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.国際  投稿日:2020/11/10

米大統領選、不自然な高投票率


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

「澁谷司の東アジアリサーチ」

【まとめ】

・SNSで、数えた票数が登録有権者数を上回るとする謎の《表》拡散。

・ロイター、ウィスコンシン州では選挙当日の有権者登録を許可しているので問題なしと言及。

・APの投票数を用いると同州投票率は90%超。驚異的な投票率なり、不自然。

周知の如く、今年(2020年)11月3日、米国では大統領選挙が行われた。だが、開票結果をめぐり、トランプ大統領とバイデン前副大統領は自らの勝利を疑わず、事態は混迷を極めている。

バイデン候補は、過半数の選挙人を獲得したと主張し、大統領選での勝利を宣言した。確かに、選挙人獲得数ではトランプ大統領を上回り、次期大統領に当選したかに見える。他方、トランプ大統領は、バイデン候補側に選挙の不正があったとして、法廷で争う構えである。

さて、ロイター通信の2020年11月7日付「ファクト・チェック:(SNS上で出回っている投票数よりも登録有権者数が多い)《表》は、15州の古い有権者登録数を示す」(以下、「ファクト・チェック」)という記事は興味深い。

ロイターの指摘通り、SNS上では投票数よりも登録有権者数が多い謎の《表》が拡散している。

「ファクト・チェック」の冒頭部分は、以下、拙訳の通りである。

「多くのソーシャルメディアユーザーは、2020年の米大統領選挙で数えた票数が登録有権者の数を上回っているとして、これこそが選挙不正の証拠だという《表》を共有している。ただし、最新の登録有権者数は、《表》に記載されている数字よりも大きく、15州各州でカウントされた票数を超えることはない」という。

▲写真 facebook上でファクトチェックされている「表」 出典:facebook

ロイターは、最初のコロラド州から始まり、最後の中西部ウィスコンシン州まで、しっかりファクト・チェックを行っている。この点は大いに評価できよう。

ところが、激戦州であるウィスコンシン州に関して「ファクト・チェック」は、次のように述べている。

「ウィスコンシン州選挙管理委員会について言えば、投票者登録統計をウェブサイト で入手できる。 2020年11月1日の同州の登録有権者の総数は368万4726人だった。・・・(中略)・・・ただ、同州は選挙当日の有権者登録を許可しており、これは、選挙日の登録有権者数が368万4726人を超えることを意味するかもしれない」。

▲写真 バイデン氏 出典:Flickr; Gage Skidmore

ウィスコンシン州では、選挙2日前(事実上、選挙前日)まで登録有権者数368万4726人だった。だが、選挙当日、登録者がいて、かつ、その人達が投票している。だから、登録有権者数よりも、投票数が多くても特に問題はないと、ロイターは言及している。

日本時間11月9日午後4時30分現在、同州では(トランプ大統領とバイデン候補を含む)全候補者に対して合計328万9474票が投じられている(提供元: The Associated Press)。ただし、未だ99%の開票なので、実際には約332万2700が投票されたはずである。

この場合には、ウィスコンシン州の投票率は90.2%となるだろう。ところが、同州では当日登録者もいるので、分母(登録有権者数)が少し大きくなるかもしれない。そのため、投票率は若干、下がる可能性もある。それにしても、驚異的高投票率ではないか。 いくら「新型コロナ」が蔓延している米国とはいえ、かつての米大統領選挙で、登録有権者の投票率が9割に達した州があっただろうか。

実は、ロイターの「ファクト・チェック」では、バイデン候補が勝利した中西部ミネソタ州も89.4%と刮目すべき投票率だった(登録有権者数が358万8563人で、投票数は320万7098票)。

ここで、別の資料を見てみよう。『STATISA』の「2020114日現在の米国大統領選挙の投票率(州別)」(以下、「データ」)である。

「データ」では、全米で投票率第1位はそのミネソタ州で、79.2%である。それが、その後わずかの間に、89.4%と10ポイント以上も投票率が上昇した。いくら郵便投票が多いと言っても、何らかの作為によって投票率が急上昇した公算が大きいのではないか(組織票が入った疑いもある)。

一方、「データ」によれば、問題のウィスコンシン州の投票率は76.1%と全米第6位だった。ところが、その後まもなく、およそ90%の投票率となった。約14ポイントの激増である。明らかに不自然だろう。この数字に、大半の人は違和感を覚えるに違いない。大統領選に勝利したと主張するバイデン候補が、これを合理的に説明するのは至難の業ではないか。

以上のように今度の大統領選挙では、説明困難な不可解な現象が生じたのである。したがって、その検証作業が待たれるだろう。だが、大部分の米マスメディアは現時点でのバイデン候補優勢を盾に、同候補を次期大統領として既成事実化しようとしている。そのやり方には疑問を抱かざるを得ない。

トップ写真:アメリカ大統領選 出典:Rockbridge investment management




この記事を書いた人
澁谷司アジア太平洋交流学会会長

1953年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。元拓殖大学海外事情研究所教授。アジア太平洋交流学会会長。

澁谷司

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