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.国際  投稿日:2014/6/5

[梁充模]<反NAVER連合?>韓国ポータルサイト2位「ダウム」と「カカオトーク」が合併


梁充模(経済ジャーナリスト)

執筆記事Facebook

5月26日、韓国の第2位のポータルサイト「ダウム」を運営している「ダウム・コミュニケーションズ」(以下、ダウム)とモバイルメッセンジャーで韓国内1位の「カカオトーク」の運営業者「カカオ」が合併契約を締結したと公表した。

合併が順調に進められれば、コスダック市場(韓国の先端技術株中心の株式市場)に、時価総額およそ3兆4千億ウォン(約3380億円)を超える超巨大IT企業が誕生する見通しだ。

合併はダウムが新株を発行し、カカオ株1株あたりダウム株1.556の割合で交換し吸収する形式だ。しかし、最大株主は今現在カカオの最大株主である金範洙(キム・ボムス)カカオ議長になるため、裏口上場(back door listing 注1)に該当する。合併法人の重心は自然と、カカオの方に向けられると予想されている。

ダウムとカカオは韓国のインターネットとモバイルのエコシステム(注2)を構築したという共通点を持っている。ダウムは1995年の設立以降、hanmail(ウェブメールサービス)、カフェ(コミュニティサービス)を公開し、韓国のインターネットのトレンドを導いてきた。

2006年設立のカカオは2010年3月にカカオトークを発表して以来、国内モバイルのメッセンジャー市場を支配している。現在、カカオトークは国内MAU(ある月に1回以上活動のあった利用者の数)基準でシェアが92%に達する。これは日本国内でのLINEのMAUとほぼ横並びだ。

他の共通点は2社ともに状況が良くないというところだ。ダウムの検索エンジンの国内シェア(2位、20.3%)は、国内シェア1位であるNAVER(1位、75.1%)に比較し大幅に下回る。主な収益源である広告売上では、その差は7倍にも達する。カカオはモバイルゲーム以外の成長余力がない。新作ゲームの不振とゲームの飽和などで、成長が停滞している。

このような状況下で、合併は2社にとってはベスト・ソリューションであったかもしれない。シナジー効果を狙えるからだ。実際に、合併発表の記者会見で最も多く聞こえた単語が「シナジー」だった。崔世勲(チェ・セフン)ダウム社長は「カカオの強力なプラットフォームとダウムのサービス専門技術を融合すれば、最大のシナジー効果を起こせると確信している」と述べた。

合併のシナジー効果について、市場の意見は様々だ。モバイルで強みを持っているカカオと、検索・地図・動画など多様なコンテンツ資産を保有しているダウムが結合すれば、前向きな成果を得られるという意見がある反面、PCをベースとしたダウムのプラットフォームとモバイルを基盤とするカカオの統合がどの位の効果をもたらすか予測できないという声も高い。一部では「反NAVER連合軍の結成に過ぎない」という意見もある。

韓国の国内市場が飽和状態であることを考慮すると、合併法人「ダウムカカオ」の今後の最大課題は、グローバル市場の攻略だ。問題は、両社ともグローバル市場で、これといった成果を出したことがないことだ。カカオの日本法人であるカカオジャパンは2年連続で純損失を記録した(ちなみにカカオジャパンの持分の50%はヤフージャパンが保有している)。

他の海外法人であるカカオシンガポール、北京カカオも2013年純損失だった。ダウムもこれまで何回の海外進出を図ったが、結果は芳しくなかった。両社の合併がグローバル市場で成果を収めることができるかに対する疑問の声が出ているのは当然かもしれない。

今後、最大の戦場は東南アジアになりそうだ。競争相手はNAVER傘下にあるラインと中国のメッセンジャーアプリ、ウィーチャットだ。ラインが優位を占めているように見えるが、確実に支配者になるとは言えない。カカオが必要としているグローバルマーケティング費用は、一年に約2000億ウォン(約200億円)と推算されている。

合併以降、ダウムカカオが新株を発行すれば、その3〜5倍の資金を手にすることも難しくない。この資金を活用すると、グローバルIT業界である程度の地殻変動を起こせるかもしれない。 激化しているグローバルIT業界でこれまで「内需用」に過ぎなかったダウムとカカオが、合併を通じグローバル市場で成功することができるのか、注目を集めている。

  • 注1)非上場企業が経営不振状態の上場企業を買収、合併するなどして、上場審査を経ずに実質的に上場する行為。
  • 注2)複数の企業が相互協力し、生産・開発から流通まで、共存する仕組み。

 

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