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.国際  投稿日:2022/1/6

習近平政権、厳しい政権運営「2022年を占う!」中国


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・中国のアキレス腱は、右肩下がりの経済、不動産バブル崩壊の予兆、中央政府巨額赤字など。

・2022年、経済は更に失速、対中包囲網は狭まり、コロナ対策、彭帥問題に苦慮する。

・ 習政権は、綱渡りのような厳しい政権運営が強いられる

 

2022年の中国を占う場合、まず、同国の問題の所在を明らかにしておかねばならない。問題点を書き出してみよう。

(1)国内政治

習近平主席は、政権誕生後まもなく「第2文化大革命」を発動した。すなわち

①西欧的価値観(自由・民主主義や法の支配)を否定

②人権派弁護士を逮捕・拘束

③宗教を弾圧―法輪功・イスラム教はもとより、北京のお墨付きである中国天主教愛国会に至るまで

④密告を奨励―教師が中国共産党の主張と違った内容を学生に教えると、学生が党へ通報(最近、上海震旦職業学院の宋庚一が「南京大虐殺」に関して、その数字が不明だと学生達に説明。その話を聞いた一学生(董姓)が党へ報告したので、宋は免職)

⑤学習塾やピアノ等習い事の塾を規制。

他方、習政権は

新疆ウイグル自治区での弾圧―100万人以上のウイグル人が強制収容所に収容され、奴隷労働を強いられている

チベット自治区、モンゴル自治区での圧政―両自治区では、徹底した中国語教育が行われ、チベット語やモンゴル語の学習・使用が制限

香港の自由・民主を抑圧―返還後、50年間不変だった香港の「1国2制度」を「1国1制度」へ変貌させた(特に、2020年「香港国家安全維持法」の制定・施行で)。

(2)経済政策

習近平政権は、鄧小平の「改革・開放」路線を捨て、社会主義(「民進国退」から「国進民退」)へと逆戻りしている。

具体的には

① 「混合所有制」改革(活きのよい民間企業とゾンビあるいはゾンビまがいの国有企業を合併)の実施

②江沢民派や鄧小平派と関係が深い企業にメス―蕭建華の「明天系」(投資ファンド)や呉小暉(鄧小平の孫娘の夫)の「安邦保険集団」等

③「共同富裕」の名の下に、アリババをはじめ、新興IT企業に“慈善事業”へ参加するよう要請。

④企業内で「習近平思想」を学習―たとえ同思想を学んでも企業の成長に役立つかどうか疑問。

他方、

⑤北京政府は庶民に株の購入を奨励―2015年、株バブル崩壊で約9000万人の庶民が被害に遭う

⑥中国共産党と繋がりの強いP2P(庶民から小口の資金を募り、中小企業へ融資)が破綻。

⑦(脱税したという理由で)范冰冰ら、芸能人から巨額のカネを押収。

▲写真 第71回カンヌ映画祭に出席する女優范冰冰(ファン・ビンビン)2018年5月11日、フランス・カンヌ 出典:Photo by Tristan Fewings/Getty Images

(3)対外政策

目下、中国は米国の覇権に挑戦している。

①当面「第一列島線」の突破を狙う。

台湾に対する侵攻をちらつかせる―台湾の「国際生存空間」を狭めるため、台湾と国交のある国を一国でも減らそうと試みる。

③北京は、依然「戦狼外交」を継続中―中国はオーストラリアとの関係悪化により、豪産石炭輸入をストップ。そのため国内は電力不足に陥る。

④「一帯一路」構想の挫折―コロナ禍、同構想関係国の経済が思わしくないので、中国への借款返済が滞る。

これらが、主な問題点である。

ところで、中国の“アキレス腱”とは何か。

右肩下がりの中国経済―「改革・開放」路線の放棄で

不動産バブル崩壊の予兆―中国全不動産会社が抱える負債は約560兆円だという

中央政府の巨額の財政赤字―GDPの300%以上

三峡ダム―ダムが湾曲し、防護石が欠損。いつ決壊しても不思議ではない

国内や党内で渦巻く不満―例えば、2021年6月、南京師範大学中北学院で職業技術学院との統合案が浮上。学位の価値が下がることを懸念した師範大学の学生数千人が抗議デモを行い、学長を人質にとる。公安が介入し、事件は解決。一方、曲青山の「『改革・開放』は党の偉大な覚醒だ」という論考が『人民日報』(12月9日付)に掲載。鄧小平の名が7回、江沢民と胡錦濤の名がそれぞれ1回ずつ登場するが、習近平の名はゼロ。この中で「改革・開放」が称賛され、「文革」が非難されている。

▲写真 恒大集団開発のマンション群(2021年10月7日、中国湖北省武漢) 出典:Photo by Getty Images News

結局、2022年、中国は次のような状況になる公算が大きい。

第1に、同国経済は益々失速する。それに伴い、習近平政権は、国内の締め付けを更に厳しくするだろう。

第2に、習政権は、対外的強硬策を継続する。しかし、米欧は中国の「力による現状維持変更」を看過できず、「対中包囲網」は徐々に狭まるのではないか。

第3に、中国国内で新型コロナは完全に終息するのか不明である。依然、一部地域で新型コロナ蔓延のニュースが流れている。

第4に、「彭帥問題」(彭帥(ほうすい:英語読みポン・シュアイ)選手が元最高幹部の1人、張高麗から性的暴行を受けたと微博に投稿)が国際的に後を引くだろう。

▲写真 2020年全豪オープン2日目 女子ダブルスに出場する彭帥選手(2020年1月21日、オーストラリア・メルボルン) 出典:Photo by Fred Lee/Getty Images)

最近、シンガポールメディア『聯合早報』が彭帥にインタビューを行った。だが、彭は性的暴行に関してSNSに投稿したことはないと全面否定した。また、自身は当局からの監視を受けず、自由であると語った。

以上のように、習政権は、綱渡りのような厳しい政権運営が強いられるのではないか。

トップ写真:中国共産党100周年記念式典でスピーチする習近平国家主席(2021年7月1日、北京の天安門広場) 出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images




この記事を書いた人
澁谷司アジア太平洋交流学会会長

1953年東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。元拓殖大学海外事情研究所教授。アジア太平洋交流学会会長。

澁谷司

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