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.国際  投稿日:2023/2/6

中国の脅威への対処法 その2 日米同盟の片務性を減らせ


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

 

【まとめ】

・中国脅威の対処法その2は日米同盟の増強。

・米への全面依存ではなく日本の貢献を増すことが肝要。

・自衛隊もアメリカとともに戦えるという双務性を高めるべき。

 

中国の脅威に対するためには日本はなにをすべきか。その考察を続けよう。

中国に自国の領土を奪われたり、隷属的な支配を受けないために、日本はどうするべきか。

その最初の方途として日本の防衛の強化を提起した。中国が軍事力を使って日本を威圧したり、制圧したりさせないために、日本側の防衛力を強めて、中国の軍事力を抑止する、という方策である。

前回の連載記事でそのための具体策として提起したのが日本独自の防衛力の強化だった。「専守防衛」という事実上、自国の防衛を最初から放棄するような危険な政策の放棄がまず欠かせない、と説いた。

さて、この防衛面での強化策の第二の部分は日米同盟の増強である。

ここまで説いてくると、日本国内で必ず起きる反論のような議論は「日本の国家安全保障に必要なのは軍事や防衛だけではない」という主張である。「国家の安全保障には外交や対話、さらには経済の協力なども欠かせないのだ」という趣旨の意見でもある。

この種の議論に決定的に欠けるのは、では一国の安全保障には軍事や防衛という要素がなくてもよいのか、という点への配慮だろう。そもそも独立国家が自国の永続する安定や安全を求める際には、軍事だけでなく、外交や経済がともなうことは当たり前である。

だが外交や対話を重視する主張には、防衛や軍事をまったく軽視し去ってしまう傾向が強い。国家安全保障は軍事だけでは守れない、というは当然のことなのだ。だがその安全保障の中核、つまり必須条件はやはり物理的な防衛の措置であり、その防衛という行動に国家としての威力や強制力を与える軍事という概念なのである。

そもそもいまの日本に脅威となる中国や北朝鮮は、対外政策で軍事力を極度に重視している。国際紛争の解決や自国の野望の追求に軍事力を使うことをいとわない。つまり軍事優先、軍事重視の諸国なのである。そうした諸国に軍事的手段で迫れた場合、どうするのか。たとえば中国が日本固有の領土の尖閣諸島に軍事侵攻してきた場合、日本はどうするのか。外交とか対話を試みても、肝心の尖閣諸島は中国にあっさりと奪われてしまうだろう。

そんな際に日本側も軍事という物理的な力で中国の侵略をまず止めなければならない。相手に軍事的手段で自国領を奪われ、占拠されてから、外交とか対話と叫んだところで、喪失された自国領土は戻ってこない。

だから日本の防衛の強化を説いたわけである。だが前述のように、その日本の防衛の強化も、日本自身が独自の防衛力を増強することと、国家安全保障の主要部分をあずけてきた同盟国アメリカとのその同盟を強くすることの二つの方法がある。

その二番目の日米同盟の強化は、この同盟をより双務的に、より共通項を多く、アメリカへの全面依存ではなく、日本の貢献を増すことが肝要となる。ここでどうしても出てくるのは日本がアメリカを守るという行動は日本の領土、領海のなかだけに限られるという異端である。

 つまり日米共同防衛という目標がいかに熱心に語られても、日米同盟の基盤となる日米安保条約では、たとえ日本を守るために活動中のアメリカ海軍艦艇が日本の領海の1キロ外で航行中に第三国の軍隊の攻撃を受けても、日本はその被害を受けたアメリカ軍艦艇を守る義務はないのだ。こんな相互防衛条約はアメリカが多数の諸国との間で結ぶ安全保障条約のなかでも他にひとつもない。

日本はこの異端を撤廃する時期を迎えたといえる。日米同盟を相互的、双務的、つまりより公正にするためにも憲法改正によって日本の防衛への過剰な自縄自縛を撤去すべき時機がきたのだ。いまの日本の自国防衛への異様な自己はみな、憲法9条の戦争や戦力保持の否定から生じているのだから、である。

この点、トランプ前大統領は彼なりの表現で批判を述べた。粗雑な言葉だったが、的を射ていた。トランプ前大統領は在任中に『日米同盟では日本が攻撃を受ければアメリカ側に全面的に守ってもらうのにアメリカが攻撃されても、日本国民はなにもせず、自宅でソ二―のテレビでもみていればよいのだ』と語ったのだった。

この指摘は日本側は忘れてはならないだろう。

やはり日米同盟をより堅固にするためには日本側が年来の集団的自衛権の行使の禁忌を解くことだろう。せめて韓国並みに西太平洋でアメリカが攻撃を受ければ、日本の自衛隊もアメリカとともに戦えるという双務性を高めるべきだろう。

トップ写真:陸上自衛隊、英国陸軍との共同訓練

出典:Photo By Tomohiro Ohsumi/Getty Images

(つづく。その1

 




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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