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.政治  投稿日:2024/2/12

「6月解散説浮上」永田町、政局まっただ中


安積明子(政治ジャーナリスト)

「安積明子の永田町通信」

【まとめ】

岸田首相、総裁選再選を果たすため、6月にも衆議院を解散するのではと囁かれている

・小池氏の都知事選出馬表明とほぼ同時に解散打てば、氏の国政転出も防止できる

・自民党内に「岸田降ろし」が勃発するか。永田町はいま、30年に1度の政局の真っただ中。

 

岸田文雄首相は「孤高の宰相」か、それとも単なる「空気を読めないオジサン」なのか。

昨年12月に始まった自民党の派閥パーティー券をめぐる騒動は、いよいよ世紀末感を漂わせている。旧安倍派を仕切っていた〝5人衆〟はいずれも立件を免れたが、国民は「シロ」だとは思っていない。

党本部から約50億円もの政策活動費を受け取っていた二階俊博元幹事長も同じだ。そして他の派閥に先駆けて1月18日に宏池会解散を表明した岸田首相にも、国民から厳しい目が注がれている

にもかかわらず、岸田首相は自身の延命に必死だ。今年9月に予定されている総裁選で再選を果たすために、6月にも衆議院を解散するのではないかと囁かれている

党の選挙のために国政を利用するなどとは、はなはだ本末転倒の話だが、衆議院の解散権は日本国憲法が保障する総理大臣の専権事項で、その行使には制限はない(ただし7条解散説による)。

そして7月7日の投開票となれば、衆議院選と都知事選は同日選になる。もっとも小池百合子知事の国政転出が噂されているが、小池知事の都知事選出馬表明とほぼ同時に解散を打てば、それも防止できるだろう。

なお自民党東京都連は小池知事と、今年1月の八王子市長選や昨年12月の江東区長選などで連携を組んで勝利した。かつて小池知事と対立した内田茂元都連幹事長や高島直樹元都連幹事長は鬼籍に入り、両者のわだかまりは小さくなった。

内田氏と高島氏が亡き後の東京都連を率いなければならない萩生田光一前政調会長は、2021年の参議院選で旧統一教会との緊密な関係が露呈し、創価学会に嫌われた。また昨年は10増10減によって新設される衆議院東京28区をめぐって公明党と対立し、同党の石井啓一幹事長に「東京での自公の関係は地に落ちた」とまで言れわてしまった。

さらに追い打ちをかけたのが、派閥パーティー券をめぐる〝裏金〟問題だ。萩生田氏は1月22日に会見を開き、2018年から2022年までの5年間に政治収支報告書に不記載だった金額は2728万円にも上ることを明らかにし、事務所の引き出しで保管していたと説明した。

その萩生田氏が頼みとするのが、小池知事だ。八王子市長選では1月21日の投開票の2日前、自公が推薦し、東京維新の会が支援した初宿和夫氏の応援のため、小池知事は八王子駅前で演説した。その1週間前の調査では7000票差で野党系候補に劣勢とされた初宿氏は、結果的にその候補に6645票の差を付けて当選した。小池知事の応援がなければ、いったいどうなっていたのか―。命拾いをしたと思ったのは、萩生田氏だけではないはずだ。

小池知事と組んで7月7日に知事選と衆議院選との同日選を行えば、自民党は都内で議席を増やすという試算もあるようだ。確かに5増5減で東京都内は、25選挙区から30選挙区に増加する。だが昨年9月の自民党の調査では、「41議席減」との結果もある。当時よりも現在の方が内閣支持率は低く、自民党が置かれている立場は厳しい。

またトリガー条項凍結解除の協議から国民民主党が外れたことは、岸田首相にとって小さくない誤算だったに違いない。衆議院で7人、参議院で10人の議員を擁する同党は、トリガー条項凍結解除に岸田首相が関心を示しただけで、本予算も補正予算もまるごと賛成してくれる有難い存在だった。かつて公明党が「どこまでもついていきます下駄の雪」と揶揄されたが、国民民主党はまさにその「下駄の雪」だった

だがいっこうにトリガー条項凍結解除実現に腰を上げない岸田首相に業を煮やし、国民民主党は離れていった。もっとも財務省に頭が上がらない岸田首相は、端から税制をいじるつもりはなかったようだ。

おそらく景気さえ良くなれば、燃料費高騰など問題ないと軽く見ていたに違いない。確かに株価は上昇しており、大企業も賃上げが進んでいる。

しかし物価上昇に賃上げが追い付いていない。また海外では中国経済は成長を鈍化させ、コロナ禍で加熱したアメリカの不動産市場はピークアウトし始めている。4-6月の経済予想も、期待ほど良くないとの推測もある。

すでに麻生太郎副総裁は「次」を見据えて、上川陽子外相に注目している。ともすれば「オバサン」「美しい方とは思わない」発言ばかりが注目されているが、上川氏の仕事ぶりに対する麻生氏の評価は、これまでにないほど高いものだ

それでもなお延命を求めて、岸田首相は衆議院を解散する時期を探るだろう。それより先に自民党内に「岸田降ろし」が勃発するか。永田町はいま、30年に1度の政局の真っただ中にある。

トップ写真:イタリア共和国のジョルジャ・メローニ首相を迎える岸田首相 (2024年2月5日 東京都千代田区首相官邸) 出典:首相官邸




この記事を書いた人
安積明子政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使

安積明子

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