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.国際  投稿日:2021/11/24

独・仏、コロナ感染「第5波」に


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・欧州は感染「第5波」に入り新規感染者が急増、しかし独仏で差がある。

・仏は「衛生パス開始時期が早く」、「ワクチン接種のピークが他国より遅かった」。

・現時点では国により感染度合いに差がでているが、持続するかは今後の対策次第。

 

欧州では、新型コロナウイルス感染「第5波」に入り、新規感染者が指数関数的に急増している。欧州連合(EU)で初めてワクチン未接種者を対象に外出制限を実施するオーストリアをはじめ、規制強化の動きも各国で相次ぎ、感染が拡大しやすくなるとされる冬を前に警戒態勢を強めているところだ。

とくに、ここに来てドイツが過去最多の新規感染者数を出したことに多くの人が驚いた。一方、フランスでも感染が広がっているものの、現時点ではドイツほどではない。いったいこの差はどこから来ているのだろうか?

■ ドイツでは、新規感染者数が過去最大を記録

安定していると思われていたドイツであるが、18日には新規感染者が6万5000人超と過去最多を更新した。現在、集中治療を必要とする患者が急増し、医療が切迫している状況なのだ。それに伴い、新型コロナウイルスワクチンを接種していない人への行動規制を強化する考えがしめされ、特に感染が広がっているバイエルン州とザクセン州では、すべてのクリスマスを中止し、生活や社会活動を大幅に制限されることになった。

■ フランスも第5波、先週よりも81%の増加

フランスも、新規感染者数は約2万人になり急激の増加している。それでも、現時点ではドイツに比べれば3分の1ではあるものの、7日平均でみれば一日あたりの感染者数は1週間でほぼ2倍だ。発生率は先週のはじめには住民10万人あたり100人だったのが現在は164人となっており、土曜日だけの新規感染者数を比較しても、先週は9458人であったのが今週は17153人と、81%の大幅な増加が見られるのだ。確実にフランスでも第5波が始まっていることは間違いない。

▲写真 パリワイン収穫祭に集まる市民らで混雑するモンマルトル差クレクール寺院前(フランス・パリ、2021年10月9日) 出典:Photo by Kiran Ridley/Getty Images

しかし、21日に日曜日にガブリエル・アタル報道官によれば、フランスは他のヨーロッパの国のように、ワクチン未接種者に対する外出制限が行われる可能性はないとしている。もちろん、住民10万人あたりの発生率が200人を超えるなどすれば、そのレベルに合わせてスキー場での衛生パスチェックが適用になるなどの規制は増えるが、現時点ではフランスでは衛生パスが有効に働き、確実に効果をあげているため拡大が他の国よりもゆっくりしたペースですすんでいるというのだ。しかも、ワクチン接種を受けている割合も高く、新規感染者の急増が病院の患者の急増にはつながっておらず、重症化を抑えることにワクチンの効果がでているという。

でわ、なぜ、ドイツとフランスで、これだけの差がでることになったのだろうか。この件に関しては、フランス政府の見解としては、ドイツとフランスの今までの経緯に2点の違いがあるとしている。

■ フランスとドイツの経緯の違い

現在、フランスとドイツの感染拡大状況に違いがでた理由として考えられているのは、下記の2点だ。

1.衛生パス(ドイツでは3Gと呼ばれている)の開始時期の違い

現在、ヨーロッパ各国で、ワクチン接種済み、あるいはPCR検査陰性証明等に基づく「衛生パス(ドイツでは3G)」が適用されている。このパスでカフェや映画館などの入店できるかをチェックしているが、フランス政府の見解では、この衛生パスの開始時期がフランスは他国より早いのだ。

フランスの衛生パスの適応は6月9日からであり、バカンスで各地に人が多く集まる時期の前にすでに開始していた。一方、ドイツは、地域によっても対応に大きく差があり、8月はじめになってからようやく8月23日目標で全国化されることになった流れがある。8月後半が意味するものは、多くの人がバカンスを過ごした後であったということだ。フランス政府は、感染が拡大している他のヨーロッパの国々も同じように衛生パスの適応が遅かったからだと考えている。

衛生パスの適用の遅さが影響しているのかはわからないが、ドイツのコロナによる死亡数はバカンス終わりごろから増加し続けている。これはフランスとは対照的だ。フランスも一時は多少あがったものの、その後、新規感染者数と共に急激に下降した。しかし、ドイツは、多少下がった時期もあったがそこまで新規感染者数が大きく減少することなく、死亡数も伸び続け、11月に入り指数関数的に一気に感染爆発したのだ。

2.ワクチン接種のピーク時期の違い

また、フランスのワクチン接種のピークが他の国に比べて遅かったことも違いの一つである。ドイツやオーストリアなどでは、ワクチン接種のピークが5月と6月辺りだったのに対し、フランスでは7月、8月になっている。このため、フランスでは、ワクチンの高い効果が現時点でもまだ十分に持続している人が多いと推測されているのだ。

しかし、もちろん、このワクチンによる効果も今後落ちてくると予測されるため、現在、フランスでは3回目の接種を推進している。65歳以上については、3回目の接種を受けていない場合は、12月15日から衛生パスが有効にならないとした。現時点では65歳以上の44%のみしか3回目のワクチン接種が終わっておらず、さらなる接種が期待されている。また、12月からは3回目接種対象者を50歳~65歳にも拡大し、その後、50歳未満にも拡大していく予定となっている。

■ 現時点では差がでているが、持続するかは今後の対策次第

このように、現時点では、衛生パスの適用時期やワクチン接種のピーク時期の差によって、感染拡大に差がでているのであろうとされているが、いずれにせよ、ヨーロッパでは確実に第5波が来ていることにはかわりなく、今後、状況が一変する可能性もある。各国、その状況に合わせて確実な対策ができるかが重要となってくることは間違いないだろう。

トップ写真:クリスマスムードを楽しむ市民(2021年11月22日、ドイツのベルリン) 出典:Photo by Sean Gallup/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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