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.政治  投稿日:2022/4/15

子ども宅食を高岡市に「高岡発ニッポン再興」その3


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・富山県高岡市で、ひとり親家庭や就学援助を受ける家庭を対象に「子ども宅食」が展開されている。

・コロナ渦で苦しむ子どもたちを助けるため、市民と市役所が一体となって実現した。

・地元の温かみを感じられる機会になることを願っている。

「子ども宅食」ってご存じですか。

一人親家庭などにお弁当を届ける事業です。コロナ禍で、深刻化する家庭の貧困を救うのが狙いで、2021年度は、厚生労働省が補正予算で22億円計上しました。この事業のポイントは国が全額負担してくれることです。市の財政負担が一切ないのです。

この事業を高岡で実施したのは、高岡市で「子ども食堂」を展開している「オタヤ子ども食堂」。子どもたちやその親に集まってもらい、子ども食堂を実施していましたが、コロナ禍のため、開催しにくい状況となりました。そこで、新たに始めたのが「子ども宅食」です。300食以上、配りました。地元のお弁当屋さんからお弁当を仕入れ、夕食時間に合わせて、各家庭に配ります。お弁当業者、そしてお弁当を受け取る家庭。国のお金で、皆さんが喜ぶ仕組みです。

私は高岡市議会の会派「高岡愛」のメンバーと一緒に、「子ども宅食」に同行させていただきました。そのうちの一軒は、アパート暮らしのシングルマザーの家庭です。ブザーを押すと、出てきたのは30代ぐらいの女性です。弁当3個を渡すと、にっこりしていました。この女性、シングルマザーで、2人の子どもを育てています。「宅食は本当にありがたいです。仕事をしながら、お弁当をつくるのが最も大変です」。

▲写真 オタヤ子ども食堂で提供されるお弁当(筆者提供)

▲写真 オタヤ子ども食堂で提供されるお弁当(筆者提供)

「子ども宅食」の対象となっているのは、一人親家庭や就学援助を受けている家庭です。

「子どもの貧困」が問題になっています。7人に1人は貧困と言われています。さらに、コロナ禍です。コロナで学級閉鎖などになると、母親はパートを休まなければなりません。収入減少に直結します。コロナ禍では一層、一人親家庭に大きな影響が出るのです。追い打ちをかけるのは、ウクライナ侵攻に伴う物価高。ガソリンも上がっています。収入減少と生活費アップ。ダブルパンチで、生活は極めて厳しい状況です。

今回の「子ども宅食」は高岡市中心部が中心でしたが、本来は高岡市全域でやるべきだと、私は思います。ただ、それをやるには人手が不足しています。伏木、福岡、中田、戸出、姫野など、いろんな地域で「子ども宅食」をキーワードにネットワークができればいいのに、と構想を練っています。それが暮らしやすい高岡に直結します。

そして大事なのは、家庭、さらには子どもに温かい気持ちが芽生えることです。

「お弁当をもらった。高岡っていいところだね」。

そんなことがきっかけで、将来Uターンにつながる可能性があるのです。郷土愛を育む土壌になればと思っています。

この事業の存在を教えてくれたのは、旧知のある自民党国会議員の政策秘書の方でした。子どもの貧困をどう救うのか。超党派で働きかけ、実現したというのです。

「故郷に戻るなら、ぜひ高岡でこうした政策を広めて欲しい」。

当時、私は市長選に出馬するため、高岡に戻ろうとしていました。その際、政策秘書の方にさまざま相談していたのです。それとは別に、丸川珠代元オリンピック担当大臣も高岡で子ども宅食をやるべきだと訴えていました。それから、1年余り。市長選、市議選とバタバタしていたのですが、今年1月下旬に久しぶりにその政策秘書の方に連絡しました。

「1年前とは違うのですが、厚生労働省が新たに子ども宅食について予算をつけています」。

厚生労働省が令和3年度補正予算案で母子家庭等対策総合支援事業として、22億円計上しているというのです。まず国が中間支援法人を決定し、その中間支援法人が子ども食堂を主催する団体などを選定する流れなのです。厚生労働省に連絡した後、この話を「オタヤこども食堂」の方々に伝えると、皆さんやる気満々。

「コロナで子ども食堂も開きにくい。困っている家庭は多いので、ぜひ実現したい」。

申請に動きました。しかし、申請書をどのように書くのか。ボランティアの方々は不慣れです。

そこで動いてくれたのは、市役所の「子ども・子育て課」です。市職員の方が申請書の作成を手伝い、さらに市の推薦状も付けました。市の担当者も「ぜひ高岡市で実現したい」と意気込みました。市職員の努力も大変なものです。その結果、補助を受けることができたのです。コロナ禍の子どもたちをどう、手助けするか。その目的を達成するため、市民と市役所が一体になったのです。

 

<編集部注>

丸川珠代オリンピック担当大臣は、母子寡婦福祉対策議員連盟の事務局長も務めている。

トップ写真:会派「高岡愛」の熊木義城(左から2人目)、嶋川武秀(左から3人目)、出町譲(左から4人目)各市議とオタヤ子ども食堂の方、配達を担当しているキャンナス高岡の方(筆者提供)




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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