伊、ランペドゥーザ島 人口1.5倍超の移民上陸
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・ランペドゥーザ島に地元人口の1.5倍をこえる1万人の移民が上陸。
・フランス国境に直接やってくる移住希望者の数も増加。
・ドイツはイタリアからの難民を今後受け入れない意向を発表
こんな光景は見たことがない。9月11日月曜日から9月13日水曜日までの間に、アフリカ海岸から150キロ離れたイタリアの人口6000人ちょっとの小さな島、ランペドゥーザ島に地元人口の1.5倍をこえる1万人のヨーロッパに移住を希望する人々が上陸した。2016年の移民危機以来、前代未聞の状況を受けイタリア当局は非常事態を宣言。現地の赤十字は対応に追われている。
また、この事態に対応するために欧州委員長は日曜日、イタリアのジョルジア・メローニ首相を伴ってランペドゥーサ島を訪問する予定となっており、フランスもジェラルド・ダルマナン内務大臣がこの数日のうちの赴くことになっている。一方、ドイツは、イタリアからの難民を今後受け入れない意向を発表した。
■ もともと多くのヨーロッパ移住希望者がたどり着く島、ランペドゥーザ島
チュニジアの海岸から150km以内に位置するランペドゥーサ島は、ヨーロッパを目指して地中海を渡る移民が最初に立ち寄る場所の1つであるが、海路でヨーロッパに到着する人の大部分が集中している島でもある。国連難民高等弁務官事務所のデータによると、2023年1月1日から9月10日までにヨーロッパの海岸に下船した16万人のうち約9万7千人がこの島からヨーロッパに入った。
しかしながら、これほど一度に大量の人が押し寄せたのは、2016年以来だ。9月12日火曜日以来、わずか24時間で約120隻のボートがたどり着いた。水曜日でその数は199隻になり、ついには到着した人数は数日間で1万人を超えたのだ。ISPIシンクタンクのマッテオ・ヴィラ氏によると、48時間以内の到着者数は記録的な人数だという。
今年に入ってから、すでに去年の同時期の2倍の人数が到着していた。国の経済危機のため、人々はリビアを離れ、現在はチュニジアのスファックスを離れヨーロッパに向かっている。その上、9月に入り季節がよくなったのでその人数が劇的に増加したのだ。
欧州国境沿岸警備局フロンテックスは、「犯罪グループ間の熾烈な競争を背景に、密航業者がリビアとチュニジアから出国する移民の価格を引き下げるなどしていて、このルートでやってくる人の流れは、今後数カ月続く可能性がある」と予測している。
■ ヨーロッパ移住希望者のその後
このように大量の人々がたどり着いた様子を見て、ヨーロッパの人々は恐怖を感じている人も多い。現地で対応する赤十字もほぼ飽和状態だ。
ランペドゥーサ島の受付センターは、公式には400人の収容能力しかない。そのため、到着した人々は毛布にくるまって外で寝ざえるおえない状況だが、大多数は24時間〜48時間で他の場所に移される。ランペドゥーサ島から直接強制送還というのはなく、基本的には、イタリア全土に点在する受付センターに船か飛行機で運ばれるのだ。
約3000人は9月15日金曜日の夕方までにイタリアの他のセンターに移送され、土曜日に移送は続いた。そこで彼らは亡命申請書を提出し、申請が認められればヨーロッパにとどまることが許される。とは言っても認められるのはほんの一部であり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、2023年1月から6月までの最初の亡命申請で却下された割合はイタリアでは56%だったという。
このように、一度移住を希望する人々を対応する施設に受け入れた後は、亡命申請を受け付け、判断を下す必要があるが、現在、イタリアの受け入れシステムはその能力の限界をはるかに超えた負担にさらされており、イタリア政府のジョルジア・メローニ首相は、欧州連合(EU)に支援を要請した。
■ 欧州の緊張:フランスは団結、ドイツは撤退
対応資金として、EUはイタリアに対してすでに1400万ユーロの支援を約束し、EU委員長は日曜日、イタリアのジョルジア・メローニ首相を伴ってランペドゥーサ島を訪問するとしている。
ヨーロッパを目指す人々が一気に上陸した状況を目の当たりにし、各国で動揺が走った。国民が恐怖に思ったことも間違いない。
フランスでは、極右から移民を歓迎しないよう圧力がかけられたが、エマニュエル・マクロン大統領は、フランスは「厳格かつ人道的」に行動すると反論。「これらの人々が亡命や保護の対象となる資格があるのか、それとも帰国を予定している人々なのかを確認する必要がある」と述べた。そして「私たちはそれを非常に効果的にやっていかなければいけない」とし、イタリアに連帯を示し、欧州連合全体の責任を求めた。その上で、マクロン大統領は、土曜日に電話でメローニ首相と会談し、ジェラルド・ダルマナン内務大臣は、数日以内にイタリアに赴くこととなっている。
ちなみに、移住希望者の到着が増加したのはランペドゥーサ島だけではない。フランス国境に直接やってくる移住希望者の数も増加しており、フランスの国境も飽和状態になりつつある。ダルマナン内務大臣は「流入が100%増加」していると述べ、対応するための要員の増強を約束した。
一方、ドイツはイタリアからの難民を今後受け入れない意向を発表し、この問題に関する欧州の合意を尊重していないとしてイタリアを非難するにとどまった。
参照リンク
https://x.com/visegrad24/status/1702808979053719561?s=20
Avant-propos(欧州国境沿岸警備局)
Que deviennent les migrants après leur arrivée à Lampedusa ? – Libération:ランペドゥーザに到着した移民はどうなるのか?- リベラシオン
Lampedusa : une pression migratoire « insoutenable » selon Giorgia Meloni, Ursula von der Leyen se rendra sur place : ランペドゥーザ島:ジョルジア・メローニが語る「耐え難い」移民圧力、ウルスラ・フォン・デア・ライエンが島を訪問へ
TOUT COMPRENDRE – Italie: que se passe-t-il à Lampedusa, qui fait face à un afflux massif de migrants? : EVERYTHING – イタリア:移民の大量流入に直面しているランペドゥーザ島で何が起こっているのか?
Lampedusa : ce que disent les derniers chiffres sur l’afflux de migrants en Italie – L’Express : ランペドゥーザ島:イタリアへの移民流入に関する最新の数字 – L’Express
Lampedusa: pourquoi 7000 migrants ont-ils débarqué en 24 heures sur l’île italienne? : ランペドゥーザ島:なぜ24時間で7000人の移民がイタリアの島に上陸したのか?
トップ写真:移民運営施設からシチリアのポルト・エンペドクレに移送されるため、沿岸警備隊に乗船するのを待つ移民たち。2022年8月3日、イタリアのランペドゥーサ島
出典:Photo by Antonio Masiello/Getty Images
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。