無料会員募集中
.政治  投稿日:2021/12/11

「令和版所得倍増の旗、降ろすべきではない」国民民主党代表玉木雄一郎代表」


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth 編集部(黒沼瑠子)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・衆院選では経済政策に対して賛同する声が多く手ごたえあったと実感。

・政策で一致するところは連携しつつも他政党との合流については慎重に。

・与党には大胆な経済政策と日本がその役割を果たせるような外交を期待する。

 

国民民主党は先の衆院選で、選挙前8議席だったのが11議席となり、3議席増やして日本維新の会と同じく躍進した。代表の玉木雄一郎衆議院議員に話を聞いた。

安倍: 今回の衆院選での議席増の背景をどう分析しているか?

玉木: 選挙の前は、正直消滅するんじゃないのかと言われていたし、相当な危機感をもってこの選挙に臨んだが、奇をてらうことなく、改革中道政党として政策で勝負しようと、「対決より解決」とずっと訴えてきた。今、コロナ禍もあり、日本の長期低迷もあって、どういう解決策を見出していけるのか、正面から国民に問うてみようというのが、今回選挙に臨む我々の基本的な立ち位置だった。結果、議席が増えたことは、正直有権者の皆さんに助けられたなと思った。メディアの支持率は低い中で今回、非常に手ごたえを感じたのは、我々の経済政策に対して「国民民主党いいよね」と言って投票してくれたことだ。現に、「選挙区で入れたいのに候補者がいないじゃないか、なので仕方なく比例だけは国民民主党と書くよ」という声をたくさんいただいた。潜在的に我々に対する期待というのは非常に大きいものがあったのではないか。やはり我々はきちんと政策で勝負していくということが大事だし、その事に対して一定の手応えを得た、というのが今回の選挙の総括だ。

ただ一方で、もっと候補者を立てていれば、そういった有権者の皆さんの思いに応えることができたということで、そこは非常に反省なので、参議院選挙に向け出来るだけ多くの候補者を両立していくという基本方針で臨みたい。

安倍: 思ったほど候補者が立てられなかったという理由は?

玉木: かつての野党連携、野党共闘の枠組みの中で、国会対策も、候補者調整も一緒にやってきた。他党にある種遠慮して、むやみやたらに(候補者を)立てるわけにはいかなかった。もちろん小選挙区制度なので、ある程度1対1の(対決)構造に持ち込む戦術的必要性は理解しているが、ベースには基本政策の一致がなくてはならない。そこを曖昧にしながら、とにかく選挙に有利だから(野党候補を)一本化しようという風にやったことが、有権者からはかなり厳しめに見られたのではないか。選挙の前、最終的に我々は、市民連合さんが中心となってまとめた政策協定には参加しなかった。安全保障とかエネルギー政策とか国家の基本に関わるところで一致できないので、政権選択選挙である衆議院選挙に政策を曖昧にして、ただごまかしながら選挙区調整のためにサインすることはできなかった。我々は選挙での調整よりも政策を貫こうということが結果として勝利に繋がったのかなと思っている。自分もやってみて感じたのは、どこかに遠慮して奥歯にもののはさまったような言い方をすると、有権者に伝わらない(ということ)。自分自身がこうだと思って腹に落ちたものしか人には伝わらないなと思った。今回も、みんなが一致団結して強い気持ちで選挙に臨めたことが結果、現職6名全員の選挙区での当選、全員8時半までに当確が出た。嬉しいことに比例区5つのブロックで議席を獲得することができて、4人の新人議員を生み出すことができたということは、非常に厳しい中で臨んだ選挙としては、一定の成果を残すことができたのかなと思う。

安倍: 衆院選での躍進の理由については、維新の会の馬場共同代表は今回は自公と立憲共産という形で右と左に分かれたことで、真ん中がドカンと空いて、自民党与党に対する批判票を入れたいが左に行ってしまった立憲共産の方には入れたくない、ということでかなり維新に集まったとのこと。国民民主にもそういう要素はあったのか。

玉木: それはあったと思う。我々も数は少ないが同じようなことが起こって、その受け皿になったということは正しい分析だと思う。ただ、維新の皆さんは96名立てて41名、我々は27名立てて11名で、まあ4割強というのは比率としても同じなので、候補者(擁立)が足りなかったことは反省点だ。一方で維新にしてもうちにしても、立共でも自公でもない選択肢を求める国民の思いに一定程度答えることができたというのはその通りだと思う。

安倍: 連合が立憲と国民の合流を望んでいる件については?

玉木: 連合の吉野会長が言っているのは前段があって、なんかの番組で、立憲民主党に対して、共産党とは一線を画してくれということを明確に言って、そのあとそういう発言が出た。あの発言は共産党とやってる限りにおいては、立憲民主党と国民民主党の合流なんてありえないということを裏から言ったものだと(理解している)。共産党との関係がどうなるのかは代表選挙に出た4人の方はみな曖昧だった。だから無理だと思っている。それであれば合流はありえないということを吉野会長もわかった上で言ったのかな。

安倍: 日本維新の会との合流については、維新の会の馬場共同代表は「粛々と政策ごとにきちんと話を進めていく、焦ってどうのこうのというわけではない」と言っていたが?

玉木: 私も同じように思う。やっぱりお互いの党はそれぞれ国民民主党、維新と有権者に名前を書いてもらって今の議席を得ているわけだから、選んでくれた有権者に対してしっかり政策・公約の実現という形でお答えして行くのが今やるべき両党の立場だと思う。ただ同時に我々も野党共闘の枠組みから抜けたので、かつ、そうは言ってもまだ衆参で23名しかいないから、政策で一致するところはあらゆる政党に協力を求めて行って、連携して協力して実現につなげていく。これは野党だけじゃなくて与党もだ。ものによっては自民党、公明党にもお願いに行って、とにかく国民のために政策を実現する、そういう形でやっていきたい。いろんな連携とか協力を進める中でもし更なる進化が必要だということが、どこかの党と出てきたら、その時また考えるが、今はやはり馬場共同代表が言ったように政策本位で行く。あらゆるところと実現に向けて協力を図っていくというのは我々も同じ立場だ。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 予算関連の法案を提出するには51人必要だが、今後維新と法案を一緒に提出することも充分可能ということになったのは、大きなメリットといえるか?

玉木: 予算関連は野党第一党しかできないというのがこれまでの慣例だったが、野党第2党と第3党と足せば50を超えるというのはまた、色んなバリエーションができるし、多様な民意を受け止める1つの受け皿ができたのかなと思うので、必要に応じて予算関連の法案など検討して行きたい。

安倍: 憲法改正論議、憲法改正発議に必要な議席数を超えたが、立憲がどう出るかはまだ曖昧。玉木さんとその馬場さんとの間で「頻繁に憲法調査会を開こう」というお話を10月にしているが、立憲が「うん」と言わなければ審査会開かれないが。

玉木: その仕組み自体がどうなのかと思っている。今日憲法審査会が開かれ、役員の割り当てだけが決まった。一般の委員会でいうと与党理事懇、野党理事懇がある。これまでは野党幹事懇談会に入っていたが、今回は与党及び協力会派連絡会に入ることにした。与党側にすり寄ったとよく言われるが、我々はとにかく憲法の改正の中身自体は自民党とも違うが、議論だけはきちんと定例日に開いて議論をしっかり積み重ねていくことは、税金で歳費をもらっている国会議員の責務だと思っているので、積極的に議論をする定例日に憲法審査会を開く。

あちら側はとにかく審査会を開かせない、憲法の議論をさせないということで集まっているグループなんでそこでは一緒にできないということで、与党協力会派懇談会の方に入ることにした。はっきり言って私は自民党の4項目には相当疑問を持っている。ただ各会派が集まってしっかり議論していくことは是非やるべきだと思っている。

安倍: 岸田内閣の経済対策は徐々に実行に移されているけれども、実効性はどうなのか。成長と分配、新自由主義からの決別も本当にできるのか。国民民主党としてはどのような経済対策を打ち出していこうとしているのか?

玉木: まずは積極財政に大胆に転換するべきだということを選挙でも訴えた。やっと回復基調になってきたとはいえ諸外国に比べてもコロナからの回復が非常に遅い。だから今は困っている個人や企業を徹底的に支援する、惜しみなくやることが大事だと思う。例えば給付にしても18歳までとか所得がいくらとか住民税非課税とか課税とかいろんな条件をつけまくると結局遅くなるし、本当に困っている人に届かないので、一律給付にしろと。所得の高い人は課税時に、少し課税強化して逆還付という形で戻してもらう、所得連動型課税条件付き一律給付をやれと言っている。その方が今の日本の仕組みだとシンプルだ。くわえて成長戦略が見えない。1番残念だったのは、「令和版所得倍増」という目標を岸田首相は下ろしてしまったことだ。あれは、1番肝だったのではないか。「宏池会」の経済重視の流れは、今こそやった方がいいと思う。下村治さんがあの池田内閣の時の所得倍増計画のその立役者だったが、あの時も大来佐武郎さんと大議論があった。しかし、「やっぱりやるんだ」と言って、この所得倍増を実現した。今だって所得倍増できないだろうという諦めが前に来るが、例えば賃金上昇率4%を18年間やったら倍になる。3%だったら23年だ。20年とか25年で倍にして行く姿は作れると思うので、それを作った上で毎年の賃金上昇率が3%、4%になるように、金融緩和も積極財政も続けるという長期のコミットメントが必要だ。場当たり的にちょこちょこしたものをやって新しい資本主義といっても、新しいのか古いのかよくわからない。私からしたら日本でまともな資本主義があった時代はないんじゃないか。新自由主義からの決別というが、新自由主義というほどそのマーケットメカニズムが機能した時はあったのかと思う。むしろ官製市場でありとあらゆる事を官が支配することによって民間のダイナミズムが失われてきていることが、日本が長期低迷に陥った1番の理由だと私は思っている。そこを経ずしていきなり新しい資本主義と言いながら公的関与を強めていったら全く成長しない国になる。変わらないどころか悪化、劣化する。

安倍: 政府が目指す2050年の『カーボンニュートラル』、もしくは2030年までの「CO2の46%削減(2013年度比)目標」については?

玉木: (産業界の足を)確実に引っ張る。達成できないだろう。例えば抗原検査キットも、もっと積極的に使って誰でもどこでも受けられるようにしたらいいといっている。薬局での販売がようやく去年の9月解禁されたが、ネット販売は未だにダメなようだ。しかし、ドンキホーテでもいろいろ売ってる中で、国が承認したものぐらいは、ネット販売を認めたらどうか。そんな規制緩和すらできなくて、この国は発展するのか。もっと様々なアイディアとかイノベーションがどんどん花開くようなビジネス環境を整えていくほうがが私はいいと思っている。3%賃上げしろと言って、経団連の傘下の企業に要請するのが総理の仕事じゃなくて、3%上げられるようなビジネス環境を整えることが総理の仕事ではないか。失敗したことを何度も何度も繰り返している。「成長と分配」も、安倍元首相がアベノミクス第2弾で出した言葉だし、新しいものも何も出てこない。

安倍: エネルギー問題についてはどうかんがえるか、原発が何十基も止まっている状況で、原油価格、ガソリン価格は上がっている。トリガー条項について議論しているが、とにかく、動かすものは動かすことでベースロード電源を確保するのが先決ではないか。

玉木: まさにその通り。原油価格の高騰にこんなに振り回されている。短期的には激変緩和した方がいい。エネルギーの自給率については、自律的なエネルギー体制を作るという意味では、再生可能エネルギーはもちろん進めるが、やはり原発についてもきちんと新規制基準を満たしたものは再稼働する(のがいいと思う)。より安全な小型原子炉は研究されているし、日本企業も海外で受注しているわけだから、やっぱりリプレースは、冷静な議論の中で検討して行くべきだ。そうでないと日本経済は相当国際的にも劣後していくと思う。エネルギーの安定供給ということを国民全体で考えるように持って行かないと。自民党も骨太のエネルギー政策から逃げている。

安倍: 北京冬季五輪の米国、豪州、英国、カナダらの外交的ボイコットが相次いでいるが、我が国は中国とどう向き合っていくべきか?

玉木: 私はアメリカやイギリスに追随する形ではなくて、やはり日本が独自に外交的ボイコットについては決めるべきだと思う。選手は行ったらいい。しかしこれだけウイグルの問題とか、あるいは女性テニスプレイヤーの問題とか(あると)、日本は少なくとも人権外交を掲げているわけだし、岸田内閣に至っては人権担当総理補佐官とか外務省に人権担当官を置いたわけだから、ここに対してメッセージを発することができなければ、今の中国における人権侵害状況について容認することになってしまうアジアの中でこういうことを言える国は日本しかない。ほかの国は債務の罠に陥っていて、一帯一路でたくさん金借りてもう中国に対して物も言えない国がたくさん増えている中で、日本は別に喧嘩する必要はない。中国に大国としての責任をきちんと国際社会の中で果たして行かないとダメだというメッセージはきちんと伝えるべきだ。ただ、その上で対話を常にやり続けなきゃいけない。だから私は要人や外務省の高官は行き来して、どんな厳しい時でも対話のチャンネルは維持してお互いの主張をいう、聞く(べきだ)困難な時こそ外交の役割は重要だだからきちんと示すことを示した上で、対話はきちんと継続するということが今、日本が取るべき立場だ。

安倍: 台湾海峡の緊張が高まっている。防衛問題については?

玉木: もう既にあの前の国会で(維新の会と)共同提出している物を再び内容もほぼ同じで、我々は自衛隊法と海上保安庁法の両方の2つの法律を改正して、両組織の連携強化とか、さらにあのやっぱり領土を守るんだと、領土領空領海を領域を守るんだということを明確に法律上も明らかにした上で、尖閣防衛を強化して生きたいと思う。

安倍: 今日の目玉は?

玉木: 私が一つ(考えていて)今日もちょっとだけ(代表質問で)取り上げるのだが、皇位の安定継承について非常に心配している。眞子さまのことがあったが、やっぱり女性皇族は今のままでお年頃になっていくので、今の制度のままでは(皇族は)減っていく一方である。

そうするとまず公務の負担が重く、特定の人にのしかかる。あわせて皇位の安定継承をどうしていくのかについて考えないともう間に合わなくなってしまう。だから早めの結論をぜひ得たい。今回新しいこととして、旧皇族の(男系)男子の型を養子として迎えるということが提案されている。

いわゆる旧宮家の皇籍復帰みたいなことを正面から法律でやるべきだという人もいる。まずは養子という形で婚姻関係をと言っている人もいる。ただ皇籍離脱されてからずいぶん長い年月が経っているので、果たしてそれが実現可能性のある選択肢なのかどうかについてはきちんと検証しないと。

安倍: それを話し合う場というのはどこになるのか?

玉木: まずは今有識者会議でやっているが、皇室典範特例法の付則では、それを受けて国会で議論しなければいけない。有識者会議がある程度選択肢を示して、国会でそれの賛否を問うことになる。

眞子様は間に合わなかったが、少なくとも佳子さま、愛子さま2人がご結婚されたらもう(跡継ぎが)いない。で、そこから女性宮家を作るといってもいないので。まだ女性宮家がいいかどうかは別として、そうやってご結婚後も公務につけるような新しい地位を設けるっていうのも、1つの選択肢として提案されているが、ただそれは公務の負担には役立っても、やっぱり安定継承には直接寄与しない。ここは憲法一条、『天皇』って書いてあるので、我が国の、まあ、ある種国柄の根幹の問題である。こういったことも国会の中で(話し合いたい)。

安倍: 来年夏の参院選に向けての戦略は?

玉木: 我々は政策を磨いて「動け、日本」ということで、人もお金も動かなくなって停滞している日本をなんとか動かして行きたい。特に我々が訴えているのが、給料が上がる経済を実現したいといういことだ。25年間実質賃金が下がり続けている国は日本だけだ。給料が上がらなくなったことによって、いろんな問題が生じてきていて、例えば一生懸命頑張って就職して給料が上がるという希望があれば、学生だって奨学金を借りることは怖くないし、若い人も結婚できるし、望めば子供を持てる。厚生年金が典型的だが、若い頃の給与水準に年金水準が比例する。(給与水準が上がれば)老後の安心が戻ってくる。頑張って働いたら給料が上がっていく。かつては当たり前だったが、今の若い世代はもう下がることしか知らない。でも諸外国は全部上がってる。(若い世代は)そのせいで意気消沈してしまい、夢がない。その諦観を吹き飛ばしたい。そのために1番大事なことは給料が上がる経済にすることだ。それは岸田さんがあきらめてしまった所得倍増に正面から取り組むことだ。20年かかっても25年かかってもいいから頑張れば少なくとも下がることはない、上がるんだという事を見せることが今一番必要だと思うので、改めてバージョンアップしてこの給料が上がる経済を取り戻すんだということを大きな柱に置く。そしてそれをワンボイスで訴えられる候補者をいっぱい立てて、我々の想いや政策を全国に届ける形で参議院の仲間を増やしたい。

安倍: 公募については?

玉木: 今新しいページを作って募集している。政治家説明会、就職説明会みたいなことを今晩ネットでやろうと思っている。いろんな形でこれまで政治に参加してきてくれなかったような層にもしっかり訴えたい。例えばユーチューバーの中でも極めて政治的な関心を持って発信しているような方もいる。そんな人の中にはもう何10万、何100万とフォロワー持ってる人もいるので、新しい政治の形態にもチャレンジしたいし、そういった方にも是非立候補を進めたいと思う。

(了)

**インタビューは2021年12月9日に実施。

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."