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.政治  投稿日:2024/9/22

【立憲民主党代表選挙】3 泉健太氏「政策分析」と「人事評価」


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・泉健太候補、今回「日本を伸ばす」という政策を掲げている。

・富裕層の課税、農産品の輸出、自衛隊の待遇改善などを訴える。

・もう少し企業団体献金廃止を強調してもいいのではないか。

 

「学校や道路、街灯、社会インフラで私は安心安全に育てられてきた」

「成長か分配か、その常に分配の側に立ってきた立憲民主党ですが、それだけではやはり駄目なのです。」

「もっと仲間を大事にしないといけない」

これが、泉健太さんの政治にかかわる信念と政策の方向性、自身のスタンスである。

ロスジェネ世代、団塊ジュニア世代の代弁者である50歳。立憲民主党が政権奪取可能な情勢になったとたん、欲を出してきた、ベテラン先輩政治家たちを前に、どう戦うか。

◆ 泉健太氏とは

▲写真【出典】泉さんHP

1974年7月29日生まれの北海道出身。4人兄弟の末っ子。石狩市で育つ。父親の故・泉訓雄さんは牧場関係の自営業をしていて、政治家の応援するのが好きだったようだ(その後、石狩市議会議員にもなった)。少年時代は野球に励んできて、生徒会長にもなった。石狩市立花川北中学校、北海道札幌開成高等学校を卒業後、立命館大学法学部へ進学。大学では弁論部で活動、阪神大震災、地球温暖化防止京都会議(COP3)でボランティア、戦没者遺骨収集、フィリピンでスモーキーマウンテンでのごみ拾い、京都まつりの学生実行委員長など様々な社会活動・ボランティア活動を行ってきた。法学部卒業後、福山哲郎参議院議員の秘書を務めた。

2000年に衆議院議員選挙に出馬して敗北。その後は、老人福祉施設でデイサービスの送り迎えや介助のアルバイトをしていたそう。2003年に京都府第3区で民主党から初当選し、2009年から2010年には内閣府大臣政務官を務めた。子どもの時は社会党のファン、北海道知事の横道孝弘さんに憧れ、尊敬するのは日本社会党中央執行委員会委員長の浅沼稲次郎さんだそう。政治家になっても、「ダウン症の子ども支援、チャイルドライン、犯罪被害者支援、地球温暖化防止活動、ホームレス支援、日本海ナホトカ号重油流出事故へのボランティアバス派遣、新潟中越地震への支援物資運搬、各地の水害被災住宅復旧などに従事。消防団員としても15年以上活動」という社会活動実績を誇る。趣味は料理、DIY、自転車、アウトドアなどだそう。

▲写真【出典】ボランティア活動をする泉さん。泉さんHP

◆ 泉氏の政策の特徴

代表として政権交代の準備を続けてきた。「ミッション型内閣」と新しい政権交代を狙う野党の在り方を地道に丁寧に主張してきた。今回「日本を伸ばす」という政策を掲げている。政策は「今の党の政策を仲間と築き上げた点だから、それを踏襲する」ということで詳細には書いてはいないものの、シンプルに示している。

▲写真【出典】泉氏HP

特徴は第一に、富裕層の課税を打ち出していることだ。「超富裕層が増加する中で、税制の見直しが求められています。岸田政権の金融所得課税も不十分であるため、一般国民が負担を抱えないようにするためには、超富裕層に対する課税を強化する必要があります。」と主張する。アベノミクスで株価上昇で大儲けした人たちが存在したが、トリクルダウンは失敗。労働者の賃金が上がらないまま、日本の「問題」に対してのど真ん中のソリューションである。

第二に、国産化推進など郷土を守る保守的な視点である。「耕作放棄地があり、荒れ地や草ボーボーのような状況を多く見てきました」と言う現状認識。農地を殺さない、活かし続ける方針を強調し、「国産化推進という言葉を入れた。食料自給率を高めたいのですが、そのためには耕作放棄地を減らさなければなりません。輸出を増やしたいと考えています。」と言う。農産品の輸出、特に輸出米を増やすことを主張する。また、地域経済についても「食料自給率の向上と環境投資、これは地域への投資にもなりますが、ソーラーパネルを住宅に設置することや、家電製品の買い換え、住宅断熱といった取り組みが地域の公務店や電気店の経済活性化につながる」という地域の生活者を中心にした地域活性化策を提示している。

防衛政策についても従来のリベラルとは一線を画す。国防と言う視点から「堅守防衛」を掲げ、平和を守る対話外交・現実的な防衛力整備していくそう。「従軍する兵隊こそ、一般国民が被害に遭うそれが戦争だ」という問題意識で自衛隊の待遇改善、自衛隊員の募集率低下の問題にまでも鋭く指摘する。

課題は、もうちょっと企業団体献金廃止を強調してもいいのではないかということである。自民党の今回の裏金や統一教会との関係における自民党政治の本質的な問題は、影響力をカネで買う行為である。お金がかかるのは選挙に勝つために必要だからというその構造が問題なのである。戦争についても軍部の独走はあったが、一部の企業は儲かっていた。戦争はたいてい一部の支配層の方々の利益・権益を守るために始まるものだということを忘れてはいけないだろう。

なので、企業・団体献金を明確に廃止し、政治への影響力をカネで買う行為を徹底排除するべきともっと強調すべきなのだ。過去に「企業団体献金の禁止にチャレンジしなければ政治は腐る」と言ってきたが、今回の代表選はそんなに明確に言ってはない。今回の代表選、政治献金を集めて政治的パワーを保持してきた超ベテラン政治家さんが対抗候補を擁立し、影響力を発揮した。そういう姿勢は自民党政治とあまり変わらないし、1994年の政治改革関連法の成立で抜け穴を見抜けなかった(政党から政治家への寄付は例外とされた)し、政権にいた時に対応しなかったベテラン政治家たちの責任もあるだろう。他人を悪く言わないのは、人の優しい、仲間を大切にする泉さんらしいところでもあるが。

◆ リーダーシップ・人事評価

筆者は人事評価の専門家として「政治家の人事評価」などを提起してきた。ここで、「首相の人事評価」を考えたい。総理大臣の「能力」「成果が出せる行動特性(コンピテンシー)」は以下になる。

◆1.未来の方向性を示せる、共有できる

◆2.組織マネジメントができる

◆3.決断・意思決定ができる

これをしっかりできれば十分なのだが、泉さんをこの視点を細かく見ると以下のようになる。

人事評価の専門家としてみるとこの視点からみるとこんな感じである。性格も優しく、感じもよく、仲間を大事にする、穏やかな人物である。これだけの社会活動をしてきた首相候補はいない。人へ、未来へ、まっとうな政治へ。日本の新時代を開くのはこの世代が担ってもいいはずだ。泉さんに期待したい。

トップ写真:立憲民主党の代表選を前に演説を行う泉健太氏(2020年9月10日 東京)出典:David Mareuil – Pool/Getty Images




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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