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.国際  投稿日:2021/4/18

仏で大注目のコロナ情報サイト


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・「COVIDTRACKER」というサイト、閲覧数が毎日数百万。

・このサイトに注目した仏保健相も政府のデータ提供を申し出た。

・1民間の若者が作ったサイトが多くの仏国民の助けになっている。

 

それは、まるで夢のサクセスストーリーのようである。他の誰もがやっているように、ただ興味を持ったことをツイッターでつぶやいていた若者が、今やフランス全土で顔が知られる時の人となったのだ。

彼の名前はギョーム・ロジエ(Guillaume Rozier)。4月28日で誕生日を迎え25歳になるという若者だ。去年エンジニアの学校を卒業したばかりであるが、新型コロナウィルスに関する情報をグラフで確認できるサイトを作り上げた人物である。このロジエ氏が立ち上げた「COVIDTRACKER」というサイトには、現在、多くの人がアクセスし、毎日数百万というページが閲覧され続けている。

▲写真 COVIDTRACKERに掲載されている、市町村のコミュニティによる発生率(1週間あたり各地域10万人の住民あたりに検出された新型コロナ症例数) 出典:@GuillaumeRozier

フランスの病院関係者が新型コロナの感染状況を確認し、今後必要なベット数の予測をするために立ち寄ったり、政府からデータ提供を受けたコロナの予防接種予約ページを使うことで、フランス国民全員が複雑な接種できる会場探しを簡易化できるという救世主のようなサイトに成長したのだ。

▲写真 ギョーム・ロジエ氏 出典:COVIDTRACKER

■ はじまりは好奇心から

はじまりは当時ビッグデータを専門とするコンピュータ工学学校に所属していたロジエ氏の単なる好奇心からだった。2020年3月5日、フランスのロックダウン(外出制限)がだされる10日前、イタリアのロックダウンの4日前、ジョンズホプキンス大学からデータを取得し、フランスとイタリアの症例数からグラフを作成し比較してみたのだ。

すると、フランスがイタリアの10日遅れでまったく同じ軌跡を描いていることに気が付いた。そこで、ツイッターでそのことをつぶやいた。そのツイートに結構反応があったので、これは、きっとみんな知りたいだろうと思いつき、当時は自分の名前のドメイン(guillaumerozier.fr)上に、グラフ掲載サイトを作って公開した。まあ、5アクセスぐらいはくるだろうと思っていたが、その予想は外れた。なんとサイトには約2万人の訪問者が訪れたのだ。

そこで、いろいろ改善し、2番目、3番目、4番目のグラフを載せた。ついには自分の名前のドメインを使用するのはやめ、「COVIDTRACKER」という名前のドメインをとりデザインも手直ししたのだ。その後、毎日手に入る範囲のデータで、更新続けた。

■ オリヴィエ・ヴェラン保健相からの連絡

コツコツと更新を続けた結果、サイトのアクセスは大きく伸びていった。政府もコロナに関するデータを掲載するサイト「Geodes」を持っているが、ロジエ氏いわく、あのサイトは見にくいのだ。知りたい情報を瞬時に手にいれるのは難しい。ロジエ氏自身も知りたいデータに辿りつくまでに15分の時間を要したという。しかし、「COVIDTRACKER」は、視覚的にわかりやすいグラフがメインで構成されており、使い方もシンプルである。知りたい情報をいち早く、わかりやすく確認できるのである。

COVIDTRACKER」は、多くの人の口コミで有名になった。そしていくつかのテレビにも出演することにつながった。そんなある日、フランスのテレビBFMTVに出演した際に予防接種の接種状況のページの追加について語っていたところ、なんと、数日後にヴェラン保健相から電話がきた。保健相は、「COVIDTRACKER」をずっとフォローしていたことを語り、彼のサイトがいかに素晴らしく、非常に明確であると感じたことなどを伝えたという。そして、最終的に政府のデータの提供を申し出てくれたのだ。

▲写真 ベラン仏保健相(2021年1月12日) 出典:Aurelien Meunier/Getty Images

その後、提供されたデータと、医者や予防接種の予約がネット上でできるサイトDoctolib、KelDoc、Maiia、Ordoclicを結びつけ、自宅の近くで予防接種ができる場所と日時をリストとして表示し、そこから直接予約できるViteMaDose」というページを作り上げた。

これはかなり画期的だった。次々と予防接種ができるセンターが増加するが、電話予約はなかなかつながらず、予約サイトで探すも、どう探せばいいのかもわからないフランス国民が続出していた中、「ViteMaDose」にアクセスすれば近くの会場のリストが表示され、その上、会場を見つけたらすぐ予約できるサイトに飛べるおかげで、迅速に予約できるようになったのである。

ロジエ氏は、すでに存在している点と点を線で結び、ユーザビリティの高いサイトで多くのフランス国民を助けることを実現したのだ。また、このサイトを使用し、今後のベッド数や人員のニーズを予測するために使用している病院もある。

政府では成し遂げられなかった明確なコロナに関する情報の伝達サイトであり予防接種の予約サイトを、民間の一人の若者がただの好奇心から作り上げてしまったのである。しかも、かなりのスピードでの実現だ。現在は、複数のボランティアと一緒に「COVIDTRACKER」を運営しているそうだ。

一個人の力は非力かもしれないが、それでも誰かに貢献出来る方法は必ずある。そんなことを気づかせてくれる若者の活躍となった。

 

-参考リンク-

CovidTracker:Covidを追跡する男ギョーム・ロジエ

インタビュー-Covid-19の数字を毎日分析するサイトCovidTrackerの創設者ギョーム・ロジエとは何者?

ギョーム・ロジエ氏の公式TwitterLinkedIn

トップ写真:フランスで最初のドライブインワクチン接種会場。フランスは、4月8日、1,000万回の初回接種目標に到達。(サン=ジャン=ド=ヴェダで)2021年4月13日 出典:Patrick Aventurier/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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