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.政治  投稿日:2022/6/8

人口「1699人減」の衝撃 「高岡発ニッポン再興」その11


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・出生数過去最少更新の日本。高岡市の人口もつるべ落としのように人口が減少し続けている。

・コロナ禍で「転職なき移住」「ワーケーション」が可能に。都市間の移住戦国時代を勝ち抜く戦略が求められる。

・収入アップ、出生数増加の下地をつくる「人への投資」を加速すべき

 

アメリカの著名経営者のイーロン・マスク氏が、ツイッター上で「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう」と投稿し、話題となりましたが、我が故郷、高岡市も極めて厳しい状況に置かれています。人口が去年、過去10年で最大の減少数となったのです。去年12月31日時点で、1年前に比べ実に1699人減少しました。このペースが10年続けば、戸出地区と中田地区の人口が丸ごと吹き飛ぶことになります。

▲写真 日本の出生数低下に警鐘を鳴らしたイーロン・マスク氏(2022年5月2日 ニューヨーク市) 出典:Photo by James Devaney/GC Images

私が驚いたのは、減少のスピードです。過去5年を振り返ると、平成29年度には1078人の減少でしたが、その後、減少幅は急ピッチで拡大。30年は1216人減、令和元年は1488人減、令和2年は1555人減。そして今回の1699人減なのです。つるべ落としのように、人口が減っています。

その数字を分析しました。まずは生まれた人と死亡した人との差です。去年の出生数は1020人。前年より8人増えましたが、依然として低い水準です。一方、死亡した人は実に2304人。つまり、生まれた人の数から死亡した人を引くと、マイナス1284人なのです。これは、「自然減」と呼ばれていますが、急ピッチに進み、過去10年で最悪なのです。

一方、転入した人は4294人で、転出した人は4709人。転入する人から転出した人を引くと、マイナス415人。この「社会減」も、過去10年で最悪なのです。射水市や富山市などに転出するケースが目立っています。5年前の平成29年には、44人の「社会増」を達成していたのですが、状況は一変しています。

データを素直に読み込むと、子どもがあまり生まれず、引っ越してくる人が少ない実態が明らかです。どうすべきでしょうか。まずは未来に向けた健全な危機感です。その上で、「人口減少非常事態」宣言を出すことも必要かもしれません。歯止めをかけるため、政策を総動員する必要があるでしょう。

▲写真 高岡市内の様子(筆者提供)

人の命は医療で最善を尽くしますが、亡くなるのは、避けられない側面もあります。ただ、子どもを産みやすい環境をつくり、移住を促すのは、政治の力が大きく影響します。

社会情勢は追い風です。コロナ危機をきっかけに、テレワークが浸透。どこにいても仕事ができることから、東京から出ていきたい若者が増えているのです。「転職なき移住」という言葉もあります。一部大手企業では、全国どこに住んでも可能な制度を取り入れています。東京の企業に勤めながら、地方に暮らすことが可能になっているのです。会社をやめなくても、実家暮らしができるのです。

一部の地方自治体はこうした時代をつかみ、「転職なき移住」の受け皿になろうと力を入れています。「移住」はハードルが高ければ、労働と余暇を同時に味わえる「ワーケーション」の地になろうとする動きもあります。企業と協定を結ぶケースもあります。激しい都市間競争が繰り広げられているのです。高岡市も安穏としているわけにはいきません。移住戦国時代に勝ち抜いていく戦略が求められているのです。

移住だけではなく、そもそも子どもを産みやすい高岡市を目指さなければなりません。専門家によれば、少子化対策は新たな時代を迎えています。

これまでは、保育施設の充実や、企業などに育児休業の取得を呼び掛けたりしていました。母親だけに子育てを任せず、子どもを産みやすい環境づくりです。

もちろんこうした政策も重要なのですが、ここにきてその政策にも限界が指摘されています。

私が驚いたのは、共同通信の報道です。全国の主要都市の認可保育所・施設で今年4月現在、0~2歳児の定員の空き人数が新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年と比べ1.5倍に増えたのです。66%の施設で定員に余裕があったというのです。保育園の空きがあれば、子どもをつくるという状況ではなくなったのです。

むしろ、深刻なのは、若い夫婦の間では、そもそも子どもを産みたいという意欲が薄らいでいるというのです。日本では30年間、デフレ状態で、物価も賃金が上がらないのです。非正規雇用も全体の4割を占め、経済的な理由から子どもをつくりたくないというのが本音です。このため、職業訓練や再就職支援のための政策が必要になってくるでしょう。とりわけ、人手不足に陥っているデジタル分野での職業訓練が大事なります。

高岡市は国や県と連動して、「人への投資」を加速すべきです。それが結局は、収入アップ、さらには出生数の増加の下地をつくります。人口減少は高岡市の最大課題です。私は一人の政治家として、この問題に命がけで取り組みます。

トップ写真:高岡駅(筆者撮影)




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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