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.政治  投稿日:2024/5/28

都知事選 蓮舫氏、小池氏に勝つにはもうひとふんばり必要


安積明子(政治ジャーナリスト)

「安積明子の永田町通信」

 

【まとめ】

・立憲民主党の蓮舫参院議員が都知事選に出馬。

・自民党に対する逆風が出馬の理由。しかし、かつての人気はない。

・小池知事を凌駕するには、ひとふんばりもふたふんばりも必要。

 

 立憲民主党の蓮舫参院議員が527日、7月に執行される東京都都知事選に出馬することを表明した。党本部で会見を開き、「小池都政をリセットする」と宣言した。

 これまでも幾度か都知事選への出馬が噂されていた蓮舫氏だが、決断したのは昨今の自民党に対する逆風が理由だろう。前日に投開票された静岡県知事選では、立憲民主党と国民民主党が推薦した鈴木康友前浜松市長が自民党が推薦の大村慎一元副知事に勝利した。また蓮舫氏が住む東京都目黒区では、2議席をめぐって都議補選が行われ、区長選に出馬した立憲民主党の西崎つばさ前都議が1万9526票を獲得してトップで当選を果たし、自民党の井澤京子元衆院議員は落選している。

 もっとも“逆風”がなかったわけではない。国会では「政治とカネ」問題をめぐって法案が審議され、立憲民主党は国民民主党らと政策活動費の禁止や議員の責任の厳格化を規定した政治資金規正法改正案を上程。また独自で政治資金パーティー禁止法案と企業・団体献金規制法案を提出。にもかかわらず、岡田克也幹事長や大串博志選対委員長らのパーティーが予定されていたことが発覚。安住淳国対委員長も4月25日にこっそりと開いていた。

 その言行不一致ぶりに批判が殺到したが、岡田幹事長らは「法律が改正されて禁止するまでパーティーは違法ではない」と開き直った。しかしさすがに国民の理解は得られず、岡田氏や大串氏は5月25日にパーティーの中止を発表し、翌日の都議補選への影響は極力抑えられた。かつて自分の秘書だった西崎氏の応援のためにマイクを握った蓮舫氏は、そうした自民党への強い逆風を肌で感じ取ったに違いない。

 また小池百合子東京都知事の力も衰えを見せている。2020年の都知事選では366万1371票も獲得した小池知事だが、2022年の参議院選では衆院議員時代に秘書として仕え、小池知事の“分身”ともいえる荒木千陽元都民ファーストの会代表が出馬して落選。得票数は28万4629票にとどまった。

 また4月28日に行われた衆院東京15区補選に乙武洋匡氏が小池知事の“身代わり出馬”したが、2万票も獲れずに9人中4位で落選。豊島区や江東区に続き、“子飼い”の区長を誕生させようと奮闘した目黒区区長選でも、その企みは失敗した。

 最たる失敗は同区の都議補選だろう。小池知事は2008年の自民党総裁選に出馬した際に推薦人になってくれた井澤氏を応援し、動画メッセージを配信した他、井澤氏のポスターに小池知事の写真と名前が入ったシールを貼らせている。にもかかわらず、井澤氏は5人中3位で落選。小池知事の無力さが露呈した。

 そうした動きもあったためか、“サプライズ”がお得意の小池知事にしては珍しく、早期に次期知事選出馬を仄めかした。4月発売の文藝春秋が報じた「学歴詐称疑惑」もじわじわと効いているようだ。前回の都知事選のように300万票以上も獲得することは、もはや望めないかもしれない。

  だが蓮舫氏が小池知事を凌駕するには、もうひとふんばりもふたふんばりも必要になるだろう。蓮舫氏は参院東京都選挙区の選出で、選挙区の範囲は都知事選と同じ。2010年の参院選で171万734票を獲得したのが最多である。

 しかし最近の蓮舫氏はかつてのような人気はない。2022年の参議院選で獲得したのは67万339票で、最盛期より100万票以上も減らしている。

 また「二重国籍疑惑」では説明責任が十分ではなく、民進党代表に就任したものの、1年もしないうちに放り投げている。政治家として器が小さいことは否定できない。

 以来、国会では切れ味鋭い質問を行うものの、政局の表舞台に立つことはなくなった。この度の都知事選出馬で久々にスポットライトを浴びることになったが、果たして蓮舫氏は輝き続けることができるのか。自ら輝く恒星とその光を反射するにすぎない惑星との差は、決して小さくない。

トップ写真:内閣府特命担当大臣として指名された蓮舫氏。2010年6月8日。出典:Photo by Koichi Kamoshida/Getty Images




この記事を書いた人
安積明子政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使

安積明子

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