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.政治  投稿日:2021/9/28

「核燃サイクル止めるのは非現実的」自民党原発リプレース議連稲田朋美会長


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth 編集部(石田桃子)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・自民党「原子力リプレース推進議員連盟」の稲田朋美会長に話を聞いた。

・エネ基素案にリプレースという言葉が入らなかった事は党の意見を無視している。

・新内閣にも議連として改めて提言を持って行くつもり。

 

自民党総裁選を29日に控え、自民党の有志議員による「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟」会長の稲田朋美衆議院議員に話を聞いた。Japan In-depth編集部は5月18日にもインタビューを行っている。(参考「原発リプレースをエネルギー基本計画に」稲田朋美衆議院議員

同議連は9月15日、総裁選の候補者に対し、原発のリプレース実現などを求める決議をまとめ、「エネルギー基本計画」の素案の中の「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除し、原発を最大限活用する内容への修正を求めたほか、「核燃料サイクル」の堅持ももとめた。その上で、候補者に以下の5項目の質問を送り、見解を求めた。

1 最新型原子炉によるリプレース実現

2 次期エネ基素案一旦撤回、衆院選後に修正

3 核燃料サイクルを堅持

4 避難道整備など原子力立地地域に寄り沿う諸政策の強力な推進

5 適正手続き(デュープロセス)等を踏まえた、原子力規制委員会の規制行政改善

回答は以下の通り。

▲図 「脱炭素社会実現と国力維持・向上のために最新原子力リプレース推進を求める」決議、5項目への回答 提供:稲田朋美事務所

回答を見ると全ての質問に◎で回答しているのは高市候補のみ、エネ基素案撤回で〇なのは野田候補、岸田候補は△だった。

安倍: 総裁選が始まってから、河野さんはいきなりの原発ゼロではなく、段階的にゼロに近づけていく、と発言しており、現実的な解を示しているように見受けられます。ただ本質的にはやはり原発ゼロ推進なのかな、とも思います。

稲田: そうですね。最初、河野さん、(議連の質問に)答えてこなかったんですよ。でも最後に手違いでと言って答えてきたんですけど、結局はリプレースとか核燃料サイクルについては回答していないです。

安倍: エネ基の素案に、リプレースと新増設の文言はきれいに消えているじゃないですか。これについてはどうご覧になっているんですか。

稲田: やはり閣僚の中に強く反対される方がいらっしゃったんではないかというふうに思います。エネルギー基本計画の中にリプレースも書くというのが、私たちの議連の唯一無二の目的だったので、入らなかったことが非常に残念でした。結局あの時官邸に持っていけず、経産大臣に持っていったんです。

安倍: 党が議連を立ち上げて提言しているものを、政府が全く聞かないというのは驚きました。

稲田: そうですよね。うちの議連ではかなり強く、党の意見を無視するのはありえないとかすごく言いました。結局、素案には「原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく」と書きましたよね。そういう言葉でリプレースも含みを持たしたということではあるんですけれども、リプレースしないと持続可能になりません。エネ庁は、それを暗に書いているし、改定も何年後と言うことではなくてやると言うようなこともおっしゃっていました。そういう読み方もできるのかもしれませんが、やっぱりリプレースという言葉が入らなかった事は、非常に党の意見を無視しているとしか思えなかったんですよね

安倍: 菅政権が2030年46% CO2削減、2050年カーボンニュートラルと謳っているのに、原発を無視するのは矛盾しているような気がします。

稲田: そうですよね。矛盾していると思います

安倍: 現実問題、46%削減は、リプレース・新増設なくして実現可能だとお思いになりますか

稲田: 実現可能だと思わないんですよね。このままリプレースしなければ(原発が)ゼロになる日が来るわけですから、それは無理だし、2030年の46%減のためには、今からいろんなことやらないと難しいので、無理だと思います。やはり抵抗があったのでああいう形の文言になったと思うんですけれども。今回、高市さんはそれを書き換えるとおっしゃっていますし、野田さんも必要な部分は修正すると言っています。岸田さんは、パブコメを検討しつつ閣議決定を目指すということで、修正についてはちょっとわからない感じです。河野さんはゼロ回答でした。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部(2021年5月18日撮影)

安倍: エネ基素案の一旦撤回についての質問もあります。

稲田: 次期エネルギー基本計画を一旦廃案にして直してくださいと言う質問については、高市さんと野田さんは〇です。河野さんは答えないし、岸田さんは△ですね。

安倍: 核燃サイクルは?

稲田: 核燃料サイクルについては、河野さん以外は「必要だ」となっています。使用済み核燃料をどうするかは非常に大きな課題で、それをもう一回再処理の原料として位置づけて、その上で残ってしまった廃棄物をどうするかなんですが、今やめてしまったら核燃料をもとに戻さなくてはいけなくなるので、そうするともういっぱいいっぱいになっちゃって稼働できないと言うことになりますから、今の原発すら難しくなってしまいます。ですから核燃料サイクルをやめると言うのは非常に非現実的に思えます。

安倍: エネルギーの問題は国家の安全保障に関わると思うので、もう少し議論が深まると良いと思います。

稲田: そうですね。(電気は)あって当たり前だと思っているけれども、停電したりとか産業を維持していくという意味においても、非常に大きな、国益に関する事柄であるにもかかわらず、あまり非現実的な話をしていてもダメなんじゃないかなと思いますね。

安倍: 新内閣に対してもリプレース議連はまた提言するわけですね。

稲田: そうですね。エネルギー基本計画の書き換えとを野田さんと高市さんはやると言ってくれていますが、岸田さんと河野さんだと、どういうふうにやっていくか考えたいと思っています。岸田さんははっきりやらないとは言っていないのでしっかり提言していきたいと思います。

(インタビューは2021年9月28日実施)

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部(2021年5月18日撮影)




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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