインファクトの「小池都政 公約検証」を見ていただければと思う。

あげた成果についても小池さんは「これまでのお仕事」で分かりやすく示している。しかし、今回の選挙の本質はそこにはない。前回選挙で掲げたことを思い出してみよう。

 

■ ブラックボックスはなくなったのか?

▲画像 出典:小池ゆりこ オフィシャルサイト

都議会議員の予算枠などの廃止をした。これは大きな成果であろう。議員からの陳情を都知事が聞きはするものの、受け取ってくれない、頑張ってくれないなども聞く。利権構造の解体は政権交代がもたらす産物であり、圧勝を背景にそれなりのことを成し遂げたとは思う。政治的には凄い成果でもある。

▲画像 出典:都民ファーストの会の公約

都政改革本部の活動もそれなりの成果をもたらしたようには見える。

広報や発信の仕方などは大きく改善した。小池都知事の会見も、「カタカナ語頻発」と批判される発言も実質聞いてみたら普通に丁寧にしゃべっている。会見での話のうまさは抜群である。感動するほどである。

4年前にいったことは、自民党都連を「ブラックボックス」と批判し、都政を「ガラス張りにする」というものだった。この点はどうだったのか。

たしかに、予算書もわかりやすくはなっている。事務事業評価もそれなりにできてはいる。筆者が審議会に取材のため傍聴できるようにもなった。各種団体からのヒアリングの議事録まで残っている。

 

■ 彼女が言っている「改革」とは?

しかし、オープンにされた各種資料にはわかりにくい行政用語の羅列、読みにくい文章・レイアウトがそこには並んでいる。行政用語を「翻訳」できる能力がないと公表されたものを見ても理解できない。

例えば、筆者の育った町である西荻窪の商店街ではとんでもない不正があり、個人的に調べてみた。不正を見つけたのは都庁だったみたいで、それは素晴らしいことである(詳細は松本杉並区議のコラム参照

・「商店街に対する助成」関連の事業はどういった事業なのか?ここにどれだけのお金が流れているのか?

・補助を受ける際に約束した目標は達成できたのか?

・補助で行った事業でどういった変化が生まれたのか?費用対効果は?

・公共の支出として妥当なのか?それは一部の人の利権になっているだけではないか?自分で支出する部分ではないのか?都民から見た評価はどうか?

・商店街や杉並区にどう指導し、どう全体の制度を改革したの?

というニーズは満たされなかった。

先ほど述べた「各種団体からのヒアリング」を例に見てみよう。そこでは各種団体が「予算要望書」を都に渡して、話し合う儀式みたいなものである。議事録を見てみると面白い。

 

【東京都商店街振興組合連合会関係者の令和元年11月12日のヒアリングでの発言】

それから、いつも大変やっていただいています、これは47都道府県の中で東京都だけが やっていただいている商店街チャレンジ戦略支援事業。いろいろと若干問題も出てまいりましたけれども、コミュニティの担い手、平時における防災訓練、にぎわい創出として、文化の創造、伝承等々にも役に立っております。これは継続をして、東京2,500の商店街のうち、概ね2,000ぐらいが延べで活用されておりまして、ふるさと意識を大変高めて、子どもから年寄りに至るまで大変喜ばれている事業でございます。

本来なら、補助金の成果を評価する要素も会議に入れるべきではないだろうか。また、たんなる要望の場であるなら、各種団体の「予算要望書」をも公開してほしいものだ。

 

■ 本当の東京大改革とは?!

色々な面で「小池都政は過去の都政からみてまだまし」と筆者はみてきた。小池都知事の取組はそれなりに見るものはあるし、都庁の皆さんも、そのリーダーシップの下で頑張ってきたとは思う。

しかし、改革の本質が見えてこない。

改革とは現在の構造を変革する、つまり政治システムを根本から変えるものである。予算編成のやり方、事務事業評価などなど。結構な改善ではたくさん成果はあったが、大改革には程遠い。

都民が期待していた「大改革の成果はこれで、都政はこう変わった!」とまでは言えないのではないだろうか。変化を明言できるのなら、明言してもらいたい。前回対立した自民党や公明党が小池さんを支持する状況に、「それはないだろ」と思う都民の疑問を解決するためにも。

トップ写真:小池都知事 出典:東京都知事 小池百合子の活動レポートFacebook

 

【訂正】2020年7月8日

本記事(初掲載日2020年6月29日)の本文中、「ファクトチェック・イニシアティブ」とあったのは「インファクト」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。

誤:公共政策の専門家として山ほど言いたいことはあるものの、それぞれの公約の検証は「ファクトチェック・イニシアティブ」の「小池都政 公約検証」を見ていただければと思う。

正:公共政策の専門家として山ほど言いたいことはあるものの、それぞれの公約の検証は「インファクト」の「小池都政 公約検証」を見ていただければと思う。


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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